いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

三井住友銀行は「3条但書」適用を国と争うべし(笑)

2011年06月01日 15時11分04秒 | 法関係
全銀協には関係ありませんが、みずほ銀行に対する金融庁の処分がかなり厳しかったのは、ひょっと東電緊急融資に絡んで裏で何かあったのかな、などといった噂好きたちの憶測を招いたりしたんでしょうか。金融庁のご意向に対し、二つ返事で即融資に応じなかったから、とか?
根も葉もない話ですから、これはおいといて、と。

非常にナーバスになっていると奥会長も言っていた、格付け会社の東電評価ですけれども、ボロクソに落ちて行ったみたいですね。ただでさえ落ちていたのに、そこから更に奈落の底へと旅立って逝かれたようで。ジャンクですか。今度は一気に5段階引き下げだったんでしたか。残念ですな。
小細工を弄して、墓穴を掘るの図、でしょうか(笑)。


さて、本題に入りましょう。

会長記者会見|全国銀行協会

奥会長の会見での発言というものを、報道以外から初めて拝見しました。とても参考になりました。それから、官房長官の記者会見のページも質疑応答を全部載せておいて欲しいですよね。調べられないもの。その点、全銀協さんはきちんとされていらっしゃる。さすが、お堅い銀行さん、ですね。


奥会長は、5月19日会見で、次のように述べておられた。

賠償スキームについて触れる前に一言申しあげると、この場でいつも原子力損害賠償法の3条但し書きについて言ってきたが、今回のスキームというのは、基本的に3条但し書きの話ではなくなっている。どうしてかなぁ、と思う。なかなか難しい話ではあるが、閣内では与謝野大臣が、そういう話をされているということを新聞で読んだが、私はそこの結論に至るインナーの議論がオープンにされても良いのではないかと思っている。3条但し書きというものをわざわざ規定していることの意味合いを踏まえ、国民に対して説明する責任があるのではないかと思っている。おそらくこれは、私だけではなく、国内の関係者、海外の投資家、または法律家が、大変強く関心を持っており、私はこの点については説明を果たしていただきたいと強く思っている。

3条但書については、これ以前にも言ってきたということで、4月14日会見にもありました。

私は、弁護士でも学者でもなく、また法律を解釈する立場にもないので、何とも言えないが、私なりに法律を読みこんだ印象としては、3条但し書きの検討余地もあるのではないかということ。
 「被害者救済」と「原子力事業の健全性の維持」という二つの目的を実現するというのがこの法律の趣旨と理解しており、私はそういった(但し書き適用の)検討余地があると思う。いずれにせよ大事なのは、これらの二つの目的を達することであり、そのためには、政府の関与が必要であるということを申しあげている。政府は本則で「第一義的に東電に責任がある」という考えをしているが、但し書きを適用するという考え方を採る余地もあるのではないか。そのうえで、どうような対応をすべきと判断するのかということだと思う。今回のケースは、初めての出来事だから不手際というのはある。そして、原子力発電所の問題が、ここまで大きくなるとは思っていなかったけれども、実際に被害を受けていらっしゃる方がいるわけだから、その救済をしっかりやっていくということと、冷静に本件の因果関係を辿ってみて、国の関与をどうするかということをしっかりみていく必要があるのではないかと思う。政治としてみれば、住民感情というのを大事にされるだろうし、それはそれで十分理解できるが、その一方で因果関係を辿っていくときに、国の関与についても十分みていかなければならないと思う。



どうやら、4月14日時点での奥会長の個人的見解としては、「但書適用の検討余地があるのではないか」ということだったみたいですね。法律を読み込んだ印象、とか、検討余地があるのではないか、といった曖昧な表現になっているから、ですね。普通、専門家の意見を聴取した場合には、例えば「顧問弁護士の○○によると~だ」とか、「当社の法務で検討した結果、~だ」とか言うはずではないのかな、と。政府だって「斑目委員長が~と言った」みたいに権威にすがろうとしたりしたではありませんか。

だが、4月の奥会長発言ではそういう「自信」とか「裏付け」のようなものが感じられないわけである。だからこそ、「弁護士でも学者でもなく法解釈の立場にない私」の意見・見解として、適用余地があるのでは、という控え目な意見だったわけでしょう?

