増村 油彩
新しい手袋が欲しいです、ナツメです。
本日は水曜大人クラスの増村さんの作品をご紹介します。下地にジェッソを塗って厚みを出した上に、元々描いてあった油絵を潰して描かれたので、かなりマチエールが効いています。空ひとつをとって見ても、色のみに注目するととあまり変化のないように見えますが、画面の凹凸によって同じ色が置いてある箇所にも表情の違いが生まれているのが面白いですね。
ちなみに、キャンバスはP8サイズですので、よく見るFサイズのキャンバスよりも横長になっています。パノラマサイズの風景を描くのに適した比率です。
M:Marine (海景)
P :Paysage(風景)
F :Figure (人物)
S :Square (正方形)
M≺P≺F≺Sの順でキャンバスの短辺が長くなり、面積が大きくなります。
マリンブルーや、海に映る色をどのように表現するかに、かなり長い時間掛けて試行錯誤されていました。右にいくにつれて暗くなっているため、コントラストが強くなり建物との風合いが強調されています。元の建物はベージュや白などの落ち着いた色だったのですが、色で遊んでみたいと全体的にサーモンピンクのような華やかな色合いにされました。また、川に面している壁は鮮やかに描かれていますが、影となる側面はピンクを暗くしたような紫や茶色ではなく、群青に近いブルーや緑を乗せているところにも遊び心を感じます。
今回は細部まで描き込むのではなく、色合いを調節しながら全体の雰囲気を意識して描かれました。遠近感や水の映り込みなど必要な部分は押さえつつも、敢えて窓などの小さなパーツはぼかすことで、風景を空気感ごと切り取って収めたような「景色」を描いた作品になりました。