Cafe & Magazine 「旅遊亭」 of エセ男爵

志すは21世紀的ドンキホーテ?
はたまた車寅次郎先生を師に地球を迷走?
気儘な旅人の「三文オペラ」創作ノート

小説『「フォワイエ・ポウ』(第31回掲載)5章 「回想するニース滞在、ディナータイム・・」

2006-05-23 12:24:25 | 連載長編小説『フォワイエ・ポウ』
(Night view along the "Quai des États-Unis"),the photo-copy from Wikipedia:
Nice (pronounced [nis]) (Occitan: Niça or Nissa; Italian: Nizza) is a city in southern France located on the Mediterranean coast, between Marseille and Genoa, with 933,080 inhabitants in the metropolitan area at the 1999 census. The city is a major tourist center and a leading resort on the French Riviera (Côte d'Azur).

 本日、いよいよ5章のファイナル、、、。

長編小説「フォワイエ・ポウ」の応援、宜しくお願いします。

毎日一回、クリック応援を!(人気ブログランキング)

* 長編小説『フォワイエ・ポウ』の過去掲載分、全30回、、(ご参照希望の方、こちらから入れます!)

    --------------------------------------------------------

  連載小説「フォワイエ・ポウ」 5章
                    著:ジョージ青木

   2(ニースの出来事、料理との出会い)

