健一郎 高3 『私の宝物』 油彩
大竹です。今回ご紹介させて頂くのは学生クラス・健一郎の油彩作品です。こちらは市美術展への出品作品となります。
海底に沈む金庫の周りは赤々と燃え盛っており、その中にはスマートフォンや金の腕時計などが埋もれています。海面から差し込む光は天使の梯子の様に美しく、まるで天国と地獄の様な対比が面白い構図ですね。
描き初めは絵の具をたっぷりと盛り、そこから引っ掻き傷を付けたりしてかなりマチエールで遊びました。よく見るとシワの様な凸凹があり、金庫のボディに錆が浮いている様に見えますね。その金庫のダイヤルはボール紙を何枚も重ねて貼って作っているので、本当にダイヤルを回して扉を開けられるような気がしてきます。この金庫の中身は一体何なのでしょうか?誰の手も届かないような深海に、燃え盛る炎の中で金庫が守っている物とは?燃えている金の腕時計からはお金・富・財産といったものや時間などを連想させます。スマートフォンは世に溢れる情報や他者との繋がりであったり、科学技術の象徴でしょうか。作者にとって、それらは燃えて灰になってしまっても構わないものであり、それ以上に大切なものを金庫に入れて守っているのでしょう。金庫に入れているあたり、中身を守っているというよりも秘密にしたい事を厳重に隠している、というようにも思えていきます。鑑賞する人によって、金庫の中身は全く違うものになるのでしょうね。
これまでは風景の写真を元に制作していましたが、今回は自身で選んだモチーフを組み合わせて架空の風景を描きました。昨年の市美術展では審査員からの講評で「テーマ選択に知的さを感じさせる。」と言われておりましたが、今回の作品でもそれが現れていますね。鑑賞する者に、作品を考察する知的な楽しさを与えてくれる1枚だと思います。