これまで私が指導をしてきたなかで、特に印象に残っている言葉を紹介していきたいと思います。
最初は「たかがオリンピック」です。
これは日大豊山前監督の井上敦雄先生の言葉です。
何か問題があったときに、「たかだかオリンピックで何を騒いでいるんだ」というような井上先生の言葉であったと記憶しています。
水泳関係者でこの言葉を口にできる指導者はそれほどいないのではないでしょうか。
私がいうまでもなく、オリンピックはスポーツ界で最高峰の試合であり、指導者も選手も人生のすべてをかける試合です。
そこにかける時間や費用などを考えれば、通常「たかが」という言葉でまとめられるものではありません。
もちろん井上先生はオリンピックを軽んじてこの言葉を言ってわけではありません。
私なりにこの言葉の意味を考えてみたのですが、やはり「たかがオリンピック」といえるような「人生に対する見識」をもたなければならないということです。
オリンピックはスポーツの祭典として最高峰にあるわけですが、それでもしょせんは「スポーツ大会」にすぎないのです。
この言葉が教えてくれることは、人生にはそれよりも大切にしなければならない価値がたくさんあるということに気づかなければならないということです。
確かにオリンピックに出場し活躍することはすばらしいことであり、賞賛に値することです。
私もかつては競泳選手であり、現在は指導者ですからオリンピックに出場して活躍することがいかに大変かということは理解しています。
しかし、生きていくうえでの価値としてそれが最高のものか、ということを考えなければならないということです。
例えば井上先生は何よりも「人を大切にすること」を重視しており、自分の財産はそれだけだということを常日頃からおっしゃっています。
オリンピックに出場したとしてもそれで人生が終わるわけではありません。
そしてどんなに活躍した選手であってもいずれ記録は破られ、新たな選手が出てくれば人々の記憶からも忘れられます。
やはり「たかがオリンピック」という気持ちで、人との関係を大切にし立派な社会人として生きる、という「人生に対する見識」を持ち続け、そういう人材を育成したいと思います。
「たかがオリンピック」ですが、「されどオリンピック」です!
是非、東京オリンピックの代表選手を日大豊山水泳部から出したいと考えています。
2020年東京オリンピックの競泳が開催されるオリンピックアクアティクスセンターの予想図です。
竹村知洋