おっさん様に「殺しなら御局様でしょう。」と乗せられて、初めてリクエストにお答えするという形で書いた文章です。
(正統派の冬ソナファンの方、怒らないでくださいね。)
2004/12/28 《サンヒョク殺し》 実行者:阿波の局
[二十話、サンヒョクが自宅で病院からの電話を受け、ジュンサンの病状を知り、慌てて家を飛び出す場面から続く]
〈ユジン、ごめんよ。ジュンサンの病状がこんなに酷かったなんて…。いや、気付くべきだったんだ。おかしいって…。
もう兄妹じゃないって分かったんだ、何も身を引く理由なんかないじゃないか。それなのに僕は…。
頼む、間に合ってくれ…。〉
サンヒョクはユジンの住むアパートへ、車を走らせていた。
「あ、ユジン!どこへ行くんだ!」
アパートまでもう少し、という場所で、サンヒョクはユジンを見かけた。
車を道路わきに止めユジンを追いかける。
「ユジン!」
〈どこへ行ってしまったんだ。もう時間がないのに…。人違いだったんだろうか?〉
その頃、ユジンはアパートを出て寒空の下を歩いていた。ジュンサンの飛行機の出発時刻が近づくにつれ、やはり落ち着かなくなってきたのだ。
「馬鹿ね。メールなんか来ているはずないのに…。」ユジンは携帯電話を開いて苦笑した。
そしてジュンサンへの未練を断ち切るように電源を切る…。
「携帯も繋がらない。いったいどこへ行ったんだ。」サンヒョクは焦りを覚えた。
〈やっぱり一度アパートへ行こう。ジンスクがいるかもしれない。〉そう思い直して踵を返したその時、さっきのユジンと思しき人影が向こうの歩道を行くのが見えた。
〈ユジナア…〉
サンヒョクは車の影に気付かなかったのだ。
〈救急車?近くで止まったわ。〉
ユジンは歩みを止めた。
胸騒ぎがした。
何かに追い立てられるように、音のする方へと走っていく…。
「サンヒョク!」
[病院]
サンヒョクは昏睡状態の中で夢を見ていたのだろうか。
〈ああ、あれはユジンだ。おかっぱ頭をして、小学生?いや、もっと幼い頃だ。かわいいな。あの頃は僕と結婚するとか言ってたっけ。〉
ユジンの笑顔が次々と思いだされた。
〈昔のユジンはいつも笑っていたのに、いつの頃からか僕の前では憂いを帯びた表情をすることが多くなったんだ。
…ジュンサンに恋をしてからか…。そうか…。
僕が喜ばなかったからだね。
ごめんよ、ユジン。友人として君の幸福を祈ることができなかったんだ。
今からでも間に合うだろうか…?〉
サンヒョクは目覚めた。
「ユジン?」
「しゃべらないで。」
「大丈夫だよ。君にどうしても言っておかなければいけないんだ。良く聞いて…。
誤解だったんだよ。君たちは兄妹じゃない。僕の父がジュンサンの父親なんだ。僕とジュンサンが兄弟だったんだよ。君たちは別れる必要なんかないんだ。
僕が悪かったんだ。許して欲しい。
それに…、ジュンサンは病気なんだ。交通事故の後遺症で、手術を受けにアメリカへ帰るんだ。ジュンサンは死ぬかもしれない。失明するかもしれないんだ。
だから…、ユジンに黙って行こうとしているんだ。
ユジン、ジュンサンを追いかけて…。
ジュンサンを離しちゃだめだよ…。
僕の為にも…。いい?わかった?」
ユジンの手を取り、微笑むとサンヒョクは目を閉じた。
[一週間後]
「ユジン、これを…」
そういってジヌはニューヨーク行きのチケットをユジンに手渡した。
「お義父さま…」
「サンヒョクが生きておれば、きっとこうしたかったはずなんだ。サンヒョクからだと思って受け取って欲しい…。」
[別れの後 1「ユジンのつぶやき」に続く…]
他の3名の方のストーリーをお読みになりたい方は
http://www7.plala.or.jp/oji3basser/polaris/fuyusonakill.html
をご覧ください。
『しかし、みんな無茶苦茶しますな。誰もいなくなってしまいました。』byおっさん