先月のバイトを頑張った自分へのご褒美として、単行本を2冊、大人買い(大人げない買い、とも言う)しました。
1冊は向田邦子さんの食に関するエッセイを集めた「海苔と卵と朝めし」。
向田さんのエッセイが好きで若い頃よく読んでいたので、既知の作品もたくさん載っていましたが、よいものは何度読んでも面白い。
よほどお好きだったとみえて、戻したワカメを炒めたものはいくつかの作品に何度か登場します。私も真似して作ったものですが、最近やっていないな。
折りがあったらまたやってみようと思っています。
エッセイの中には旅で出会ったおいしいものの話もあって、特に沖縄に行ったときのものは読んでいて自分もその地に立っているような、ちょっとした旅行気分を
おすそ分けいただいたような感じ。
食べものの描写にしても、「丸谷才一氏や開高健氏ならばもっと」と謙遜しておられるけれど、いやいやどうして。
池波正太郎氏もそうだったけれど、文だけでなく脚本を生業としていた方は描写や表現に長けているなとつくづく思います。
しがないブロガーの私などは写真の力を借りてもまだ足りない。才のあるなしを感じるなぁ。
さて、その向田さんの本と一緒に買ったのが「喫茶の一族」という本。
京都の六曜社という、70年続く老舗の喫茶店(ここはカフェではなくあえて喫茶店と呼びたい)の話。
大好きなコーヒーに大好きな京都。そしてなにより気になったのが、本のカバーに描かれたイラストでした。
昔、装丁家の栃折久美子さんの本を読んでからというもの、本の作りにはいろいろと思うものがありますが、この肩の力の抜けたイラストがまず妙に
気になりました。
いいよなあ~、こういうイラスト。
絵が好きなのにうまく描けない私は、好みのイラストに出会うと本の中身そっちのけで買いたい!と思う傾向があります。
イラストもいいけれど、このカバーやタイトルのロゴデザインの色が、コーヒーにぴったり!だと思いません?
実家の両親はほぼ毎日喫茶店に通っていました。もちろん、モーニング目当て。
今でもそうですが、名古屋近辺の喫茶店は近所の社交場だったり、会社の応接間代わりだったり。正直コーヒーの味は・・・なお店もかなりの数あります。
私がおいしいと思うコーヒーに出会ったのは、高校3年の終わり頃だったでしょうか。当時コーヒー専門店ブームが起きて、それまでの喫茶店とは雰囲気も
違ってこだわった造りの店が増えてきました。
そして一番違ったのがコーヒーそのものの味。それまでは一度にたくさんのコーヒーを淹れておいて、オーダーが来てから小鍋で温めて出すスタイルがほとんど
だったけれど、ペーパードリップやサイフォン式で一杯ずつ淹れるその味は、それまで飲んでいたものとは全く別のもののように感じましたね。
今でも下手ながら家ではペーパードリップでコーヒーを淹れていて、お店で飲むことはめっきりなくなりましたが、この本に出てくる六曜社のような、
渋くて独特の雰囲気のある、そしてコーヒーにもこだわったお店には是非足を運んでみたいものだと思いました。
戦後すぐ開業してから70年ほど、現在3代目やその親族で様々な窮地に立ち向かいながら長きに渡って続いている内情が、淡々と、でも事細かに書かれています。
1節がそれほど長くないので家事の合い間に読むのにもちょうどよく、久しぶりに惹き込まれるように読みふけりました。
そういえばこの2冊の本、どちらも食べもの関係でしたね。
昔からおいしいものについて書かれたり、おいしいものが出てくる本が大好きでした。
食べものの話って、誰も傷つかないし読んだあとなんだか幸せな気持ちがします。知り合って間もない人との会話でも、食べものについてなら好き嫌いも
好みの違いということでさっくりと結論が出せるし、おいしいお店の情報を共有することだってあるかもしれない。
ごくたまに、食べることにあまり関心がない人もいるにはいますけど、人間最後まで残るのが食に関する欲や楽しみなんじゃなかろうか。
今は作り過ぎたおかずの残務処理が多くて、少々胃疲れ気味の私ですけど、食べることは日常で幸せを感じるトップ3から落ちることはありません。
やっぱり私が好きな本って、身近な内容のものになっちゃうんだなぁ。こうした食とか暮らしとか。仕事や経済などにも興味はあるんですが、本という媒体で
持つのは少々重い。
好きなものは好きを貫いていこうじゃないの、これからも。