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オール人力狙撃システム試作機

東電の資金繰り問題~2

2013年12月13日 22時04分45秒 | 法関係
原子力損害賠償に関して、少し前に話題になったようだが。
>http://www.nikkei.com/article/DGXDZO63045780T21C13A1MZA001/

(一部引用)
福島第一原子力発電所の事故後、東京電力の対応が変化したことに関する記述も興味深い。当初、原賠法3条ただし書きにもとづく免責を主張していた東電は、訴訟の乱立による混乱の拡大をおそれ、免責要請を撤回した。その後東電が自ら法的整理を模索するにいたったのは無限責任等の厳格な責任を回避するためであったが、政策担当者は東電の責任逃れを封殺し、その結果、東電の実質国有化が必然化したとしている。

 原子力損害賠償支援機構スキームを構築した官僚たちの役割をやや過大評価しているきらいがあり、支援機構スキームのもつ限界性への指摘が弱い印象を受ける。


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元々、東電も銀行団も経産省も、みな「3条但書」を適用させようと必死になっていたのだよ。大手マスコミも、それを支援していた。経団連会長も全銀協会長も経済同友会会長も商工会議所会頭も、みんな「但書適用だ」と豪語していた。

しかし、それはおかしいのではないか、と拙ブログでは考えて、次の記事を書いたわけである。「原子力損害の賠償に関する法律」(マスコミなどでは原賠法と略称される)についての解釈を当方の独断で行い、書いたものである。


11年5月1日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/1172995f571f1114a0ec95a8561f95ca


しかし、4月後半ではずっと適用だ適用だと東電も財界も銀行も大合唱だったので、当方のようなド素人見解を採用することなどあり得なかったろう。オレがいくらそう主張してみたところで、社会の重要部分は別の所で決まるわけだから。

しかし、3条但書が適用されたら、国の賠償義務もなくなって、東電は政府支援を受けれないことは確定となる。銀行団だって、松永次官の口車に乗って緊急融資を2兆円もぶち込んだわけで、これの責任問題へと発展するのは必定だった。


一連の流れは、次の記事で述べた通りだ。

11年5月30日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/9ea714985aebe0e17895a536549dbbb4

11年5月31日
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/818059defb70fb1a02a682a3a46509a3


経産省の官僚ばかりではなく、金融庁サイドも銀行に「貸せ」と言った、とされているわけだ。そして、30日の記事で指摘した通り、政治家が介在してない、ということなのだな。


(再掲)
2つの記事を読んで即座に感じた最大の疑問は、この中にはただの一人も「政治家が登場しない」ということだった。
つまり、この国では、重要な案件を相談したり考えたりする時には、政治家なんかには用はない、官僚が即決すべし、ということであろう。
民主党政権になったとて、やっぱり官僚主導国家ということだろう(笑)。
記事を読んでゆくと分かるが、官僚が勝手に思惑で発言したり決めたりして、それに銀行も従うという図になっているわけである。銀行が従うというよりも、本当は銀行サイドの意向を受けて官僚が動いた、ということかもしれないし。
大きな問題なのは、官僚はあたかも”国”を代表してしまっている、ということである。一官僚に過ぎない人間が発言したり、行動したりするわけだが、それがどういうわけか「国が約束した」ということにされてしまっている、ということである。官僚の考え・発言=国(政府)決定というすり替えをまんまと利用されているのだ
。』


前記日経記事書評の橘川一橋教授が「官僚たちの役割を過大評価」と書いているが、現実にあれこれと画策して物事を進めていったのは、恐らく官僚たちだったのだよ。東電の緊急融資決定自体が、まさしくそうだったわけで。

(再掲)
じゃあ、もしも銀行の融資回収に穴が空いたら、松永次官が個人で責任を取って、弁償でもしてくれるとでも言うのか?
口約束みたいにして、銀行に金を出させるというのは、「国が決めたこと」とでも言うつもりか?

金融庁・森、経産省・北川と山下らの官僚が、誰のどういった指示で動いていたのか、ということだ。そこに政治家の存在が、全く見えてこないのである。
官僚の暴走と何が違うのか?



