廣島パイレーツ・チャンネル

広島の名も無き”田舎侍”が地元プロスポーツを中心に色々と書いて行く過激なスポーツコラムや、広島の市政や街づくりについても

ハードボイルド時代劇 『筆殺仕立人』 第八話:本

2008-06-29 23:23:23 | Weblog
 今日は広島の街までカープの応援に出掛けた。 しかし広島は昨日からずっと雨模様の天気... 昨日は試合の途中で同点のまま降雨コールドとして引き分けになってしまったし。 今日は試合そのものが中止になるんじゃないかな? 昨日は次の日も試合があるから無理してでもやったが、今日は最終日なので雨が強かったら早めに中止にしてジャイアンツにも東京に帰ってもらうかも知れないし。 しかし昼前の時点で試合中止の発表は無かったので私も雨天中止を睨みながら出発した。 チケットは既に買ってあるので試合開始の可能性が残っている内は行かないとしょうがない。 試合が中止になったらそのまま街に出て映画『靖国』を見る事にしている。

 そして私と”恋敵”の林(呼び捨て...)との真の決着を付ける事にします。 今日の試合に行く事は一ヶ月以上前から決めていたので全くの偶然だが、こうして当日になって試合が雨天中止になる可能性が高いのも何かの巡り合わせだろう。 試合は中止になるか、もしくは昨日みたいに開始後に雨が強くなってノーゲームかコールドゲームになるのでは? そしたら中途半端になった試合の後に私と林との対決の場面を入れればそれなりに格好が付くでしょう。 そんな事を考えながら私は球場に向かう。 雨は少し降っていたが、この程度では試合は中止にならないだろうな。 それでも雨で荷物が濡れるのを防ぐ為、いつもの折り畳みでは無い普通の傘を持って出掛けた...

                    

 いつもの横川駅に到着。 私はいつも通り横川駅近くのスーパーでビールやおつまみなどを買い、そこから歩いて市民球場へ向かう。 先週みたいに電車に乗る事も考えたが、今日はまだ時間が早いし、何より雨なので観客の出足も鈍いだろうと考えてゆっくりと球場に向かう。 いつも通り球場近くの誰も居ない中華庭園で応援用の赤いTシャツに着替え...としていると珍しくカップルが入って来た。 危うく変態かと思われるところだったな。 中華庭園を出て球場に向かうと、球場北の『中央公園ファミリープール』に幟が賑やかに立っていた。 そうか、プール開きがあるのだろう。 もっとも子供ばかりなので私が一人でここに入ったら完全に場違いになるのだが... 

 球場の外野席ゲートに着いた。 雨の影響もあるだろうが意外とあっさり入れてしまった。 昔はジャイアンツ戦はいつも一杯と言うイメージがあったのだが、今はむしろ一年に2試合しか見られない交流戦の方が広島では人気があるのかも知れないな。 それでも昨日は雨の中、2万人入ったらしいけど。 入り口でチケットを見せて入場する。 入口の脇に新聞紙の束が積まれている。 雨の日はいつもこれがあり、要するに敷物にしてくれと言う事らしい。 私も遠慮無く使わせてもらうとしようか。 入口では他にラッキーチャンスカードなどが配られるのだが、今回はこの三連戦の見所を紹介する、Jリーグの試合会場で配布されるマッチデープログラムの野球版みたいな物が配られていた。 恐らく今回は実験的になっているのだろうが、来年の新球場では毎試合三連戦毎に一部製作(交流戦では2試合)して配って欲しいものです。

                    

 私が着いたのは試合開始一時間前位だったが、何か違和感があるなと思えばまたしても雨の影響でスコアボードの大型ビジョンが使えないのだとか。 先週来た時もそうだったけどまたなのか...ボロいなぁ。 一体どこのメーカーの製品なのか名を明かしてもらいたいものだ。 来年の新球場ではこんな”欠陥品”は使わないでもらいたいものです。 グラウンドでは雨の影響でバッティング練習は行われておらずカープ、続いてジャイアンツの守備練習などがさらりと行われていた。 高橋(由)選手の姿も見えるな。 彼の姿を見るのは何年ぶりだろうか。 基本的に私は金を払ってまでFA選手を見るのが嫌なのでジャイアンツ戦や”どこかの球団”との試合には行かない様にしていたのでな。

 そうしている内に両チームの先発メンバーが発表された。 ジャイアンツの先発は二軍での再調整から復帰したばかりの高橋(尚)投手、カープも同じく故障明けで二軍から復帰して来たばかりの高梁(建)投手だ。 奇しくも同性・左腕同士のマッチアップになった訳だ。 ジャイアンツの先発メンバーでは左腕の高橋投手を想定してか、高橋(由)選手と小笠原選手が外されている。 いくら左打ちとは言え、彼らは左投手を苦にするタイプでは無いだけに何か納得出来ないのだが。 代わりに一塁には大道選手、右翼には若手の加治前選手が入った。 カープでは”鯉の狩人”赤松選手が今日も先発か。 恐らくジャイアンツとの相性を考えての起用だろう。 ジャイアンツ戦に強いのは”どこかの球団”でジャイアンツには負けるなと厳しく教育されたから...かも知れませんな。

