民進党の細野豪志代表代行が憲法改正試案を発表(10日発売の中央公論に掲載)するらしい。内容は緊急事態条項の創設ほかで、私としては9条に注目しているのだが触れないようだ。
まあそれはそれとして、少し古いが 参考のため旧民主党が作った「憲法提言中間報告」の中から、「9条」部分だけを掲載してみた。
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憲法提言のための中間報告をまとめて
民主党は、1999年から党内に憲法調査会を設置し、時代の変化に対応しうる、言わば生きた憲法を確立しければいけないという姿勢でこれに臨んできた。そしていま、その場凌ぎの対応を繰り返す政府によって憲法の「空洞化」が進み、いわゆる条文上の文言を守ることに汲々として憲法の「形骸化」を放置する状況に直面し、私たちは、21世紀の新しい時代に応える創造的な憲法論議が必要だとの思いを強くしている。
そもそも日本では、中央集権システムの下で、官僚による恣意的な行政指導が横行し、「法の支配」が形骸化するという傾向を強く有していた。そのうえ、今日、例えば、「初めにアメリカありき」の外交により、ルールなき自衛隊の海外派遣が繰り返されて、あたかも日米関係が憲法を超えるかのような政治の実態が生まれている。
明確なルールの下で運営されない政府を持つ国を、アジアの近隣諸国は信用しないだろうし、国民もまた、そうした政府を信頼することもないであろう。
私たちは、こうした現実に何よりも深い危惧を抱くととともに、強い警告を発したいと考えている。
民主党が掲げる「創憲」は、このような危うい政治の現実に対して、立憲政治を立て直し、「法の支配」が確立された社会を創り出すことにその大きなねらいがある。そして、過去を振り返るのではなく、未来に向かって新しい憲法のあり方を考え、積極的に構想していくという意味での「創憲」がいま最も求められているものである。
本「憲法提言中間報告」は、この考えを基に作成されたものである。
民主党憲法調査会
会長 仙谷由人
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【第1】~【第4】は、略
【第5小委員会国際・安保】憲法の下の安全保障の確立をめざして
――憲法9条論議の焦点と基本方向――
日本における安全保障問題を展望するとき、いま、もっとも危険なことは憲法の「空洞化」である。時々の状況に流されて、政府が行う恣意的な憲法解釈がこの国の安全保障をして、憲法政治の実現を著しく困難なものにさせている。
私たちは、憲法は現実政治に生かされるものでなければならないと考えているので、憲法の条文を固持することに汲々として、その形骸化・空洞化を放置する立場はとらない。憲法を鍛え直し、国家権力の恣意的解釈を許さない、確固たる基本法としての構造を確立することが必要だと考えている。
一方で、古いタイプの脅威と国家間紛争に代わって、新しいタイプの脅威が地球規模で覆いつつあり、これに対応しうる新たな安全保障と国際協調主義の確立が求められている。私たちは、これまでの日米関係一辺倒の外交と安全保障政策を脱して、2l世紀の新時代にふさわしい、「アジアの中の日本」の実現に向かって歩み出すべき時を迎えている。また、国際協調主義の立場に立ち、国連中心の国際秩序の形成に向け積極的な役割を果たしていくべきである。そのためには、例えば、EUの発展過程に見られるような「主権の移譲」もしくは「主権の共有」を含めた、よりグローバルな視点からの憲法の組み直しにもあえて挑戦する気概が必要だと感じている。
以下、主に憲法9条問題に焦点をあて、私たちの基本姿勢と検討方向を提示する。
1.日本国憲法又は9条の原則的立場
そもそも日本国憲法は、国連憲章とそれに基づく集団安全保障体制を前提としている。前文に謳われている国際協調主義は、国連憲章の基本精神を受けたものであり、第9条の文言は国連憲章の条文をほぼ忠実に反映したものである。
日本は、憲章が掲げる「基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小国の同権」に関する信念を国際社会と共有し、その集団安全保障が十分に機能することを願い、その実現のために常に努力することを希求し、決意した。日本は、憲法9条を介して、一国による武力の行使を原則禁止した国連憲章の精神に照らし、徹底した平和主義を宣明している。それはまた、日本国憲法が、その精神において、「自衛権」の名のもとに武力を無制約に行使した歴史的反省に立ち、武力の行使について強い抑制的姿勢を貫くことを基調としていることにも反映されている。
以上の原則的立場については、日本国憲法又は9条の「平和主義」を国民及び海外に表明するものとして今後も引き継ぐべきである。
2.国際協調主義に立った安全保障の枠組みの確立を
私たちは、政府の恣意的な憲法解釈を放置することなく、日本の安全保障政策が憲法の下に確たるかたちで位置づけられる、憲法9条問題の解決に向けて、以下の基本的考えを提案したい。
第1は、憲法の中に、国連の集団安全保障活動を明確に位置づけることである。国連安保理もしくは国連総会の決議による正統性を有する集団安全保障活動には、これに関与できることを明確にし、地球規模の脅威と国際人権保障のために、日本が責任をもってその役割を果たすことを鮮明にすることである。
第2は、国連憲章上の「制約された自衛権」について明記することである。ここに言う、「制約」とは、<1><1>緊急やむを得ない場合に限り(つまり他の手段をもっては対処し得ない国家的脅威を受けた場合において)、<2>国連の集団安全保障活動が作動するまでの間の活動であり、かつ<3>その活動の展開に際してはこれを国連に報告すること、の3点を基本要件とすることを指す。
第3に、「武力の行使」については最大限抑制的であることの宣言を書き入れる。国連主導の下の集団安全保障行動であっても、自衛権の行使であっても、武力の行使は強い抑制的姿勢の下に置かれるべきである。わが国の安全保障活動は、この姿勢を基本として、集団安全保障への参加と、「専守防衛」を明示した自衛権の行使に徹するものとする。