政治家として最も偉大な人物はだれかといわれたら、ウィンストン・チャーチルをあげます。
これはチャーチルが第二次世界大戦後に著した『第二次世界大戦』の序文から引用した言葉です。
ルーズベルト大統領から今回の戦争をなんと呼ぶべきか、と問われたときにチャーチルが即座に答えた言葉が「the Unnecessary War」だったのです。
日本語版ではこの言葉を「無益の戦争」と訳していますが、その後の文脈を考えると「不要の戦争」と訳すこともできます。
なぜなら今回の戦争ほど防止することが容易だった戦争はなかった(a war more easy to stop)とチャーチルが考えているからです。
詳しい内容は本書にゆずりますが、大切なことは第二次世界大戦は「不必要」で「利益の無い」戦争であったという認識をもつことであり、今後にその教訓を生かすためには、過去を深く考えることが必要であるということです。
私はチャーチルがノーベル文を受賞したこの作品をよく知るために原著も購入して読み比べました。
チャーチルは、人類が大戦後になおも平和と安全を発見することができず、さらに一段と大きな危険(even worse perils)に当面しており、人類の悲劇は頂点に達している(the human tragedy reaches its climax)としています。
ここでチャーチルが言う「さらに一段と大きな悲劇」とは、米ソの冷戦を指しています。
チャーチルが予言したとおり、大戦後に朝鮮戦争やベトナム戦争という米ソの代理戦争がすぐに勃発し、さらに多くの血が流れる結果となりました。
今後も「the Unnecessary War」を行わないためにチャーチルが『第二次世界大戦』を著して願ったことは、次の言葉に要約されています。
It is my earnest hope that pondering upon the past may give guidance in days to come, enable a new generation to repair some of the errors of former years, and thus govern, in accordance with the needs and glory of man, the awful unfolding scene of the future.
過去を深く考えることが来るべき日々の手引きとなり、次の世代がかつての過ちを少しでも是正すること、それにより人類の必要性と栄光に従って、恐るべき未来の光景の展開を抑制できることを私は心から願っている。
チャーチルは、私たちが過去を深く考えること(pondering upon the past)で、かつての過ちを少しでも是正すること(to repair some of the errors)を願っています。
その後も繰り返されている戦争を考えると、私たちは過去から学んだ教訓を十分に生かしているとは言い難い状況にあるようです。
大臣や首相という重要ポストの政治家として二度の大戦を経験したチャーチルの『第二次世界大戦』は、過去を手引き(guidance)とすることの重要性を教えてくれる本です
竹村知洋