もしも3条但書適用してしまうと、東電に貸し込んだ銀行の責任問題へと発展する。その上、融資を要請(実際には命令にほぼ等しい、ということか。拒否したりすると金融庁検査など公権力でイジメられる)した官僚たちの責任問題にも繋がるわけだよ。それだけは何としても回避しなければならない、と。救済スキームを考えるヤツラは、そういう「責任逃れ」の方策だけはお得意だからな。


5月20日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/33092492068f474ac564f1e201f67e1c


法的に争うべき、とお勧めしたにも関わらず、銀行団はダンマリに戻ったわけだよ。何故なら、火の粉が自らにも降りかかるから、だ。東電は資金繰りにつまり、破綻することは避けられなくなるから、だ。社債償還だって、短期資金だって、銀行融資返済だって、いずれも止まれば倒れるからな。


格付けが5段階も一気に落ちて、倒産同然の企業に多額融資を継続するとなれば、メガバンクさんだって「審査を通す正当事由」というものが必要になるわけ。まさしく「半沢直樹の世界」みたいな話なんだよ。再建計画なり経営計画なりが「妥当性がある」という内容じゃないと、資金回収を避けたらその時点で銀行は背任同然だろうよ。

つまり、法的に銀行が義務違反を回避しようとすれば、「東電が倒れそうにない」という大義名分が必要なのであり、それは「3条但書適用」になってしまうと政府支援が受けられないことが確定となるので、他の理由を探し出す以外にはない、ということなのさ。それは無理に決まっている。


故に、政府支援を前提としない限り、救済はできない、融資継続もできない、というのが不可避なのだ。政府支援の法的根拠はどこにあるかといえば、3条但書の際に適用される17条ではないのだ。


このヘンの話と、救済スキームについても当時書いた。

11年5月19日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/cb090643bc67c17a6424647c89e8f7df


因みに、記事の本文中では、「現状回復未達」とか書いてしまっていますが、これは誤字でした。正しくは、「原状回復」です。そのように読み替えて下さいませ。
電気事業法上の原状回復義務が課せられているのは、あくまで「原状回復」です。


そして、東電が最も恐れたのは、過失を法的に争われたりすることだったはずだ。何故なら、女川発電所や福島第二発電所がメルトダウンを回避できていたのに、福島第一だけが苛酷事故となれば、「操作ミスがあったのではないか、予見可能性があったのではないか」ということを、裁判で検証されることになってしまう。


これを本当にやられてしまった場合、法的責任を逃れられるか疑問の余地があったはずだ。しかも電気事業法64条及び65条違反は確定的となるから。


なので、3条但書適用というのは断念せざるを得なかった、ということであろう。そうじゃなければ、東電以下、経済界全体で反対していたのを、そう簡単に政府が引っくり返せるはずがないもの。今の安倍政権を見てみよ。経団連が絶対反対といえば効力を発揮しとるでしょうが。


津波のせいと言えば言い逃れできると考えていたはずだが、どうも自信がないということで、政府支援を受け入れるしかなくなったのだろう。

5月15日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/8aaa8a97557c3beb09b214366627d347



東電も、霞が関官僚も、マスコミも、銀行も、そういうエリート階層の連中が腐った状況を作り上げたのだ、ということさ。その暴力団まがいの関係は、今でも続いているからこそ、無担保融資の強要ということなんだよ(笑)。



東電の資金繰り問題~1

2013年12月13日 21時10分39秒 | 法関係
最近よく見るニュースは、猪瀬都知事の無担保無利息5千万円融資という、ハメられた報道であるが、これと同じようなことは他でも起こっている。ケタ違いだけどな。

東電さんの資金が底を尽くので、「1兆円ばかり用立てしてくれや」ということで銀行団に無担保で貸せ、と要求をしたんだそうです。


>http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE9BA04W20131211

[東京 11日 ロイター] -東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)と政府の原子力損害賠償機構が取引金融機関に対して、来年1月以降、新たに借り換えを迎える融資や追加融資について、一般担保を解除して実行するように要請していることが分かった。