「まず、参加者全員が女性、同じ専門学校の修学旅行です。団体客の内訳は、中年の先生方が約7~、8名。後の40数名は、若い専門学校の生徒さんたちばかり、、、。女校長先生がうるさくて、全てを取り仕切っている女王様なのだ。さりとて、生徒さんたち若い女性にも楽しんでいただかないといけないし、いろいろバランスが難しい、、、。女性ばかりの団体はね。ともかく当時は、いかにもお嬢さん学校的で贅沢な出来事でして、今もあまり変わりませんが、、、。出発は、何と12月に入ったばかりの頃。クリスマス前の、旅行客は究めて少なく、飛行機はがら空きの暇なときに、観光客の超少ない時に、パリでファッションショーを見せる謳い文句で、案内したのです。パリ滞在だけではもったいない。それではニースに行こう。そんな訳でシーズンオフのニース2泊3日をくっ付けた、全行程12日間の忙しい旅行ができあがった・・・」
「まず、エアーフランスのロシア経由で、パリに入る。当時のヨーロッパ線の主流は、北極経由でしてね。約8時間かけてアラスカのアンカレッジに向かう。アンカレッジで給油しクルーが交代するから約2時間休憩、いや、待ち合わせです。さらに北極点すなわちポーラめがけて進み、グリーンランドの上空をえんえん10時間飛んで、ようやくヨーロッパに入ったから、合計所要時間は20時間以上もかかった。南回りのインド経由では、途中4~5回も経由地があるから、もっと時間がかかる。そう、南回りで30時間近く、いや、それ以上の時間が掛かったでしょう。とにかくヨーロッパは遠かった。大変な長旅だったのですよ」
ここまで話した本田は、また一口、生ビールを口に含んだ。
「モスクワ経由、いや今は北京上空通過が当たり前、約12~3時間もあれば、ヨーロッパに入れる時代です。しかし当時ロシア経由のエアーフランスは最新路線ですから、ヨーロッパに行く最短距離でした。昔から、ロシアとフランスは仲が良かったのですね。そして、今尚、両国の外交はたくみ、お互いにうまく行っている証拠なのですね。ロシア上空を飛べるなんて、シベリア上空を飛べるなんて、お客は喜びましたよ。いやなに、今では当たり前ですけどね」
「そういうことで、モスクワ経由でパリに着いた。パリでは、ファッションショーを見た。ニースに入ったのは滞在1週間目、くらいかな。この頃になると皆さん、旅の疲れが出るのですよね。ニースにはパリから直行便の飛行機で入った。もちろんジェット機で、でも、1時間くらいかかったかな。移動する日はとにかく疲れるのよ。パリのホテルをチェックアウトして、バスに乗って空港に行って、搭乗手続きして、飛行機に乗って、またニースで降りて、バスに乗って、ニースのホテルにチェックインしたのは夕方4時くらいだったかな。なんだかんだで、1日がかりの仕事ですよ。旅程表、つまりスケジュールの上での移動は簡単、実際の移動は大変なのだ、全く・・・」
「ニースのホテルは、たいへん良かった。日本のテレビコマーシャルシーンにも出ていたホテルでしてね、ホテルの部屋の窓辺で、ヨーロッパ人の女性がコーヒーを飲んでいるシーンがコマーシャルの映像、窓辺からは、ニースの海岸線が望める。すてきなコマーシャル映像でした。(注釈:事実です。確か、「ネスカフェ」の宣伝です)ですから、当時すでに、かなり有名なホテルでしたよ。海岸線に沿ったホテルで、ニースからモナコ方向の海岸線が弓なり状になって眺められる、いわゆる格調高いヨーロッパスタイルの一流ホテルでした」
「団体客60数人のチェックインをすると、ベテランの添乗員が超特急でがんばって、早く済ませても20分以上はかかるでしょう。いや、20分では無理だ、30分は掛かるか。ですから、皆さんホテルの部屋で足を伸ばせるとなると、もう4時半はとっくに過ぎてしまって5時くらいになるんだよな、、、。そして、チェックインの後は当然ながら、団体客だから夕食の時間も場所も一緒!その時のスケジュールでは、ホテルにて夕食。だから、チェックインと同時に、レストランのテーブルも予約確保しないと、時間的に手配が難しくなる。間違ってお客さんが先に部屋に入ってしまうと、夕食の時間と場所の案内など、とてもとても難しくなる。そのような場合、部屋を全部ノックして歩いて案内する。そんなことにでもなれば、とんでもなく添乗員が忙しくなる。だから、校長先生にお伺いをたて、決めてもらったところ、夕食は6時だ。と言って、それ以上の私の話は、聞かない」「実際、チェックイン後、2時間以内で夕食スタート?これはスマートでない。もっとゆとりを持たせる。一泊掛けの温泉旅行ならまだしも、海外旅行の場合、しかも南欧、ニース。ならば、もう少し夕食時間までの時間的ゆとりを持たせたほうが、スマートである・・・」
本田の記憶は、鮮明。語りつつ喋るままに、ますます鮮明に、数分単位の当時の記憶、蘇って来るのである。
「ま~、頑固一徹のおばさんでした。やり手ですよ、やり手。それくらいでないと、専門学校の校長先生は務まらないこと、よく理解できました。いや、当時の私から見れば、校長先生は、すでに、いじわるばあさんの領域でした」
「実は、ヨーロッパで、しかも南仏で午後6時の夕食は、早すぎる。日が高すぎるのです。感覚的には、日本の真夏の4時過ぎですよ。レストランは普通、午後8時過ぎからオープンする。もっと以前の南欧やスペインでは、午後9時から開くホテルレストランも在るくらいでしたからね」
「そしてその時のニースのホテルチェックインの後の状況は、そう、校長先生から指示があった時点からですと、あと1時間足らずでディナータイムになる。これではレストランが大変だ。フロントに相談したら、とりあえずOKをくれた。問題は、今夜のメニューをどうするか、である。メニューを問うと、私に任せる、と校長先生はおっしゃる。『任せるけれども、同じ料理を60数名の全員に対し、同じ時間、ディナーのスタート時間に揃てほしい!』と、おっしゃる。これはかなり難しい、が、イエスといわざるをえないから、『承知しました・・・』言った。受けた。校長先生はじめ、先生方全員は、かなりお疲れのご様子。にもかかわらず、生徒さんたちは元気がいい。夕食前に、もっと長い自由時間が欲しい、遊びたい。しかし、夕食までの時間が中途半端で遊べないし、校長先生の指示で、許可なくしてホテルからは外出禁止となっている。基本部分で忙しい私は、そんなもの皆放っておいて、2階レストランに駆け上がり、レストランマネジャーに会って直接打ち合わせした」
「案の定、レストランのマネジャーは驚きました」
「ここからは、マネジャーの話しです」
「60数名さまのご予約はありがたい。すでに日本からの団体様のディナー、情報としては承っているが、時間と料理内容までは、報告がない。ツアーエスコートの方と打ち合わせが必要と聞いています。すなわち、チェックインが済んだ後、添乗員の私と打ち合わせする。ここまでしか情報がないのです。さて今夜、同じ料理の食材60数名様分は、揃わない。とうてい無理だが、一つだけ解決方法がある。フランスの家庭料理で『ハム料理』は如何か?と来た。こちらは反論した。恐れ多くも一流ホテル内レストランでのディナーである。ディナーにハムを切っただけの料理?はたして、客が喜んでくれるかどうか?こちとら、全く自信がない。別のメニューはなにかないか?例えば海鮮料理など・・・と、反論した。彼はフランス語訛りの、あまり上手とはいえない英語で、ふわふわとうきあがりながらも、しかし粘り強く丁重に、わかりやすく説明し説得した。南欧人は通常、昼食に重いものを食し、特別なことでもない限り、夜は軽い料理で済ませる。だから、お勧めのハム料理はこちら地元の上等なハムをワインで蒸し焼きにしたもの。ヴォリューム的にも、味付けも、決してクレームを起こすようなシロモノではない。マネージャーとして、私が保証する。任せてくれないか!と、来た・・・」
「さすが一流ホテルのレストランマネジャーは、立派だった。私を説得したという意味でね・・・」
「結果、わたしは全て、マネジャーに任せました」
「時間通り、校長先生をはじめ、参加者の皆様全員に、同じハム料理が出て来ました。ウエイターの対応も見事でした。口先では、おおきな事いっていても、所詮日本人の胃袋はこちらのフランス人と比較にならない、知れています。皆さん満腹で満足。旅行業者のやることなすこと、決して褒めない校長先生は、その時も何も言ってくれませんでした。しかし、クレームはなかった。私の感想? 贅沢言えばきりがありません。しかし、ワインでシンプルに味付けされたハムの味、私にはその良さが理解できた。私にとっては、たいへんおいしかった」
「ですから、その時のこと、突然今日の夕方、デパートで買い物していて思い出したから、作ってみたくなって作った。そして、こうしてお二人に召し上がって頂いた次第です」
「・・・」

二人は真剣に、一言も聴きもらさないよう、本田の話に耳を傾けている。

 <・続く・・・>


*人気ブログランキング参加中!人気blogランキングへ

* 長編小説『フォワイエ・ポウ』の過去掲載分、全30回、、(ご参照希望の方、こちらから入れます!)