感動のオルチャ渓谷訪問もついに終了。
今回から数回に分けて、オルチャ渓谷の旅情報をご紹介します。
世界遺産にも登録されているオルチャ渓谷。
しかし、実際に訪れようと思うと、あまりの情報の少なさに困惑します。
定番のガイドブック「歩き方」にも、オルチャ渓谷そのものの紹介がまったくなく非常に困りました。
2012年のイタリア訪問以降、様々な情報をコツコツ調べ、なんとか訪問にこぎつけた今回の旅行。
役に立つ情報や現地に行って初めて分かったことなどをまとめてご紹介します。
Ⅰ. 基本編
(目次)
1. オルチャ渓谷は一体どこに?
2. オルチャ渓谷へ行くにはレンタカーがベスト
3. 緑のベストシーズンはGW
4. 宿泊はアグリツーリズモかプチホテル
5.滞在日数は最低でも3泊4日
6. 心強いガイドブックはこれ
7. ウォーキングも楽しみの1つ
8. やはりメーデーには厳重警戒
9.予想外だったことベスト&ワースト
※長文にご注意下さい。所要約10分です。
1. オルチャ渓谷は一体どこに?
緑の丘と糸杉の風景が有名なオルチャ渓谷ですが、「歩き方」を見てもオルチャ渓谷がどこにあるのか分かりにくいのが難点。
他のガイドブックやネット情報を見ても、それぞれ微妙に説明が異なっており、ちょっと心配になります。
で、現地に行ってようやく分かったのですが、場所的には地図の青い円で囲んだあたりです。
この地域に点在する町の名前でいうと、
・北部にピエンツァ
・東部にモンテキエッロ
・西部にモンタルチーノとサン・クイリコ・ドルチャ
・南西部にバーニョ・ビニョーニとカステリオーネ・ドルチャ
と言ったところ。
一方、この地域を走る幹線道路でいうと以下の通り。
図を見ていただくとわかる通り
・北側にSP146
・東側にSP18とSP88
・南側にSP53
・西側にSR2
という主要道路で囲まれた一帯です。
厳密には違うのかもしれませんが、日本人がイメージする典型的な「オルチャ渓谷」の風景が広がる地域はまさにここ。
情報によっては、この地域の外側もオルチャ渓谷として紹介しているものもありますが、そこは正直なところ「普通に美しい田園風景」。いわゆるオルチャ渓谷の絶景は見えないのでご注意ください。
そして、オルチャ渓谷訪問の拠点とするなら、北部のピエンツァか西部のサン・クイリコ・ドルチャがおススメ。
いずれの町もすぐ目の前がオルチャ渓谷という立地に加え、お店やレストラン、カフェなどがひと通りあるので便利です。
特にサン・クイリコ・ドルチャという町は重要な拠点。オルチャ渓谷といえばピエンツァやモンテプルチャーノばかりが有名ですが、ここもキーとなる町です。
オルチャ渓谷は車でグルっと1時間強
そのピエンツァからサン・クイリコ・ドルチャまでは車で約15分〜20分と意外と近く。
そのまま、SR2→SP53→SP18をぐるりと一周してピエンツァに戻るのにおおよそ1時間強。それほど離れておらず、動きやすい距離感です。
町と町はもっと離れているのかと思っていたので、これは助かりました。
ちなみに、オルチャ渓谷の町としてよく紹介されるのがモンテプルチャーノ。ピエンツァの隣町で、この一帯では一番大きな町です。
ただ、周囲はキアーナ渓谷で、オルチャ渓谷は見えないのでご注意ください。
2. オルチャ渓谷へ行くにはレンタカーがベスト
オルチャ渓谷を訪れるには、レンタカー利用がもっとも効率的で確実です。
実のところ、オルチャ渓谷に公共交通機関で行くのはかなり厄介。
1つ目の方法は、まず鉄道のモンテプルチャーノ駅かキウージ駅で下車してからバスでモンテプルチャーノへ。その後、バスを乗り換えてピエンツァに向かう方法。
2つ目は、シエナからの長距離バスでモンテプルチャーノに入り、その後ピエンツァまでバスという方法。
