Cafe & Magazine 「旅遊亭」 of エセ男爵

志すは21世紀的ドンキホーテ?
はたまた車寅次郎先生を師に地球を迷走?
気儘な旅人の「三文オペラ」創作ノート

Dinner Rush 「映画感想文」

2006-01-09 12:07:13 | 趣味の話&本と雑学メモ
 映画「ディナーラッシュ」を真面目に観た。

この映画、動かない動きが、実は動いていて面白い。つまり、同じレストランを定点観察し、レストラン以外からの観察は、皆無。

とにかくレストランというサービス業を背景にした良い映画なので、是非紹介しておきたい。

若手俳優「エドアルドヴァレリーニ」は、ニューヨークの新進気鋭の料理人の役柄を、見事にこなしている。父親の経営するイタリアンレストランのシェフ役で登場。けっこうイタリアンっぽいハンサム青年である。

この映画、一体全体誰が主役で誰が脇役かわからない。敢えて主役といえば、ニューヨークのど真ん中に存在するイタリアンレストランそのものである。

ディナーラッシュ ~スペシャル・エディション~

ハピネット・ピクチャーズ

このアイテムの詳細を見る

レストランの仕組み、キッチン(厨房)とホール(客席)その他倉庫やトイレに至るまで、レストラン内部の仕組みを描ききっており、レストランの仕組みそのものがこの映画の「舞台」。スピードも、音楽も、若手もヴェテランもひっくるめた俳優人の役割分担もしっかり構成されており、世代を超えた老若男女のあらゆるジャンルが楽しめる映画である。(若し、この映画を観て「面白くない!」というシニア諸氏がいたならば、それは老いた証拠である。と我輩は断言する・・・)
レストランという動かない「定点観察」で時間が推移する、一見味気なさそうなストーリーであるが、最終段階で一転二転。かなり奇想天外なシナリオ展開がなされており、レストラン従業員の人間関係はもちろんのこと、レストランの各種来客などの癖や下品さ上品さ、加えてレストランの楽しみ方、詳細な人間模様が描かれているからすばらしい。

1)厨房内部の動きが鮮やかに描かれている。
2)ゲストの注文にあわせた「料理と酒」がキッチンで出来上がりゲストホールで振舞われる様(さま)、画像を見ていて食したくなるくらい「リアル」なイタリアンディッシュが、洗練されたサービススタッフの配膳(サービス)にて我々「映画鑑賞者」の目の前を、みごとなリアルさで、動く。躍動する。
3)ホールスタッフの、来客への「あしらいと対応」が見事に表現されている。レストラン関係者には、多いに参考になる。
4)癖のある客を、そしてそんな顧客に対する対応を、上手く描ききっている。
5)レストラン従業員同士の恋愛描写が生々しく、よく在る出来事を面白く捕らえている。
6)中年男性であるレストランオーナーとその息子である厨房のシェフとの世代間の『ものの考え方』の違いを上手く表現し、その違いそのものがこの映画のストーリーを展開させているから面白い。
7)レストラン内部のWaiting-Barの機能を表現しているから、ウエイティングバーに不慣れな日本人には勉強になる。そのバーに勤務する優秀なバーテンダーの機知に富んだ顧客対応は(実際には不可能に近いであろうが)すばらしく、実務についているプロにも是非一見の価値あり。
8)レストランオーナーの仕掛けにより、同レストランの地下トイレで、町のヤクザが2人殺害される。が、物語はハッピーエンドである。ここら辺りのストーリー展開が実にスピーディーで面白い締めくくりなのである。

おおよそ2時間の映画は、同じ場所、即ち同じレストランの開店から閉店迄の時間帯を切り取り、ある夜の「レストラン内の出来事」のみで全ストーリーを表現しているのが新鮮である。同じホテル、同じ館、同じ場所でストーリーが展開していく手法は、過去の映画で幾度か観たことがある。しかしこの映画で使われた「表現の新鮮さ」と素晴らしさ、定点観察手法の素晴らしさを、あらためて実感した。

某国の「海外食べ歩き特集TV番組」等、下手な、センスのない、気合の入らない「特集」を数十本作ったって、この映画一本とは比べ物にならない。もちろん制作費も脚本も、センスもマネーも「レベル」が違うか、、、。

久しぶりに『胸のスカッ!』とする痛快な映画作品を観た。
求めていた、そして自分に必要な何かを?それに関わる感性に?、多いに影響を及ぼす「名作」である。と、受け取った。

  <人気Blogランキング参加中!>
右記バナーの応援クリックを!人気blogランキングへ