奥 油彩
佐藤です。本日は奥さんの油彩作品をいくつかご紹介します。
まずは上記の「人」をテーマにして描かれた連作から。
早描きで有名な奥さんですが、今回も 3枚もの作品を同時に進められているかと思えば、翌週には新たにご自宅で描かれた作品を持参されることもあり。驚きつつ、今日はどの作品を描かれるのかな?と毎週楽しみにしていました。
作品によって模写元が写真か絵画作品かが異なるので、絵のタッチには作品ごとに違いがあります。それでもこうして5枚並べてみると不思議と統一感があるのは、奥さん特有の色使いによるものでしょう。赤・青・緑・黄など大胆な色相を用いつつ、明度や彩度はやや抑えており画面全体にはまとまりを感じます。色相は増えすぎると色が散らかって見えることもあり、扱いが難しいのですが、トーンを揃えて華やかさとまとまりを両立されています。
個人的に特に好きなのは、3枚目のマリー・ローランサンによる女性画の模写です!
キュビズムを感じる独特なデフォルメが目を引くこちらの作品。このデフォルメ度合いは元の作品を忠実に模写した結果ですが、実は模写元の作品は茶色系統の色でまとめられ、もっと平面的で朴訥としたタッチなんです。
しかし奥さんの作品では緑とピンクをメインに鮮やかな色が使われており、紅顔で今風の華やかさを感じます。女性像自体はとても丁寧に模写されていますが、全く印象の違う女性に見えるんです。
マリー・ローランサンの作風と、奥さんの独特な色使いが上手くシナジーを効かせていて、とても面白い作品になっていると思います。
写仏 油彩
続いて、上記は写仏のように描き進めていらっしゃった油彩作品。
写経とはお経や仏の教えを筆やペンで写すこと。 写仏は仏様のなぞり描き更に色を付けることで、この油彩も、まずはボールペンで仏様を写し描きしてから薄塗りで仕上げてあります。写仏は仏さまに心を寄せ、自分自身と向き合う事を目的として行うそうです。
アトリエに通われている皆さまにはきっと共感して頂けると思いますが、自分が表現したいものを一生懸命考え、アウトプットに一喜一憂しながら時間を掛けて作品を作り上げていくことは、とても根気や体力が要る作業です。
奥さんが絵を描かれている時もついつい、「こんなに多くの作品を描かれるのは大変じゃないですか?」と伺ってしまいました。
すると、「もちろん大変だけれども、その大変さも楽しい。いくつも並行して描くから、作品を完成させるのに長く時間が掛かることもある。だけど長い時間をかけた分だけ作品にも魂が宿っていくし、そうやって作品や自分自身に向き合い、四苦八苦しながら作り上げていくのが絵を描くことの醍醐味なんじゃないか」とのお答え。まさに写経・写仏にも通ずる境地ですね。
昨今は変化の激しい世の中ですから、10年20年先に自分や社会がどうなっているのかは、正直私には検討がつきません。不確実性の高さに、将来の不安を感じることもあります。
しかしこの先社会がどれだけ変化しても、奥さんがおっしゃるような「絵を描くことの楽しみ」が失われることはきっと無いだろうと思います。そう思えば、創作活動が身近だというのは自分にとって非常に幸運なことですよね。
奥さんの作品や創作への姿勢を通して、改めてそのことに気付かせて頂けました。