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続・法学者は信頼に足るか?~安念潤司中央大教授の場合3

2014年01月27日 21時10分11秒 | 法関係
更なる発見があったので、追加。


>http://diamond.jp/articles/-/47399?page=6


バカの一つ覚えで同じ話の繰り返しになるが、賠償・除染の費用を東電が負担する法律上の根拠は、今もって何ら明らかにされていないのである。よく知られているように、原子力損害の賠償に関する法律第3条は、原子力事故にかかわる損害について電力会社(同法の言葉を使えば「原子力事業者」)に無過失損害賠償責任を課すとともに、「異常に巨大な天災地変」の場合に、その責任を免除している。

 同条の解釈は民法709条の不法行為の規定の特則であるから、その解釈適用については裁判所の判断を仰ぐしかないが、福島第一の事故に関する限り、最高裁はおろか地裁段階の判断さえ得られていない。法的にいう限り、東電の責任の有無・範囲は未確定のままなのである。


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全く、法学者で弁護士というのは、ダテか?
まだ「原賠法3条但書」のことにこだわっているのか?


まあ、「異常に巨大な天災地変」に該当するか否か、というのは見解に相違があるやもしれぬ。だから、巨大だった、と主張することは許そう。


しかし、ウソはいかんな、ウソは。

当然ながら、「地裁段階の判断さえ得られていない」というのは、間違っている。



12年7月19日には東京地裁判決が出ていた。
で、政府見解は妥当、という判決だった。当時の朝日新聞には、次のように記事中に書かれていたようである。

(一部引用、元記事のへリンクは朝日デジタルでは切れています)


東日本大震災は異常な天災とはいえず、原発事故を起こした東京電力は事故による被害の賠償責任を免れない――。

こうした政府の見解の是非が争われた損害賠償請求訴訟の判決で、東京地裁(村上正敏裁判長)は19日、見解は「適法」とする判断を示した。今回の原発事故での免責をめぐる司法判断は初めて。

原子力損害賠償法には「異常に巨大な天災地変」で損害が生じた場合、原発事業者は免責されるとの規定がある。原告は東電の株主である東京都内の弁護士で、東電に責任があるという前提で被災者への賠償などを進める政府に対し、「今回は免責される場合にあたる」と主張。東電内部や経済界にも同様の見方があり、司法判断が注目されていた。

判決はまず「免責が軽々と認められるようでは、被害者の保護が図れない」と基本的な考え方を示した。続けて、今回の東日本大震災では免責されないとした政府の見解が違法かどうかを検討。地震の規模(マグニチュード9.0)や津波被害を原賠法施行後に起きた過去の大地震と比較し、規模や津波の高さが1964年のアラスカ地震(同9.2)や2004年のスマトラ沖大地震(同9.0)を上回っていないと指摘。

「免責されるのは、人類がいまだかつて経験したことのない全く想像を絶するような事態に限られる」 とした政府の見解には合理性があると結論づけた。



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訴えたのも弁護士だったわけだが、安念教授も弁護士なんでしょう?
せめて、東京地裁判決があったことくらいは、常識の範囲なんじゃありませんか?

下級裁レベルでも判断が出てない、って?


これでも弁護士か。
こんなのでも、法学者として教授が務まる、と。ふーん。そうですか。




続・法学者は信頼に足るか?~安念潤司中央大教授の場合2

2014年01月27日 18時19分25秒 | 法関係
ちょっと遅くなりましたが、つづきです。


3)「新規制基準」の適用後

安念教授は、本当に原子炉等規制法を読んだのだろうか?
改正原子炉等規制法においても、原発停止の理由は明白であろうと思うのだが。普通に読めば一目瞭然になっているとしか思えない。

まず、許認可取消権の行使、これは発電用原子炉設置者(旧法上で既に設置許可を得ている)の運転停止どころではなく、廃止措置を求めるものであるから廃炉にせよ、というのと同義と考えてよいだろう。そこまでの強権発動なんて、いきなりは難しいだろうに。高度な政治的決定が必要とされる。
停止命令についても、通常の考え方であれば、最初から命令なんてあるわけない。しかも、停止している原子炉に停止を命じても意味などない。あっても、行政指導という形式をとるだろう。