福島第1原発事故の処理に国費が投入されるなかで金融機関も相応の負担をすべきとの国会の議論に配慮したかたちだ。複数の関係筋が11日、明らかにした。

主力取引銀行の三井住友銀行など金融機関は、震災前に実施していた融資を延長する際、通常の債権よりも返済が優先される一般担保付の私募債の形式に順次切り替えている。そのほか、昨年以降の新たな貸出も一般担保付としており、事故前は発行がなかった私募債残高は2013年9月末時点で8156億円に増加している。

国会などでは、私募債スキームは銀行融資優遇だとの批判が出ていた。自民、公明両党の東日本大震災復興加速化本部による原発事故支援提言にも、東京電力の経営再建をめぐり「関係者を含めた東電全体が責任を果たす」と明記しており、無担保融資に切り替えることで取引金融機関にも一定の負担を求めたい考えだ。

東電と賠償機構は主力取引行に対して、来年1月から私募債への転換をやめ無担保融資とするよう今週要請。生保や地銀など他の金融機関に対しては2015年度から無担保への切り替えを要請する方向だ。

12月下旬に実行する融資5000億円分のうち、民間銀行団が実施する約2000億円は一般担保付私募債スキームとなる見通しだ。


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少し前に、みずほ銀行がやたらと叩かれていたことがあったでしょう?ああいうのって、何かウラがあるのかな、とついつい気になってしまうんですよ。金融庁検査で「こってり絞ってやるぜ」という行政権力をここぞとばかりに振るう時ってのは、他の意図があるからだというのは、官僚みたいな嫌味なエリートにありがちなイジメ的手法だわな。
(喩えて言えば、増税に反対してる論者の所には税務調査が厳しく入る、といったようなことを元財務省官僚で有名な人が言ってたようなものですな)


そして、実際に過去にも使われてきた手法だったはずだろう。これはまあ憶測なので、いいか。


以前にも拙ブログ記事で書いた記憶があったのが、コレだ。
11年6月1日>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/ad69e76c7d6123f539cea939e87e90e9


当時にもみずほ銀行がシステムトラブルで金融庁から大目玉を食らったんだった。で、今回も似たような展開なんだが、当時と決定的に違うのは「暴力団融資」問題という、あまり目立った失点ということでもなかったのに、どこからかほじくり返されて、頭取が国会にまで参考人招致させられてしまったわけだ。まあ、言うなれば「狙い撃ち」だわな。


そうすると、スズメたちなんかは「アレ?ひょっとして東電への”ゾンビに追い貸し”問題で、首を縦に振らなかったもんだから、痛めつけられたのかな?」なんて、痛くない腹を探る、というようなことがあるわけです。通常の審査を経ない貸出なんてできない、とか、これまで貸出の厳格審査を謳ってきた金融庁方針はどうすんの、みたいな、超「痛いところ」を衝いたりしたのかな、と。だって、無担保で1兆円貸せ、と要求するって、それはどんな暴力団ですかってな話だわ。まあ霞が関なんて、形を変えた暴力団と何ら違いがないんでしょうけどね。


当時、松永経産次官の要請で「事実上の政府債務保証」という出鱈目に応じたわけだから、その時からの”霞が関という名の暴力団”が新たな強請りをしてきても、文句も言えんわな、という話。一度付け込まれると、また、次の要求に応えざるを得なくなる、というのは、暴力団の常套手段だろう?(笑)それと同じようなもんじゃないのかね、ということだ。


そもそもは、安易に銀行団が緊急融資に応えてしまったばかりに、その後の東電処理問題というのがこじれることとなったのだ。本当に「銀行は政府の支配下にある企業ではない」と、原理原則を曲げなかったのなら、資金繰りという点で東電は破綻処理を行うよりなく、マーケットの論理というのを金科玉条に掲げるならそうすべきだったのではないのか。

それを後になってから、銀行は責任ない、政府の言いつけに従っただけ、ということで責任転嫁を行ったに過ぎない。そういう言い草を続けるなら、銀行が債権放棄なり1兆円単位の巨額無担保融資なり、またしても政府の言いつけ通りにやる、ということなんだろうよ。暴力団との腐れ縁は、そう簡単には断ち切れない、というのと何ら違わないようだな。



3条但書の論点に関しては、次の記事で述べる。