山岳ガイド赤沼千史のブログ

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あぐらをかきながら

2018年08月16日 | ツアー日記

 昨年一年間は僕にとって空白の一年間となった。
五月末に富山の毛勝山を下山中シュルンド(雪渓が融けるのに伴って出来る雪の穴)に五メートル落ちて脊椎を破裂骨折し二ヶ月の入院、その後、上半身をガチガチに固めていたプロテクターが外れたのは12月の初めだった。
とはいえ、僕の背骨は全く万全ではなくて、少し負荷がかかるとギリギリとした違和感が背骨を走るのだった。
横になっていて起き上がるのにも先ずグルリと寝返りを打つ要領でうつ伏せになり膝を立て、手を伸ばしてから立ち上がる。
チタンプレートとボルトで固定した背骨は曲がりにくく、体をねじる事は主治医に禁止されていた。
長時間椅子に座ることさえ辛くて直ぐ横になりたくなるし、背骨を丸く曲げなければならないあぐらはかけなかった。
とにかく、自分の背骨が信用ならず、もし転んだら接合部分が外れてしまうのではないかと言う不安がいつもつきまとった。

そんな僕だったが怪我から一年を経過してみると、そんな漠然とした不安を感じることが 段々と減って、背中の違和感もいつの間にやら無くなって、草刈り機を背負って畦道の草刈りをしたりちょっとした力仕事もこなせる様になってきたし、ボチボチだが山にも登っている。
ようやくチタンプレートと仲良くなれてきたのかな?

手術直後不安だらけの僕に主治医が言った、
「手術は成功したし、二年はかかるけど、また普通に山登れるよ。だいじょぶ、だいじょぶ!」 
実際そうなってきているような気がする。
今でもあの時の事を思い出すと 底知れぬ恐怖が蘇ってくる。
それにしても僕は本当に運がよかったのだ。
今あぐらをかいてこれを書いている。