次に、事業者側が原子炉を運転しながら申請を出しても何ら問題ない、という安念教授の意見についてだが、それは無謀としか思えないわけである。本当にそんなことをすれば、今度こそ停止命令を食らうであろうな、と。


許認可取消ないし停止命令の条文は以下。


○第四十三条の三の二十  
原子力規制委員会は、発電用原子炉設置者が正当な理由がないのに、原子力規制委員会規則で定める期間内に発電用原子炉の運転を開始せず、又は引き続き一年以上その運転を休止したときは、第四十三条の三の五第一項の許可を取り消すことができる。
2  原子力規制委員会は、発電用原子炉設置者が次の各号のいずれかに該当するときは、第四十三条の三の五第一項の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて発電用原子炉の運転の停止を命ずることができる。
一  第四十三条の三の七第二号から第四号までのいずれかに該当するに至つたとき。
二  第四十三条の三の八第一項本文の規定により許可を受けなければならない事項を許可を受けないでしたとき。
三  第四十三条の三の八第四項後段の規定に違反し、又は同条第六項の規定による命令に違反したとき。
四  第四十三条の三の二十三の規定による命令に違反したとき。
五  第四十三条の三の二十四第一項若しくは第四項の規定に違反し、又は同条第三項の規定による命令に違反したとき。


(以下略)


例えば、43条の三の二十第2項第四号にある、「43条の三の二十三」規定違反の場合、というのは、次の条文である(旧法36条とほぼ同じ意味合いである)。


○第四十三条の三の二十三  
原子力規制委員会は、発電用原子炉施設の位置、構造若しくは設備が第四十三条の三の六第一項第四号の基準に適合していないと認めるとき、発電用原子炉施設が第四十三条の三の十四の技術上の基準に適合していないと認めるとき、又は発電用原子炉施設の保全、発電用原子炉の運転若しくは核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物の運搬、貯蔵若しくは廃棄に関する措置が前条第一項の規定に基づく原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは、その発電用原子炉設置者に対し、当該発電用原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、発電用原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる。
2  原子力規制委員会は、防護措置が前条第二項の規定に基づく原子力規制委員会規則の規定に違反していると認めるときは、発電用原子炉設置者に対し、是正措置等を命ずることができる。



非常にかいつまんで言うと、
・技術基準不適合
・原子力規制委員会規則違反
の場合には、諸々の「命令できる」ということになっているわけだ。
で、命令に従わない場合には、「43条の三の二十」の取消か1年以内の原子炉停止命令が発動可能、ということ。

技術基準適合要件は、以下の条文による。
○第四十三条の三の十四  
発電用原子炉設置者は、発電用原子炉施設を原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。ただし、第四十三条の三の三十二第二項の認可を受けた発電用原子炉については、原子力規制委員会規則で定める場合を除き、この限りでない。


技術基準に不適合かどうか、は、原子力規制委員会の判断に委ねられる、ということになる。つまり、原子力規制委員会が「技術水準を満たしております、適合しています」と認めない限り、原則的に「運転はできない」。
もしも「合格だよ」と原子力規制委員会が言ってないのに、事業者が勝手に運転をしてしまったら、どうなるか?
それは「43条の三の二十三」に基づく命令が発せられることを招く。命令には、使用停止、運転方法指定などがあるわけであるから、当然に「運転は停止」ということも含まれるに決まっている。停止命令に従わない場合には、やはり43条の三の二十による「取消」か1年以内運転停止という行政処分が下される。


つまり、現状において「停止命令」が発動されていないから運転していい、という主張そのものが根本的に誤っており、原子力規制委員会が「合格です」と認定しない限りは、運転できない。許可がないのに運転した場合には、必然的に「43条の三の二十三」の命令発動を招くこととなり(但しこれを発するかどうかは行政側に委ねられる)、それを無視すれば取消か停止命令、ということ。


では、技術水準不適合か委員会規則違反というのは、どういう場合に考えられるのだろうか。

福島原発事故後に、各電力会社が事故対応の為の構造、設備、施設などの追加を行ったはずであろう。こうした変更や工事自体が、そもそも原子力規制委員会の許可か届出が必要なのである。工事許可の条件はここでもやはり「技術基準の適合」が条件なのであり、またその審査期間が延期される場合もあり得る(43条の三の八第7項)。