いずれも鉄道やバスの本数に制約があるうえ、何よりピエンツァから先のオルチャ渓谷の中を動き回る方法がありません。
起伏のあるオルチャ渓谷内を徒歩や自転車で巡るのはかなり無理があり、どうしても自動車が必要なのです。
なお、シエナなどからオルチャ渓谷1日ツアーのタクシーやバスもあるようですが、1日では回れる場所が限られるうえ、お天気が悪いとせっかくのツアーも台無しになるのでリスク大。
レンタカー利用については、後日あらためてご紹介予定です。
3. 緑のベストシーズンはGW
今回宿泊した宿のご主人によると、時期的には日本のGWあたりが見ごろとのこと。新緑が一番美しく、爽やかな気候もあっておススメとのことでした。
緑の丘と糸杉というオルチャ渓谷の風景が目的であれば、まさにGWが狙い目と言えます。
一方、夏は緑と茶色の大地のコントラスト、秋は色づいた草木の紅葉が美しいそうです。
これらの時期にも訪ねてみたいところですが、肝心の緑がかなり刈り取られているようなので、緑がお目当ての方はご注意ください。
4. 宿泊はアグリツーリズモかプチホテル
オルチャ渓谷には、大都市にあるような大型ホテルや有名ホテルはありません。
そんななか、宿泊施設として選択肢は大きく2つあります。オルチャ渓谷周辺に点在する小規模ホテルか、渓谷のただ中に建つアグリツーリズモの宿です。
アグリツーリズモとは、地元の農家やワイナリーが経営するB&Bのような宿。
渓谷のど真ん中に建っているため、目の前にオルチャ渓谷の風景が広がるのは最大のメリット。
朝起きたら部屋の窓からオルチャ渓谷が広がっている夢のような宿です。
道路沿いからは決して見ることのできない雄大な風景を満喫できるので、絶景写真を撮影するにはこの上ないロケーションです。
とは言いながら、当初アグリツーリズモの宿は農作業などを手伝いながら宿泊するのかと思っていました。さすがに農作業は困るなと思って、検討しなかったのです。
ところが、いろいろ調べてみると必ずしもそうでもない様子。宿泊と食事を提供し、農作業などは行わない普通の宿もあることが分かりました。
一方、アグリツーリズモとは別に、ペンションやプチホテルのような小規模な宿もあちこちに。そこで見つけたのが今回の宿。
印象としてはオーベルジュという感じで、4つ星で設備もしっかり。
朝食・夕食とも、美味しい食事がいただけたのは正解でした。
ただ、宿からオルチャ渓谷の風景が見えなかったのは残念。宿を決める際はロケーションをよく確認する必要があります。
オルチャ渓谷内を走っていると、あちこちにアグリツーリズモの宿やプチホテルが建っているのが分かります。
ネットで検索するとたくさんの宿が出てきますし、せっかくの機会でもあるので、ぜひご検討ください。
5.滞在日数は最低でも3泊4日
今回は2泊3日での滞在でしたが、正直なところやや短かったかも。
初日と最終日は移動があるため、実質半日。2日目はドン曇り後雨で撮影できず。そのため、実質的な撮影時間は1日強とかなり短め。
2日目に晴れてくれれば良かったのですが、残念ながら天候に恵まれず、時間的に厳しい滞在となりました。
また、今回は時間の制約もあり訪問しきれない町もありました。もう1〜2日滞在すれば、モンテキエッロ、モンタルチーノ、ロッカ・ドルチャなどの魅力的な町にも行くことができたのですが。
そう考えると、オルチャ渓谷をしっかり満喫するなら、最低でも3泊4日は必要かもしれません。
6. 心強いガイドブックはこれ
今回もっとも困ったのが、「歩き方」の情報があまりに少ないこと。
どこに、どのように行けば良いのか、どこに泊まるのか、撮影スポットはどこか、食事や買い物はどうするのか、など疑問をあげたら枚挙にいとまがありません。
