続発する火山噴火…阿蘇山の次は富士山か?
緊張が走った富士山の「噴火未遂」
2011年3月15日の夜、静岡県東部を震源としたマグニチュード(M)6.4の地震が発生し、最大震度6強の揺れを観測した。
3.11地震(M9.0)の4日後のことである。その地震の震源が富士山の直下14キロメートルと知った時、私はついに来るべきものが来たと直感して緊張した。
富士山のマグマ活動の目覚めである。
富士山のマグマだまりの上面は地下20キロメートル付近にあることが観測からわかっているので、この地震はマグマだまりの天井に亀裂が生じたと言ってもよい地震だった。
大地震の直後に近隣の火山が噴火した事例が、世界中から報告されている。富士山も例外ではなく、1707年宝永東海・南海地震(M8.7)の49日後に大規模な噴火(宝永噴火)を始め、16日間にわたって大量の火山灰が放出された。
それから300年余りの静寂を続けてきた富士山が、ついに目覚める時が来てもおかしくはなかった。
しかしながら、富士山の観測データは、それから4年半後の今日に至るまで顕著な異常を示さず、火山活動は静穏なままである。
これには私も拍子抜けした。このことを素直に考えれば、地震を引き金としてすぐに噴火に至るほど敏感な状態ではなかった、つまりはマグマの準備がまだ十分には整っていなかったとみるべきであろう。
日本列島は火山の活動期に入ったのか
では、富士山以外の日本列島の火山はどうだろうか?
東日本全体を見ると、3.11以降、十勝岳(北海道)、蔵王山(宮城・山形県境)、吾妻山(福島・山形県境)、草津白根山(群馬県)、浅間山(群馬・長野県境)、御嶽山、箱根山、西之島(小笠原諸島)の8火山に噴火警報が出たが、箱根山と西之島以外の6火山はもともと活動的な火山なので、地震で誘発されたとは言いにくい。
箱根山についても、過去数年に1度は火山性の群発地震を起こしているため、今回たまたま噴火に至ったのかもしれない。
とくに、3.11地震の震源域に近い東北地方の火山が、ほぼ静穏であることに注目すべきである。3.11以降に発表された噴火警報は、わずかに吾妻山と蔵王山のみであり、蔵王山の警報はすでに解除された。
西之島と九州は3.11地震の震源域から1000km以上離れているので、M9の巨大地震といえども影響を受けるとは考えにくいし、世界的に見てもそのような事例は乏しい。
3.11以降、九州では、阿蘇山、霧島山、桜島、薩摩硫黄島、口永良部島の5火山に噴火警報が出たが、やはりいずれも数年に1度は異常を示してきた火山であり、あえて3.11地震に誘発されたと考える必要はない。
つまり、日本列島の火山活動が活発化しているように見えるのは、2014年9月の御嶽山噴火災害によって火山に注目が集まり、報道の数が圧倒的に増えていることと、火山の異常に対する気象庁の対応もやや過敏となっていることによる効果が大きいのだろう。
もっと「すごいこと」が過去に起きていた
そもそも火山の「活動期」の存在は、広く学界に認められたものではない。
「活動期」の存在を主張する研究は複数あるが、確固とした定量的な共通の定義があるわけではなく、活動期の発生メカニズムが判明しているわけでもない。
どんな自然現象にも消長はつきものであり、たまたま噴火が重なった時期を単に「活動期」とみなしている可能性も否定できない。
さらに、3.11以降に生じた噴火は、いずれも小規模なものである。
昨年9月の御嶽山噴火も小規模なもの(噴出物の総重量は50万~100万トン程度)であったが、火口近くに多数の登山者がいたために大惨事となった。
日本列島の噴火の歴史をひも解けば、桁違いの規模の噴火が頻発した時期もあった。
たとえば、17世紀の道南では北海道駒ヶ岳の1640年噴火に始まり、1663年の有珠山、1667年の樽前山という大規模かつ爆発的な噴火(いずれも25億トンクラス)の3連発が起きた。1611年に三陸沖から北海道沖にかけて生じた巨大地震の影響かもしれないが確かなことは不明である。
こうした厄介な噴火は、20世紀前半、1914年の桜島噴火と1929年の北海道駒ヶ岳噴火の2度生じて以来、現在に至るまで80年以上、日本列島のどこにも起きていない。
また、別の例としては、19世紀後半から20世紀前半にかけて東北地方の火山(岩木山、秋田焼山、岩手山、秋田駒ケ岳、蔵王山、安達太良山、吾妻山、磐梯山)が小噴火を繰り返したことがある。
火山学者の多くは、こうした真の「活発化」の事例を熟知しているため、現在の日本列島が活動期に入ったという安易な見方に冷ややかな反応を示す者が多い。
大地震の直後に噴火したケースもある
しかしながら、たとえば1960年チリ地震(M9.5)のそれぞれ2日後と1年8か月後に近くのコルドンカウジェ火山とカルブコ火山が大噴火を起こした。その後、この2火山は鳴りを潜めていたが、2010年チリ地震(M8.8)が起きると、その1年3か月後にコルドンカウジェ火山が、そして5年2か月後の今年2月にカルブコ火山が大噴火した。
大地震の直後に噴火する火山もあれば、数年経てから噴火する火山もあることが、この例からわかる。ただし、地震から噴火までの経過年数が地震毎や火山毎にまちまちになる理由は、まだわかっていない。
先に述べたように、3.11地震からすでに4年半が経過したが、この地震によって明確に誘発されたと言える噴火は、いまだに発生していない。
とはいえ、マグマだまりの中で、観測にかからない現象(噴火への準備過程)がゆっくり進行していたとしても、現在の技術でそれを知る術(すべ)はない。
とくに、3.11地震の震源域に近い東日本の火山(富士山を含む)について、少なくとも向こう10年程度は注意深く経過を観察すべきであろう。
美しい景観、豊かな温泉、地域に根付く山岳信仰…。火山列島に生きる私たちはその恩恵を受けつつ、隣り合わせのリスクにも常にさらされている。普段から火山を意識し、その恵みを楽しむことを通じて、火山の特性や危険についても学んでいってほしい。
なるほど・・・・・今度は、どこが噴火してもおかしくないですね国土交通省気象庁のホームページに注目です。興味深い