たとえ工事許可が出て実施できたとしても、使用前検査に合格する必要がある。

○第四十三条の三の十一  
第四十三条の三の九第一項若しくは第二項の認可を受けて設置若しくは変更の工事をする発電用原子炉施設又は前条第一項の規定による届出をして設置若しくは変更の工事をする発電用原子炉施設(その工事の計画について、同条第四項の規定による命令があつた場合において同条第一項の規定による届出をしていないものを除く。)は、その工事について原子力規制委員会規則で定めるところにより原子力規制委員会の検査を受け、これに合格した後でなければ、これを使用してはならない。ただし、原子力規制委員会規則で定める場合は、この限りでない。
2  前項の検査においては、その発電用原子炉施設が次の各号のいずれにも適合しているときは、合格とする。
一  その工事が第四十三条の三の九第一項若しくは第二項の認可を受けた工事の計画(同項ただし書の原子力規制委員会規則で定める軽微な変更をしたものを含む。)又は前条第一項の規定による届出をした工事の計画(同項後段の原子力規制委員会規則で定める軽微な変更をしたものを含む。)に従つて行われたものであること。
二  第四十三条の三の十四の技術上の基準に適合するものであること。
3  第十六条の三第三項及び第四項の規定は、第一項の検査について準用する。



設置ではなく変更工事であっても、合格が必要なことは明白だ。その基準となるのは、やはり原子力規制委員会規則等の技術基準に適合していることである。この合格です、というお墨付きを得られていないのに使用してしまえば、当然に法令違反となるわけであるから、先に見た「43条の三の二十三」の技術基準不適合(適合が確認されれば使用前検査が合格だから、だ)か委員会規則違反となるのだ。


他にもある。これも旧法上(『実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則』7条の3、同法7条の3の7、等)で指摘したことと同じで、保安規定に関する条文である。


○第四十三条の三の二十四  
発電用原子炉設置者は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、保安規定(発電用原子炉の運転に関する保安教育、溶接事業者検査及び定期事業者検査についての規定を含む。以下この条において同じ。)を定め、発電用原子炉の運転開始前に、原子力規制委員会の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2  原子力規制委員会は、保安規定が核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上十分でないと認めるときは、前項の認可をしてはならない。
3  原子力規制委員会は、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止のため必要があると認めるときは、発電用原子炉設置者に対し、保安規定の変更を命ずることができる。
4  発電用原子炉設置者及びその従業者は、保安規定を守らなければならない。
5  発電用原子炉設置者は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、前項の規定の遵守の状況(溶接事業者検査の実施に係る体制その他原子力規制委員会規則で定める事項及び定期事業者検査の実施に係る体制その他原子力規制委員会規則で定める事項を除く。)について、原子力規制委員会が定期に行う検査を受けなければならない。
6  第十二条第六項から第八項までの規定は、前項の検査について準用する。この場合において、同条第六項中「前項」とあるのは、「第四十三条の三の二十四第五項」と読み替えるものとする。



この保安規定も原子力規制委員会の認可を受ける必要がある。認可が受けられない場合というのは、2項規定の如く「災害防止上不十分である」という時であり、普通であれば「不十分であるので、もっと改善してきて下さい」(行政指導)とか「もっとこういう部分を改めなさい」(3項命令発動)、といったことになるわけである。
この認可を受けてないのに事業者が勝手に運転していた場合には、「43条の三の二十四第1項」違反となるのであるから、これも必然的に「43条の三の二十」第2項第五号に該当することになり、すなわち取消か停止命令発動事由となっているのである。


要するに、どこからどう条文を読んでも、事業者が自分勝手に「原子炉を運転します」なんてのが許容されているとは、到底思えない。新設(設置)の条件ということではなく、変更時でも同等の条件が課されているのであるから、旧法上の許認可があるから原発を運転したまま申請をしてもいい、などという判断は出てくるはずがないとしか思えない。

構造や設備、事故対処施設や体制の整備、保安規定、これらの変更がある場合には原子力規制委員会の許認可が必要となり、これに合格できなければ各種命令を発動されても文句は言えない。1年以内の停止命令を受けることになる。命令されなければやっていい、とか言えるのは、ただの部外者くらいではないか。食品の回収命令がでなければ「薬品汚染があっても販売していい」、とか言うのと同じ。そんなことをすれば、どうなると思うか?


