秦野 アクリル・キャンバス
佐藤です。本日は水曜大人クラスより、秦野さんのアクリル作品をご紹介します。
私は水曜大人クラスを担当したことがないのですが、いつも小学生クラスが終わった後に大人クラスの準備もしています。なので、秦野さんのこの作品は準備の時にいつもお見かけしていました。
そして作品を拝見する度に、「どことなく印象派のような雰囲気を感じる作品だなぁ」と思っていました。しかし印象派の技法といえば、筆のストロークを残すタッチや、絵の具を混ぜ合わせずにキャンバスに置く筆触分割が代表的。それに対して秦野さんの作品は緻密に陰影を描き込まれていますので、なぜ自分がそのように感じるのか、うまく言語化出来なかったのですが……。今回ブログでご紹介しようとアレコレ考えた結果、「光や空気のうつろいを感じるからだ!」と(勝手に)腑に落ちました。
そもそも、なぜ印象派の画家たちは従来の絵画のルールに反して混色を避けたり、あえて粗い筆致を残すような技法を産み出したのか。それは風景をそのまま写実的に描くのではなく、ある風景をみた時に個人の目に映った視覚世界と、それによってもたらされた印象・感覚を描き表すことに重きを置いたからだと言います。
また印象派の特徴の一つに戸外制作が挙げられますが、それによって印象派の作品からは、光や空間の遷移を感じることが出来るんですね。
この作品では、はっきりと光をモチーフとして描いているわけではありません。むしろ手前にある家や木はかなり陰っており、画面全体では暗い色の方が多く使われていると思います。しかし、その家々の奥に広がる空には柔らかく日がさしており、逆光で手前側が暗く描かれている分、いっそう空の明るさが強調されていますね。
アトリエで描かれた作品ですので、もちろん戸外制作ではないと思いますが、屋根の奥からわずかに見える日の光によって、刻々と変化していく世界の一瞬を切り取った という印象を強く感じます。
作品を見ていると、冬のキリリと澄んだ空気感や、うつろいゆく光、そして秦野さんがこの風景を絵に描きたいと思われた気持ちまでもを鑑賞者が一緒になって感じられるような気がします。
技法こそ異なれど、それは印象派の画家たちが目指した絵画表現にとても近いのではないでしょうか。