ところが、5月19日会見になると、どういうわけか強気というか「裏付けあり」という姿勢に転換していたわけなんですよ。
まず、3月末の緊急融資に関連して尋ねられると、次のように答えている。

それに加えて、電気事業というのは、法律で、先ほどの原賠法の話もあるが、電気事業法で価格転嫁も含めてきちんと事業者が電力の供給責任を果たせる形になっている。そういうものを読み込んで、弁護士意見もとって、融資をした。したがって、この点について何の懸念をお持ちなのかどうかは知らないが、我々は、株主代表訴訟を起こされるとか、そういうことはないと思っている。

弁護士意見をとっている、ということである。法律の条文も読み込んでいる、と言っているのである。ここで、じゃあ、何故4月会見の時点でも同様に言わなかったのかな、と思いませんか?普通、自分の自信のない分野について、何らかの意見表明を行なおうとする時には、何かの権威を利用してしまいたくなるのが人間の常なのではないですかね。「自分だけじゃなく、○○(という権威もしくは専門家)が同じく言っている」とか何とか。だけど、4月時点では、そんなことは一言も言ってなかったんですよね。

更に、5月会見で松永経産次官と面談したこと(例の日経記事にあった話)を問われて、

松永次官とお会いしたことは確かである。意見交換したことも事実である。私は過去の経緯、すなわち、原賠法の立法趣旨等に係る国会審議において、当時の中曽根科学技術庁長官の答弁、池田科学技術庁長官の答弁で、法律上の解釈がどういうふうに捉えられていたのか、その辺を踏まえて考えていただきたい、と申し入れをしただけである。

と答えている。
ここまで来ると、お分かりですよね。奥会長は、少なくとも3月末時点では、
・法律の条文は読み込み
・立法過程とか立法趣旨を含め
・過去の国会答弁も含め
・弁護士意見も取り
これらをやった上で、融資実行に踏み切ったんだ、と。
そして、釈迦に説法が如く、松永次官に法解釈についてご高説を披露し、3条但書を適用してくれといったようなことを話した、ということでしょうか?

んー、4月時点の自信なさげな弱々しい意見と、5月の発言では天と地の開きがありませんかね。しかも基本的には法解釈のプロであるところの、霞が関官僚の頂点に人間に意見した、と。なのに、4月14日会見では控え目に、自分なりに読み込んだ印象を語る、と。ふーん。
珍しい人間というのもいるもんだね。


で、新たな知見をいただけましたので、お礼を申し上げます。どうやら、国会答弁での中曽根大臣の発言というのが、取り上げられるようなのですね。そこで、調べてみましたよ。すると、ありました、賠償に関する答弁が。


○昭和35年5月18日 中曽根国務大臣(科学技術庁長官)答弁

第三条におきまする天災地変、動乱という場合には、国は損害賠償をしない、補償してやらないのです。つまり、この意味は、関東大震災の三倍以上の大震災、あるいは戦争、内乱というような場合は、原子力の損害であるとかその他の損害を問わず、国民全般にそういう災害が出てくるものでありますから、これはこの法律による援助その他でなくて、別の観点から国全体としての措置を考えなければならぬと思います。戦争のような場合に船が沈む、その保険の支払い等いろいろな問題も出てきましょうし、戦災にあうこともございましょう。従って、そういう異常巨大な社会的動乱あるいは天災地変というような場合には、これは別個のもので取り扱われるので、その限りにおいては、政府に法律上責任はない、そういうことになるのであります。それで第十六条に書いておりますのは、五十億円までは保険をかける、ところが、五十億円以上の、イギリスでやっておる再保険を引き受けてくれませんから、その五十億円以上の再保険にかからない、保険ではカバーできないものをどうするかということをここで規定したわけであります。その部分については、ここに書いてありますように「必要な援助を行なうものとする。」と書いたのは、行なうことができるというのではないのでありまして、国がやるのだということを明言しておるのです。しかも、それは「原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助」というのですから、その業者の企業能力によっては、銀行から金を借りて、そして被告者に払うという場合もありますし、国が国家融資をしてやるという場合もございましょうし、あるいは補正予算を組んで補助金をやるという場合もありましょう。しかし、いずれの場合にせよ、客観的に損害額が確定された場合に、業者が自分で支払える限度まできて、しかも、もうそれ以上払えない、原子力事業の健全なる発達という面からしましても、これ以上払えないという限度以上の損害額があって、まだ第三者に払ってない、そういう場合には、その全部についてこのような必要な援助を行なって払わせる、そういう意思表示なのでございます。』


『その異常に巨大な場合にはどうするかという問題については、第十七条に規定してありまして、「政府は、第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」この場合は、一般の災害救助法もありますし、それ以外のこともありましょう。とにかく、そういう場合には、国民の民生に関することでもあり、生命財産に関することでもありますから、最善を尽くして必要最大の措置を行なうわけであります。しかし、それは、十六条とか、そのほかの場合における損害賠償という意味ではなくして、国の一般政策として当然これは行なうべきことでありますが、特に念のためにこれは書いてあるのでございます。』


『これは災害救助法もございましょうし、ともかく、戦争や内乱が起きた場合に、国が乱れていろいろな事故が起きる、そういう場合におけるいろいろな応急措置、その他全般が入るわけでありますので、今からどうというように限定するわけには参りません。少なくとも、災害救助法程度のことはやるという、最低限のことは言えると思いますが、それ以上は、そのときの情勢によって、政府なり国会なりがきめることになるだろうと思います』