こうなるとまず確認するのが「4travel」などのネット旅行記。オルチャ渓谷でドライブしている方は決して多くはありませんが、貴重な情報を得ることができて感謝です。
ただ、いずれの旅行記も、素晴らしい風景写真が「どの場所に行けばこの写真が撮影できるのか?」や「どこに泊まって、どのように移動したのか」などが分かりません。
そんなときに見つけたのが『レンタカーでトスカーナの旅 :オルチャ渓谷を撮る 絶景ポイントと絶景ルート』(粕谷正幸著)という電子書籍。
これは著者がオルチャ渓谷で撮影旅行をした時の旅行記で、日本での事前準備に始まり、宿泊した宿や現地での食事、撮影ポイントからレンタカーの手配など、現地での行動を事細かに記録されたエッセイです。
何より参考になったのは、オルチャ渓谷の撮影ポイントの位置データが記載されていること。
位置データをそのままGoogleマップに打ち込めば撮影場所が分かるというもの。ストリートビューで現場確認ができるので、ずいぶん理解が進みました。
オルチャ渓谷旅行のイメージがかなり具体的に理解できたのはこの本のおかげです。
ただ、決してガイドブックではないので、詳しいことは詳しいですが、触れていないことは触れていません。また、必ずしも情報が整理されている訳でもありません。
そんななか、ようやく見つかったガイドブックが『Hill Towns of Central Italy: Including Siena & Assisi』(Rick Steves著)です。
これは残念ながら英語版のみで日本語訳は出版されていないのですが、情報量も多くガイドブックとして秀逸です。
著者のリック・スティーブス氏はヨーロッパ旅行の専門家で、ヨーロッパ各地を紹介するPodcastを配信するとともに、多くのガイドブックを発行されています。
以前からPodcastを購読していたことから、たまたま見つけたのが本書です。
これは、オルチャ渓谷を旅行する上で必要な情報が概ね網羅されており、一冊あれば旅のプランニングもほぼ問題ありません。手頃なサイズと厚さで携帯性も良好。
ピエンツァやモンテプルチャーノのページを見ても、「歩き方」と比べると格段に情報量が違います。
ただし、注意点が3つほど。
1つ目は英語版ということなのですが、難しい単語や表現が多いこと。イタリアの歴史や宗教などに触れることが多いため、日本人には見慣れない言葉が多用されているためかもしれません。
必要な箇所以外は、すべて読み飛ばさざるを得ません。
そして2つ目の欠点は、外国の書籍にありがちなのですが、文章ばかりで図や写真がほとんどないこと。
旅行ガイドブックに限りませんが、とにかく外国の書籍は文字ばっかり。もっと図や写真を多用したら読みやすくなるのにと思いますが、そこはやむを得ません。
3つ目は、レンタカーやドライブに関する説明や注意が少ないこと。不安の多い外国での車の運転。もう少し詳しい説明が欲しいところでした。
いずれにしても、オルチャ渓谷訪問時には心強い一冊です。
ちなみに、海外の旅行ガイドブックといえば「ロンリープラネット」が定番。このシリーズにも『Tuscany Road Trips』 (Duncan Garwood 他著)という、まさにピッタリの一冊がありますが、情報量が少なすぎてまったくダメでした。
また、イタリア旅行の専門サイトとして有名なのが「アーモイタリア」というサイト。よく利用させてもらっていますが、残念ながらオルチャ渓谷そのものの紹介は限定的でした。
7. ウォーキングも楽しみの1つ
これだけ美しい風景のオルチャ渓谷ですから、ウォーキング愛好家の方であれば、緑の丘をてくてく歩いてみたくなるのではないでしょうか?
