鳥取県中部を襲った地震で、秋の行楽シーズンを迎えた観光地が打撃を受けている。県内有数の温泉地では宿泊予約のキャンセルが相次ぎ、旅館関係者は「これからが書き入れ時なのに」と頭を抱える。

 ラジウムの含有量が多いことで知られる同県三朝町の三朝温泉。旅館組合によると、25あるホテルや旅館では21、22両日で計約2100人が宿泊をキャンセル。震度5強の揺れで、一部の施設では天井板が剥がれ落ちるなどした。23日時点で多くの旅館は通常通り営業しているが、断水などの影響で4施設は再開の見通しが立っていない。

 300人程度のキャンセルが出たという依山楼岩崎の岩崎元哉経営企画室長(34)は「紅葉や松葉ガニの解禁でこれから売り上げが最も多い時期。営業自体は全く問題がなく風評被害が心配だ」と嘆く。

 別の老舗旅館の担当者は「11月末まで予約で埋まっていたが次々とキャンセルの連絡が来ている。余震も続いているので何とも言えない」と複雑な表情で話した。

 愛知県から旅行で訪れた主婦安達綾子さん(40)は「旅館に確認し、被害がなかったようなので来た。余震は心配だがゆっくり温泉につかりたい」と話していた。

 震度6弱を観測した同県湯梨浜町の「はわい温泉・東郷温泉旅館組合」によると、地震当日から3日間で約900人のキャンセルが発生し、1800人を超える可能性もあるという。加入する14施設のうち、復旧作業中の2軒を除き通常営業を始めている。

 組合の担当者は「観光客の方に安心してもらえるよう準備、点検している。今まで通り観光に来てもらえることが一番力になる」と語った。