<photo:"Norton 850 Commando">:Norton is a British motorcycle marque from Birmingham and founded in 1898. By 1913 they had begun manufacturing motorcycles. This began a long series of production and racing wins.
「ところで太田君、どうして君は?自分から相撲部の落第生?って、自分から云うのかな?」
「はい、入部して半年目で、相撲部を辞めたのです。ですから僕は、だめな男です」
「相撲部を辞めた。それからどうしたの?」
「いえ、辞めてからは他のクラブ活動はしていません」
「それはそれで問題ない。大学は学問の場所だから、クラブ活動しに行く場所じゃない。でも、なぜ辞めたの?」
「あ~、辞めた理由ですね」
「そう、それ、それが問題なんだ」
「単純です。あんなに頭が痛いスポーツだとは、思ってなかったのです。相撲の立会い稽古は、頭からぶつかる。だから、ぶつかっただけで頭が割れそうに痛いんです。想像していたより頭が痛いんですから、練習中に何回も脳震盪(のうしんとう)になったし、毎日頭が痛くて泣いていました・・・」
「今の大田君の感想、相撲の練習の事、初めて聞いたな。そうか、そんなに頭が痛いスポーツだとは知らなかった」
「・・・」
「太田君、大丈夫だ。大学相撲辞めてよかった。もうそんなこと忘れて、今の仕事に集中したら・・・」
本田の知り合いに、大相撲で十両まで昇進した人が、チャンコ料理店を開いていたのを思い出した。
(以上、前回掲載まで、、、)
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長編連載小説「フォワイエ・ポウ」(5章)-3
著:ジョージ・青木
十両まで昇進した人物は、ある時点で相撲世界でそれ以上の出世に見切りをつけ、先行き長い将来を考えた。結果、まずは郷里に帰り、現役時代に蓄えたお金を元手に、チャンコ鍋のお店を開いた。
という話は、本田自身の耳で聞いていた。
努力に努力を重ねて十両まで昇進した。にもかかわらず、それ以上の出世に見切りをつけた理由も、彼から聞いていた。どうしても体重の増えない体質、いくら食べても筋肉しか付かず、体重がある程度増えないことには、幕内に入って相撲をとっても、長続きしない。傍で見ているより、実際にはそうとう激しい格闘技であるプロスポーツが相撲である事。これ以上現役で相撲を続けると、まちがいなく自分自身の寿命を短(ちじ)めるに違いない。と、自分自身で判断し、相撲の世界から身を引く決心をした。と、聞いていた。
ちゃんこ鍋料理屋の常連客は本田の知人である。その知人から、事前に相撲界の話を聞いた後、知人の案内でちゃんこ鍋料理屋の経営者に会った。
今や普通の人になったプロの相撲取り。ちゃんこ鍋を食す目的で店に出向いた時、その人物に初めて会った。プロの相撲取りであった人物、ちゃんこ鍋店の店主の体格を見て驚いた。本田にとっては未知の出来事であり、驚異的な出会いであった。
身長は?もとより高い。元関取だった店主の言によれば、現役時代は187センチであったと言う。初めて本田がその店を訪れたのはサラリーマン時代。サラリーマン駆け出しの本田は、まだ20代の後半、チャンコ鍋屋の店主の年齢は、後になって判明したのであるが、本田より僅か2歳だけ年上である。たしか、約12年前の真冬12月上旬の出来事であった。真冬にもかかわらず、元関取の店主は、店内で浴衣(ユカタ)を羽織っていた記憶がありありと蘇ってきた。日常の関取の稽古場での制服とも云うべき浴衣であるから、胸元や足元は丸見えである。
「ン?なんと、彼は寒さを感じないのか。そう、テレビなどで見受ける若い関取衆は、かしこまった場面以外で見受ける姿はほぼ全員、浴衣をはおっている。それを思えば、店主の浴衣姿は、べつに異常ではないのだ・・・」
もともと好奇心の強い本田は、それとなく、さりとて真剣に、店主の立ち居振る舞い姿かカタチを、観察する。
まず、足の大きさが桁違いに大きい。30センチ位か?あるいはそれ以上?もちろんそれ以上だし、店主の手のひらは、本田と比べれば、倍近くはある。すでに四十台半ばの年齢に達した店主は、今、アマチュアゴルフの世界で有名人になっている。したがって筋肉はそれなりの姿を維持されており、遠目に見ればまだまだ体格は均整の取れたもの、並外れた人間におもえた。
ちゃんこ鍋店の店内に、店主の現役当時の数点の写真や化粧まわしなど、展示されていた。断髪式当日の写真は、ひときわ目立った。大銀杏のチョンマゲを切る儀式の写真を拝見する。やはり、いまよりもつっと若い。バランスの取れた面長、もちろんハンサムで、しかも髷が似合っている。いい顔で、土俵の真ん中の椅子に座り、神妙な面持ちで髷を切られるプロフィルのワンショットが店内にあった。
