「人は悲しむために出会うわけではない」と、過ぎた日に、聞かされたことがあります。
たしかに、人は悲しむために出会うのではありません。でも、ほほ笑みのうちに出会って、ほほ笑みのまま終わるということは無いように思われます。“出会い”は、いつでも、“別れ”を前提にしています。
素敵な出会いがあって、たくさんの、ときめく時間を一緒にできた人であればなおのこと、別れの悲しみが大きくもなれば、深くもなります。出会いを前にして、私たちが、一瞬、不安を感じたり、ためらったりするのは、おそらく、そのためでしょう。
私は、1836年に、フランツ・リストと親密な間柄にあったマリー・タグー伯爵夫人のサロンで、私のショパン・・・・、フレデリック・フランソワと出会いました。そのとき、彼は26歳で、私は32歳でした。
黒田恭一の台本より