実は、オルチャ渓谷にはウォーキングコースがあります。
さすがにリック・スティーブス氏のガイドブックにも記載がなかったのですが、たまたまある日、テレビで『地球絶景紀行』という森高千里さんがナレーションをする番組が放送されていました。
ちょうどオルチャ渓谷を紹介していたのですが、渓谷の緑の中に続く砂利道をマラソンランナーが走っているのです。
それを見て、この砂利道はウォーキングコースに違いない!と感じ、さっそくネットで調べてみると、トスカーナ地方にはウォーキングコースがいくつもあることが分かりました。
以前、イギリスを訪れた際に「フットパス」というウォーキング用の道がありましたが、トスカーナにもそうしたコースがあったのです。
ただ、ウォーキング大国のイギリスと比べたらまだまだマイナーなのか、ウォーキング関連の書籍やネット情報はかなり少なめ。フットパス情報が溢れていたイギリスとはずいぶんと違いました。
ちなみに、これが現地にあったウォーキングコースの標識。
コース上に立っているので、これを目印に歩いていけます。
よく見ると分かるのですが、ウォーキングだけでなく、サイクリングや乗馬もOKのようです。
ここからピエンツァまで7.8キロで1時間35分ほど。かなり早足で歩かないといけませんね。
アグリツーリズモに泊まらない場合でも、このウォーキングコースを歩けば、渓谷のど真ん中から絶景を撮影できるというメリットも。
残念ながら、今回は時間の制約もありウォーキングコースをじっくり歩くことはできませんでしたが、一度はトライしてみたいものです。
なお、これらウォーキングコースは『Walking in Toscany』というサイトで確認できます。これはヨーロッパ各地を紹介する観光サイトの一部のようです。そのなかでオルチャ渓谷も紹介されており、ウォーキングコースのページがあるのです。
http://casavacanze.poderesantapia.com/walk/valdorcia/pienzasbagnovignonianello.htm
これはそのうちの一つ。コース別に複数の地図を見ることができます。
一見普通の地図なのですが、地図横のメニューボタンで「Waymarked trails」にチェックを入れると、コースが表示されます。
メニューにある「キロメートル」にチェックを入れると、歩行距離が表示されるのも便利。必見ポイントの写真付き説明もあり役に立ちそうです。
8. やはりメーデーには厳重警戒
GWのヨーロッパ旅行で気をつけないといけないのが5月1日のメーデー。交通機関は止まるわ、お店は閉まるわで、予定が大幅に狂います。
そのため、今回メーデーの日にはコルトナやモンテプルチャーノなど田舎の町の散策にあて、公共交通機関などは利用しない計画でした。
ところが、ふたを開けてみてびっくり仰天。コルトナはブログでご紹介した通り、大混雑のため駐車場確保で1時間半を費やす羽目に。
途中で立ち寄ったモンテプルチャーノは、盛大なフェスティバルが開催されていたようで、そもそも道路が通行止めで近づけません。
しかも、想像を絶するたくさんの人出に囲まれて身動きできず、まさに渋谷のスクランブル交差点状態。
なんとかわき道に逃げ込んだのですが、これが悪夢の始まり。細い山道を運転する羽目になり、 絶体絶命のピンチに陥りました。
そして、メーデーのとどめはサン・クイリコ・ドルチャの町にあるスーパーマーケットco-op。
夕食の食材を買おうと閉店前に立ち寄ったのですが、メーデーのため衝撃のお休み。疲れ果ててたどり着いたところ、呆然と立ち尽くすのみでした。
ローマやフィレンツェなどの大都市ならいざ知らず、トスカーナの片田舎でメーデーの洗礼を受けるとは思いもしませんでした。
読みが甘かったといえば甘かったのですが、あらためてヨーロッパにおけるメーデーの怖さを認識した1日でした。
9.予想外だったことベスト&ワースト
基本編のまとめとして、予想外だったことを挙げてみました。
まずは予想外に苦労した点。
1)車の運転
2)メーデーの大混乱
3)寒さ
やはり1番苦労したのは車の運転。これについては後日あらためてご紹介しますが、慣れない外国での運転は予想以上に悪戦苦闘。
そして2番目がメーデーの大混乱。ここまで予定を狂わされたのは初めてで、過去最大級となる悪夢のメーデーでした。
3番目が朝晩の冷え込み。さいわい防寒着を持ってきたのでセーフでしたが、ひとつ間違えたら凍死寸前になる所でした。
一方、予想外に大丈夫だったこと。
1)オルチャ渓谷の広さ
2)意外と通じる英語
3)豊富な野菜類
1番目は、オルチャ渓谷がほどよい広さだったこと。もっと広いのかと思っていましたが、1時間強でぐるりと一周できる範囲に収まっているので、動き回るのも便利でした。
2番目は思いのほか英語が通じたこと。トスカーナの片田舎で英語はあまり通じないだろうと想像していたものの、ホテルもお店も意外と英語が通じました。
3番目は食事で出される野菜が豊富なこと。ヨーロッパ旅行をすると、肉とチーズとパンの毎日で、旅の後半はさすがにグッタリしてきます。今回はペルージャのホテルを除いて豊富なサラダで非常に助かりました。
さて、次回のオルチャ渓谷ドライブ情報(2)は「撮影編」。絶景の見える撮影スポットなどをご紹介します。
つづく