この写真こそ、この店にふさわしく、絵になるものであった。
写真を見て、
(今まで分からなかった。知らなかった。相撲の世界で十両まで昇進した力士とは、一流の人物なのだ!・・・)
頭の中で想像しながら、走馬灯のように彼の現役時代の日常を、本田は自分勝手に、思いだし想いを馳せた。
そんな空想のなか、つかの間ではあるが、本田自身は自分勝手に自分自身現役の関取になっていた。日々の稽古、本場所中の土俵上での真剣勝負等々空想が転回すればするほどに、いつしか本田の神経中枢にはアドレナリンがほとばしり出た。
そんな本田に、突然、武者震いが起きた。
一旦武者振りが治まれば、また冷静になり、相撲世界の現実を分析し始めた。本田にとって、全て遠い想像の世界にあったものが、現実の世界として捉えることができた。十両力士とは、その競争を勝ち抜いた立派な力士の位である。
まして、幕内まで昇進した力士は、大出世の結果である。
「大関は?」
「とんでもない出世か・・・」
「横綱は?」
「天才である!生まれながらにして恵まれた桁外れの体力と修練の成せる結果か」
・・・「天賦の才能か?」
「毎日のガチンコ勝負、稽古と本番の中、怪我をしない怪我をしても治せる体力気力に、最期は鬼にも勝る気迫だけか」
「運もあるであろう。出世などと考えるのは、なんと恐れ多いことか・・・」
単純に比較して考えてみれば、
日本の歴代の閣僚や大臣の総数よりも、角界で大関になった力士の数のほうが少ないのではないか。となれば、大臣より大関の方が偉いのか?
総理大臣を務めた人物の数と、横綱になった人物の数は、いったいどちらが多いのか。横綱の数のほうが少ないとなれば、総理大臣より横綱のほうがえらいのか?
よくわからないが、おおよその答えは出る。
となれば、
サラリーマン出世競争の世界とは、すでに比較の方法が見当たらない、全く別の次元の出来事だと理解した。
すでに、そんな相撲の世界の話を聞いていた本田である。立会いの厳しい稽古などは、ある程度想像できた。しかし、十両まで昇進した人物から、立会い稽古で頭が痛いという話は、聞かなかった。相撲の立会いとは、頭と頭をぶつけるもの、頭が痛いのは当たり前。プロの世界で経験をしてきた人間にとっては、そんな感覚であろう、とも、想像できた。
結論の結論が出た。
(プロ相撲など、普通の人間がやることではない。桁外れの体格を持った人間が命をすり減らしながら、命がけでやること。自分には縁のない世界である)
と、割り切って考えることにした。
この話し、すでに10数年前に聞いた話。元十両関取は、今も元気でちゃんこ鍋店を続けておられる。完全に固定客の定まった経営は、ますます盛んに推移していると聞く。
太田君に会った本田は、ちゃんこ料理店での思い出が浮かんでいた。
「お待たせしました。さあ、召し上がってください。味は?保証できません!ま、召し上がってみてくださいな。申し上げておきますが、あくまでも試食会ですよ。」
開店前に、買ったばかりの道具、新しい包丁とまた板を駆使して仕込んでおいた「試作品」は、完成した。
「エ、エ、もうできたのですか。早いですね」
本田は、2人の相手を一旦取りやめ、調理に取り掛かってから出来上がりまで、たしかに早かった。2人を待たせた時間は、せいぜい5~6分程であった。前もっての段取りと、下ごしらえが、完全にできていたせいである。
「うわ~、おいしそう。いただきま~す」
「この料理は特に、温かいうちに召し上がってください」
注文も受けていないのに、前もって冷やしておいた白ワインを一本開け、すでに用意しておいたグラスに注(そそい)いだ。
「ここは女性にお願いしよう」
本田は、五反田恵子に向かって、
「どうそ、このワインのテスト、おねがいします」
「ア~、おいしい。わずかにほのかに、甘いかな~」
「分かりますか?ドイツワインです。モーゼルワインで、この店ではドイツワインを専門に出そうか。と、思っています」
五反田によりテストされた同じワインを、今度は大田のグラスに満たした。
大田も飲んだ。
「おいしいです! よく知らないんですが、こんなおいしいワインを紹介して頂き、ありがとうございます」
未だ、ワインの味のよく分からない大田は、ワインを試飲するという新たなに体験に接した機会とその雰囲気を、素朴に喜んだ。
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<添付画像解説>:我輩の大好きな英国製バイク。これ、歴代英国の誇り<ノートン850コマンド>。〔NORTON850Commando〕添付画像の解説文章は現在草稿中なり。
念のため?申し上げておきますが、これ、ウイルス撃退用のノートン社製のバイクではないのよ!