安念教授のご意見は、疑問だらけ、ということです。



続・法学者は信頼に足るか?~安念潤司中央大教授の場合

2014年01月27日 13時36分32秒 | 法関係
以前にも書いた(http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/308038dda28248a10cc9babf9556a3b2)が、再び宣言しておこう。
当方にとって、日本の法学者は必ずしも信頼に足るとは言えない、これが率直な感想。今回は、安念教授の言説を取り上げることにする。

>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%BF%B5%E6%BD%A4%E5%8F%B8



どういう発言をしてきたのかよく知らなかったが、yahooで池田のしょうもない記事を見かけたので。よく見ると随分と前の記事なのに、何故か雑誌か何かのコーナーに上がっていた。

>http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51873005.html


本来、運転中の原子炉を停止させるためには、当局が原子炉等規制法に基づいて運転の停止を命令するか、あるいは原子炉設置許可を取り消すかしなければならない。だが現状では、こうした処分を受けた原子炉は存在しない。電力各社には、原発の運転を停止していなければならない法律上の義務はないのである。

また、検査終了後に当局が交付する検査終了証は単に事実を証明する文書にすぎず、運転の停止義務を解除するような法的効果があるわけではない。したがって、電力会社は定検のうち原子炉を停止させる以外実施しようのないプロセスが終了すれば、法令上は運転再開できるのである。

もっとも、本年7月8日「新規制基準」が施行された結果、各電力会社はこれに適合すべく、原子炉関連の機器の新増設などの措置をとらなければならなくなった。[・・・]しかし、これらの許認可申請のために、電力会社は原子炉の運転を停止する法令上の義務を負うわけではない。許認可手続きと原子炉の運転は並行して行えるのである。


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まず、安念教授が東大法学部卒の法学者で弁護士ある、ということを理解した上で、敢えて苦言を呈したい。こんなレベルなの?、と。

いくつかの論点に分けて、当方の主張を述べる。


1)旧法と改正法の関係

法学者に向かって釈迦に説法みたいですが、分かり切ったことではあるけれども、書くこととします。

まず、法改正の際に、その前後において取扱の変更がなされる場合となされない場合がある、ということです。
例えば、会社法改正で、旧法上の「有限会社」は改正会社法上では一致しませんが、改めて改正会社法上の「法人格取得」が必要とはされていないものと思います。つまり、以前の許認可取得の権利が改正後にも「引き継がれる」ということです。或いは、薬剤法が改正されても、旧法上で取得した薬剤師の免許は、改めて薬剤師の免許取得の申請を必要とはしないでしょう。
このような場合においては、改正以前に取得した許認可の権利が改正後にも生きる、ということになります。

他方、必ずしもそうならない場合もあるでしょう。
具体的には、公益法人改革の一環で、旧法上で公益法人の法人格を取得していた場合であっても、法改正後には旧法上の法人格を失う、ということがあるわけです。会社法改正とは違いますよね?改正後の基準に合致しない法人については、以前にいくら「公益法人の法人格を取得していた、だからその権利は続いている!」と言おうとも、改めて申請を出し直して法人格取得が義務となっているわけです。基準に合致しなければ、別法人格に変更を余儀なくされるということです。

或いは、貸金業者も同じでしょう。
旧法上では貸金業の認可があると言っても、新基準に合致しない業者については「認可できません」ということになり、基準未達業者は廃業とせざるを得ません。旧法上の許認可の効力が法改正後にも継続されるか否か、というのは、その法律毎で社会的影響なども含めて個別に考えられている、ということです。


これらは、法律家の皆さんにとっては当たり前のことでしょうから、誰しもご存じかと思います。新基準が出された後であっても、「旧法で合格していた原子炉なんだから、運転ができる」と主張するからには、上で見たように「有限会社は法改正後でも有効だ」というのと同等の根拠を有する、ということになります。具体的には、有限会社法は廃止、有限会社は特例有限会社として存続(根拠法=会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、1条、2条、3条、など)、といった法的根拠の提示が必要でしょう、という話です。
安念教授においては、旧法上の合格なり許認可があれば運転できる、と主張する法的根拠の提示ができることでしょう。