もうね、いきなり答えが出ているわけですよ。3条但書の場合には、国は賠償しない、補償してやらない、とはっきり答弁されているわけです(笑)。この法律による援助その他でない、もっと別な措置が必要、と言っている。
そういう異常巨大な社会的動乱あるいは天災地変というような場合には、これは別個のもので取り扱われるので、その限りにおいては、政府に法律上責任はない、とはっきりくっきり書かれているわけなんですよ。

これらを読んで、どこをどう解釈すると、国が賠償せよ、とかいう意見に結びつくのか、全く不明。
原賠法を条文通りに適用せよ、とか、大騒ぎしていた経団連会長他の意見はいかに出鱈目だったか、ということがよくわかりますね。本当に、弁護士が条文を読み込んで、そういう意見を言ったんですか?(笑)どんな弁護士だよ。
16条その他の損害賠償という意味ではない、とも言ってるし、法律の条文に書いていある通り、ということですね。異常に巨大な天災地変ということなら、別な立法措置などで対処するべき、ということになるでしょう。

当方のような、弁護士でも学者でもなく法解釈の立場にない、ただのド素人が読んだって、判ることですわな。

原子力損害の賠償についての検討

国が援助するというのは、、原子力事業者に賠償義務があって、なおかつ原子力事業者の支払い能力を超えており、政府が賠償措置を入れているにも関わらず足りない、ということならば、援助しましょう、というだけである。
この援助というのも、支払い限度に到達してしまって、もう無理だ、ということなら行いましょう、というだけである。

援助には、融資や補助や政府貸付なんかもあるかもしれないが、あくまで事業者への支援であって、国が払うべきというものではない。


最後に、奥会長は東電は普通の会社とは違う、というようなことを述べているわけだが、だとすると金の貸借や政府関与についても普通の場合とは異なってもおかしくない、ということになるのではないのか?

資本主義の中で、おかしいではないかということかもしれないが、電気事業、その他の公益事業も一部そうであるが、特別の法律をつくって、具体的には、電気事業法、さらに原子力については、原子力損害賠償法あるいは原子力損害賠償補償契約法といったものをつくって対応してきているわけである。国によっては原子力については国営、または公的機関がやっている。そういう例から見ると、一般の事業会社とは少し違うということになる。今回の賠償の問題も、一般の不法行為責任ではなく、原賠法にもとづいてやるということであるから、(通常のケースと)同列に考えるのは違うということになる。

あれか、自分たちの都合のいい部分だけは「通常とは違う」の論理で、都合の悪いこと(例えば減資、減免や放棄など)は「マーケットに従え」の論理とか?(笑)

公益性が高い企業であって、必ずしも自立した民業を全面的に主張するべきものでないなら、政府が救済する代わりに原子力事業者は政府管理に従うべきというのは当然なのではないのか。
喩えて言えば、銀行が管理下に置く企業があって、毎年慰安旅行に海外クルーズで豪遊してるくせに、「もう自分たちで払える金はないから、銀行が出して」と言われたらどうするの、というようなものだ。銀行の立場とすれば、いやいやもっと経費削減できる余地があるでしょう、もっと削りなさい、返済負担に回しなさい、とか言うんじゃないのか?
ところが、東電のきたら「もう払いたくない」とハナっから政府の言うことなんて聞く気がないでしょうが。それを後押ししてるのが、銀行や経団連以下財界の連中とか、マスコミとか、官僚とか、そういうのだろ?ってことを言ってるんだよ。
銀行が焦げ付きたくないなら、東電を甘やかせる手助けをすんな、って言っているのですよ。まず事業者がきちんと査定されて、出せる金を出してもらって、その上で「もうこれ以上払えません」という部分については、政府の援助を考えましょう、という話だ。金を出してもいないうちから、これ以上払いたくないなんてのは許されないだろう。


いずれにせよ、東電と銀行とか財界とか官界とか、そういう連中のサークルというのはこのように構築されてきたんだね、というのがよく判る事例となった、ということだわ。

法律を読み込んで、立法趣旨も網羅し、弁護士等専門家の意見も聴取し、その上で「3条但書」適用と信じて融資実行に至った、ということなんだろうから、ここまで来たら国と法廷で決着をつけたらいいよ。適用すべし、というご意見なんでしょう?
与謝野大臣の閣内不一致もあって、説明を求めると言っていたじゃありませんか。ならば、法廷で明らかにできるでしょうよ。三井住友銀ほどの力、いや、全銀協の力をもってすれば、提訴くらいは簡単ではないですか?

東電株を持ってるはずだから、政府が但書を適用しなかったせいで株価下落を招き、銀行は損害を蒙った、だから賠償せよ、ということで、損害賠償請求事件でいいんじゃないの?それなら、即提訴できるんじゃないですかね?

是非ともやったらいいですよ。はっきり、白黒つけたら、奥さんも納得できるでしょうよ。