かくして添付画像の解説文章<不肖・エセ男爵ブログをご愛読頂いている愛読者のお一人「漢(オトコ)の勲章」とこkennbou-7さん>に捧ぐ!は、現在草稿中。
たぶん明朝まで?お時間下さい、、、。
「ところで太田君、どうして君は?自分から相撲部の落第生?って、自分から云うのかな?」
「はい、入部して半年目で、相撲部を辞めたのです。ですから僕は、だめな男です」
「相撲部を辞めた。それからどうしたの?」
「いえ、辞めてからは他のクラブ活動はしていません」
「それはそれで問題ない。大学は学問の場所だから、クラブ活動しに行く場所じゃない。でも、なぜ辞めたの?」
「あ~、辞めた理由ですね」
「そう、それ、それが問題なんだ」
「単純です。あんなに頭が痛いスポーツだとは、思ってなかったのです。相撲の立会い稽古は、頭からぶつかる。だから、ぶつかっただけで頭が割れそうに痛いんです。想像していたより頭が痛いんですから、練習中に何回も脳震盪(のうしんとう)になったし、毎日頭が痛くて泣いていました・・・」
「今の大田君の感想、相撲の練習の事、初めて聞いたな。そうか、そんなに頭が痛いスポーツだとは知らなかった」
「・・・」
「太田君、大丈夫だ。大学相撲辞めてよかった。もうそんなこと忘れて、今の仕事に集中したら・・・」
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著:ジョージ・青木
十両まで昇進した人物は、ある時点で相撲世界でそれ以上の出世に見切りをつけ、先行き長い将来を考えた。結果、まずは郷里に帰り、現役時代に蓄えたお金を元手に、チャンコ鍋のお店を開いた。
という話は、本田自身の耳で聞いていた。
努力に努力を重ねて十両まで昇進した。にもかかわらず、それ以上の出世に見切りをつけた理由も、彼から聞いていた。どうしても体重の増えない体質、いくら食べても筋肉しか付かず、体重がある程度増えないことには、幕内に入って相撲をとっても、長続きしない。傍で見ているより、実際にはそうとう激しい格闘技であるプロスポーツが相撲である事。これ以上現役で相撲を続けると、まちがいなく自分自身の寿命を短(ちじ)めるに違いない。と、自分自身で判断し、相撲の世界から身を引く決心をした。と、聞いていた。
ちゃんこ鍋料理屋の常連客は本田の知人である。その知人から、事前に相撲界の話を聞いた後、知人の案内でちゃんこ鍋料理屋の経営者に会った。
今や普通の人になったプロの相撲取り。ちゃんこ鍋を食す目的で店に出向いた時、その人物に初めて会った。プロの相撲取りであった人物、ちゃんこ鍋店の店主の体格を見て驚いた。本田にとっては未知の出来事であり、驚異的な出会いであった。
身長は?もとより高い。元関取だった店主の言によれば、現役時代は187センチであったと言う。初めて本田がその店を訪れたのはサラリーマン時代。サラリーマン駆け出しの本田は、まだ20代の後半、チャンコ鍋屋の店主の年齢は、後になって判明したのであるが、本田より僅か2歳だけ年上である。たしか、約12年前の真冬12月上旬の出来事であった。真冬にもかかわらず、元関取の店主は、店内で浴衣(ユカタ)を羽織っていた記憶がありありと蘇ってきた。日常の関取の稽古場での制服とも云うべき浴衣であるから、胸元や足元は丸見えである。
「ン?なんと、彼は寒さを感じないのか。そう、テレビなどで見受ける若い関取衆は、かしこまった場面以外で見受ける姿はほぼ全員、浴衣をはおっている。それを思えば、店主の浴衣姿は、べつに異常ではないのだ・・・」
もともと好奇心の強い本田は、それとなく、さりとて真剣に、店主の立ち居振る舞い姿かカタチを、観察する。
まず、足の大きさが桁違いに大きい。30センチ位か?あるいはそれ以上?もちろんそれ以上だし、店主の手のひらは、本田と比べれば、倍近くはある。すでに四十台半ばの年齢に達した店主は、今、アマチュアゴルフの世界で有名人になっている。したがって筋肉はそれなりの姿を維持されており、遠目に見ればまだまだ体格は均整の取れたもの、並外れた人間におもえた。
ちゃんこ鍋店の店内に、店主の現役当時の数点の写真や化粧まわしなど、展示されていた。断髪式当日の写真は、ひときわ目立った。大銀杏のチョンマゲを切る儀式の写真を拝見する。やはり、いまよりもつっと若い。バランスの取れた面長、もちろんハンサムで、しかも髷が似合っている。いい顔で、土俵の真ん中の椅子に座り、神妙な面持ちで髷を切られるプロフィルのワンショットが店内にあった。