2)大飯3、4号機の再稼働は何故できたのか

簡単に言えば、法改正直前の駆け込みだったから、ということかと思います。原発ゼロでも電力供給は足りる、という既成事実を恐れた原発推進勢力が政治的に野田政権にごり押しした結果であろうと思います。関係閣僚会合と称して、安全宣言を出し再稼働要請を政治的に行いました。そこには科学的態度というものは必要なく、単に「前にも動いていたのだから、今も動く」ということをやって見せたに過ぎません。東日本大震災のような巨大地震などや大災害が発生しても、どの原発もきちんと管理でき安全が確保される、ということを保証するものなどではありません。

では、法的にはどうでしょうか。
当時は原子力規制法が出る前であり、新基準適用も当然ありませんでした。よって、旧法上での原子炉運転(申請が法改正前だった)ということになります。旧法上では運転停止を命じる権限はない、などというデマが広まっていたように記憶していますが、当方の見解は全く違っています。


12年5月
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/b0d59829c3c7d106b452d63a395539bb
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/9920e8190a7520908716ad62a03ec3ea
>http://blog.goo.ne.jp/critic11110/e/61e844b00547ae0d5c796dbbde3a906e


形式的には、電気事業法29条の届出関係に不備(同法施行規則46条の未達)がある、ということであれば、経産大臣は計画変更を勧告できる。また、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則、「7条の5」規則違反の原子炉であれば、原子炉等規制法第35条第1項違反となり、主務大臣は「原子炉施設の使用の停止、改造、修理又は移転、原子炉の運転の方法の指定その他保安のために必要な措置を命ずることができる」のである(同法第36条第1項)。


つまり、主務大臣権限を発動すれば、運転停止命令は可能だ。
ただ、行政の実務上では、行政側が改善命令や営業停止命令発動を行うのは、事前の行政指導の形式を取る場合というのは珍しいものではないはずであろう。


具体的には、たとえば金融庁が生保・損保会社などに対して「保険金不払い問題があった、だから過去数百万件の契約を全件見直せ、不払い金を全部払え」という行政指導を厳しく行い、そうした指導に従わないような保険会社に対しては、更に上位の「勧告、命令」などの発動(行政処分)となるわけです。命令の発動を招いてしまうなると、保険会社としても対決姿勢が鮮明となりますし、ヘタをすれば営業停止や許認可取消権発動といった、更なる強権発動を招来してしまいかねません。

このように、大臣権限発動を招いてしまうことが想定される場合においては、事業者側が自主的に行政指導に従う、ということが一般的に行われているわけです。


よって、原発を停止していた事業者というのは、本来こうした「大臣権限が発動される可能性」というものを考慮に入れた上で(政治的には、ということだが、現実には大衆からの批判を恐れて、ということだ)、行政指導=浜岡原発停止の要請に従った、と形式的には解釈可能なのである。
他方、大飯原発再稼働の際には、主務大臣の原発停止命令の発動は確実に封印されている(=野田総理以下官房長官&枝野経産大臣が「運転してくれ」と要請)ことが明らかであった為、電気事業者側が本当に「規則7条の5」違反がないかどうかは自信がないとしても、法解釈・適用権限は行政側にあるのであるから、運転を再開することは不可能ではなかったわけである。本来であれば、行政側が「大飯原発は原子炉等規制法35条1項違反となる可能性が大なので、運転しないように(=運転した場合には大臣命令が発動される)」と指摘することはできたのである。


安念教授の主張の明らかにおかしいところは、命令か取消処分しかない、という決めつけである。だったら、例えば金融庁だの国税庁の指導というのは一切存在しない、とでも言うつもりか?

安念教授が書いたことは、実務を全く無視した主張であろう。
条文の形式上では、行政側の発動権限は強力なものは多々あるわけだが、それがいきなり行使されるのは、むしろ珍しいのではないのか。


(そもそも、事故原因分析もできていないのに、最新知見の反映だの、妥当な保安活動や実施手順だのといったことが、達成できていたと思うか?免震重要棟すらできてないのに、予防措置が取られていると?
出鱈目言うな。法を解釈し、適用するのは、行政側だった。それだけ。)



つづく