少し前のことだが、小学1年生の息子に小さな小さな事件が起きた。
ずっと欲しかった匂い付きの消しゴム。
リンゴの香りがする赤い消しゴム。
買ってもらって10日程経ったある日、学校で失くしてしまった。
聞くと、一つ上の2年生の知らない子が持って行ってしまったと言うのだ。
学校では息子は「くつがかり」という係で、下駄箱の靴がきちんと仕舞われているか、乱れていないかなどをチェックしている。
ある時、同じ係のクラスメイトと「靴調べ」ということで筆記用具を持参して下駄箱のところで活動していた。
そうしたら2年生の子が通りかかったという訳である。
息子はまだ1年生なのもあり、状況説明も曖昧かつ不自然で、しかも2年生の子がその消しゴムを持っていくところはよく見ていなくて一緒にいたクラスメイトの情報。
「先生には言ったの?」
と私。
息子曰く、先生には伝えて2年生の教室に消しゴムがないか探してもらったり、2年生の先生にも報告して持っていった子を探してもらったりした。
しかし消しゴムもその子も見つからなかった。
「そうか・・・残念だったねぇ…
消しゴムに名前をちゃんと書いておかないといけなかったね。
なんで持ってっちゃうんだろうね。
まだその子が持ってるかわからないね。次からは気をつけないと…。」
しかしその後も 消しゴムを持って行ったかもしれない2年生の子の名前はわからないものの、どの子か顔はわかるようで、
「あの子、今日歩いているの見た。」
と気にしている様子の息子。
実を言うと、息子は幼い頃から発達に偏りというか凸凹が少しあり、こだわりや思い込みが人一倍強い。
一方で繊細なところもあったりする。
そして、年長の頃から定期的に臨床心理士の面談を母子別々に行っている。
ちょうど数日後に母親だけの面談があったので、近況報告兼ねて この小さな事件について相談してみた。
「学校も対応してくれているし 消しゴムごときの話ですが、母親から聞いてみるべきでしょうか?」
すると心理士は、
「確かに消しゴムごときの事かもしれませんが、学校の先生にその後どうなったのかお母さんから聞いてみる必要があります。
Mくん(息子)の大切な消しゴムですよね?
そのままではその2年生の子のためにもよくないですし、何より学校は大事なものが失くなる怖い所…と思ってしまうようになったらよくないです。」
心理士のアドバイスを受けて、その後のことと もう少しなんとかならないかを、息子の連絡帳に書いて担任の先生に聞いてみることにした。
そして後日。
もう一度担任の先生と息子で2年生の教室に見に行き、消しゴムを持って行ったかもしれない子がどの子かつきとめて事情を聞くことができた。
すると、2年生の子は消しゴムを持っていくなどはしておらず、本当は息子と一緒にいた1年生のクラスメイトがふざけて、通りかかった2年生のところに消しゴムを投げ 飛んできたというのである。
そして失くなった消しゴムは、その後下駄箱付近を担当する掃除当番の人が見つけて学校の落し物箱に届けてくれていた。
つまりは、息子が見ていない時に、クラスメイトのおふざけで消しゴムを失くしてしまっただけで、2年生の子は何の関係もなかった。
今回、この小さな事件を追求したことによって息子の消しゴムを投げたクラスメイトの子は先生に注意されてしまったが、2年生の子の疑いは晴れ、消しゴムは息子の手元に戻ってきた。
それから一ヶ月して。
この小さな小さな事件が無事解決したことを、私は臨床心理士に報告した。
そして心理士の言葉。
「消しゴムが戻ってきて本当によかったですね。
諦めずにお母さんが働きかけたことによって きちんと解決できましたね。
今回の事で、Mくんは大切な事を学びましたよ。
困ったことが起きたけど、先生やお母さんに言ったことによって解決できた。
今後また 一人で解決できないようなことが起きても、周りの人に助けを求めれば何とかなる方法が見つかる、ということを知ったわけですから。
これはとってもとっても大事なことなんです。」
私は心理士の言葉にジーンときた。
結果的に、母親の私も学べたのである。
そうか!と心の中で叫んだ。
もともと的確なアドバイスで定評のある心理士の先生で とても信頼しているのだけど、相談して本当によかったと改めて感じた。
ほんの小さなことだけど、とても大切なことがあるということ。
子どもの様子をよく見て、これからも見逃さないように気にかけようと思う。