この写真こそ、この店にふさわしく、絵になるものであった。
写真を見て、
(今まで分からなかった。知らなかった。相撲の世界で十両まで昇進した力士とは、一流の人物なのだ!・・・)
頭の中で想像しながら、走馬灯のように彼の現役時代の日常を、本田は自分勝手に、思いだし想いを馳せた。
そんな空想のなか、つかの間ではあるが、本田自身は自分勝手に自分自身現役の関取になっていた。日々の稽古、本場所中の土俵上での真剣勝負等々空想が転回すればするほどに、いつしか本田の神経中枢にはアドレナリンがほとばしり出た。
そんな本田に、突然、武者震いが起きた。
一旦武者振りが治まれば、また冷静になり、相撲世界の現実を分析し始めた。本田にとって、全て遠い想像の世界にあったものが、現実の世界として捉えることができた。十両力士とは、その競争を勝ち抜いた立派な力士の位である。
まして、幕内まで昇進した力士は、大出世の結果である。
「大関は?」
「とんでもない出世か・・・」
「横綱は?」
「天才である!生まれながらにして恵まれた桁外れの体力と修練の成せる結果か」
・・・「天賦の才能か?」
「毎日のガチンコ勝負、稽古と本番の中、怪我をしない怪我をしても治せる体力気力に、最期は鬼にも勝る気迫だけか」
「運もあるであろう。出世などと考えるのは、なんと恐れ多いことか・・・」
単純に比較して考えてみれば、
日本の歴代の閣僚や大臣の総数よりも、角界で大関になった力士の数のほうが少ないのではないか。となれば、大臣より大関の方が偉いのか?
総理大臣を務めた人物の数と、横綱になった人物の数は、いったいどちらが多いのか。横綱の数のほうが少ないとなれば、総理大臣より横綱のほうがえらいのか?
よくわからないが、おおよその答えは出る。
となれば、
サラリーマン出世競争の世界とは、すでに比較の方法が見当たらない、全く別の次元の出来事だと理解した。
すでに、そんな相撲の世界の話を聞いていた本田である。立会いの厳しい稽古などは、ある程度想像できた。しかし、十両まで昇進した人物から、立会い稽古で頭が痛いという話は、聞かなかった。相撲の立会いとは、頭と頭をぶつけるもの、頭が痛いのは当たり前。プロの世界で経験をしてきた人間にとっては、そんな感覚であろう、とも、想像できた。
結論の結論が出た。
(プロ相撲など、普通の人間がやることではない。桁外れの体格を持った人間が命をすり減らしながら、命がけでやること。自分には縁のない世界である)
と、割り切って考えることにした。
この話し、すでに10数年前に聞いた話。元十両関取は、今も元気でちゃんこ鍋店を続けておられる。完全に固定客の定まった経営は、ますます盛んに推移していると聞く。
太田君に会った本田は、ちゃんこ料理店での思い出が浮かんでいた。
「お待たせしました。さあ、召し上がってください。味は?保証できません!ま、召し上がってみてくださいな。申し上げておきますが、あくまでも試食会ですよ。」
開店前に、買ったばかりの道具、新しい包丁とまた板を駆使して仕込んでおいた「試作品」は、完成した。
「エ、エ、もうできたのですか。早いですね」
本田は、2人の相手を一旦取りやめ、調理に取り掛かってから出来上がりまで、たしかに早かった。2人を待たせた時間は、せいぜい5~6分程であった。前もっての段取りと、下ごしらえが、完全にできていたせいである。
「うわ~、おいしそう。いただきま~す」
「この料理は特に、温かいうちに召し上がってください」
注文も受けていないのに、前もって冷やしておいた白ワインを一本開け、すでに用意しておいたグラスに注(そそい)いだ。
「ここは女性にお願いしよう」
本田は、五反田恵子に向かって、
「どうそ、このワインのテスト、おねがいします」
「ア~、おいしい。わずかにほのかに、甘いかな~」
「分かりますか?ドイツワインです。モーゼルワインで、この店ではドイツワインを専門に出そうか。と、思っています」
五反田によりテストされた同じワインを、今度は大田のグラスに満たした。
大田も飲んだ。
「おいしいです! よく知らないんですが、こんなおいしいワインを紹介して頂き、ありがとうございます」
未だ、ワインの味のよく分からない大田は、ワインを試飲するという新たなに体験に接した機会とその雰囲気を、素朴に喜んだ。
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