 試合開始直前、マスコットのスライリーが現れて水鉄砲でのイタズラを始めた。 客席に水鉄砲を打ち込むのはまあ良いとして、ジャイアンツの法被に水鉄砲をぶっ掛けたのはあまり趣味が良くないのでは? 人によっては良い風に取らないかも知れないですし、下手をするとレフトスタンドで両チームのファン同士の喧嘩になったかも知れない。 何しろサッカー場と違ってここには”緩衝地帯”が無いのですから。 今日はたまたま大型ビジョンが壊れていたので遠く離れたジャイアンツファンにはこの様子が見えなかったから良かったのですが。 それとイタズラをしたのが法被だったし。 これがユニフォームだったら侮辱行為としてシャレにならない事になっていたかも。 敵とは言え多少の配慮は必要なのではと思いました。

                    

 試合は始まった。 交流戦での不調の上に首を痛めて二軍で調整して来た高橋投手の調子はなかなか良い様だ。 一方、ジャイアンツの高橋投手もかなり調子が良いみたいで基本的に打たせて取り、ここと言うところでは変化球で三振を奪うなど左投手としてはお手本みたいな投球術だ。 一つだけ関心しないのはこの投球をカープ戦でやっている事で、これだけの投球は”どこかの球団”やドラゴンズ相手にやって欲しいものです。 高橋投手は1点は失ったもののジャイアンツ打線に追加点を許さない。 1-0の投手戦のまま試合は中盤へと入って行く...

 6回表、走者を置いて阿部選手が外野の頭を抜ける打球を放った。 2アウトから長打で2点入るかと思った瞬間、赤松選手が打球に追い付き、背走しながら取ってしまった。 これはすごい、球場中がざわめいて高橋投手も守備位置から帰るまで赤松選手を待って礼を言っていた様に見えた。 今日は前田選手のダイビングキャッチあり、東出選手も一、二塁間の打球に飛び付いアウトにするなど好守備が一杯で締まった見応えのあるいい試合になっている。

 その裏、先程ファインプレーの赤松選手が三塁強襲の内野安打を放つ。 するとそれまでスイスイと投げていた高橋投手の投球が急に乱れ、やたらと牽制球を投げ続けて気が付くとフォアボールを出してしまった。 そこで投手交代が告げられ、高橋投手は結局1点も取られていないのに降板してしまった。 こうして見ると俊足選手の”盗塁の影”が投手を揺さぶって点を取る懐かしいカープの野球が帰って来たと感じた。 元々カープには足が速い選手が多かったはずだが、外から入って来たたった一人の選手によってカープの機動力野球が復活した事になる。 カープは栗原選手のヒットで同点に追い付いたが、ジャイアンツも必死の継投で勝ち越しを許さず、試合は9回へと入って行った...

                    

 9回表、カープはマウンドに永川投手を送る。 ストッパーの登場に普通なら球場が沸き上がってもおかしくないのだが、観客席には「えぇ......」みたいな微妙な空気が流れた。 それはそうでしょう。 カープファンの記憶の中で、永川投手がホームゲームの同点の場面をしっかりと抑えたと言う記憶がほとんど無いからです。 私もこの場面での永川投手の起用には疑問を感じます。 永川投手はリードして迎えた最終回とか、同じ同点の場面でも1点取られれば即サヨナラ負けになるアウェーゲームならしっかりと抑えてくれます。 同じホームゲームの同点の場面でも味方投手が勝ち越し点を取られるピンチを招いてしまったとか言うなら抑えるかも知れません。 要するに彼は”燃える場面”で爆発的な力を発揮する投手であり、良くも悪くも”ストッパー”の資質を備えていると思います。 マーティーはアメリカ流の”クローザー論”で永川投手を見ているのかも知れませんが、クローザーとはどんな場面でも決められたイニングをクールにさらっと片付けて去って行く...と、そんな投手だと私は思うのですが。

                    

 結局、永川投手が先頭打者に与えたフォアボールをきっかけに打ち込まれてしまい、高橋選手の勝ち越しタイムリーヒットと、ラミレス選手の満塁ホームランで一挙に6-1にされてしまった。 観客が家路に着き始める中、レフト側からどよめきが聞こえ、これが復帰登板となる”男の中の男”上原投手がマウンドに向かった。 私が見る限り、直球が伸びているし調子を取り戻しつつあるのではと思います。 私は席から立ち上がって上原投手の投球を見ていた。 上原投手を生で見るのはこれが最後になる可能性が高い。 仮に来季、大リーグに行ったとして春先に今みたいに調子が出ないで向こうのマスコミに叩かれたとしても、自分ほど暑さに強い投手は大リーグにだって滅多にいない、夏になれば調子は上がると信じてプレーすれば良いのでは? 何故なら広島ほど蒸し暑い野球場などアメリカのどこを探したって無いでしょうから...

                    

 試合は6-1でジャイアンツの勝ち。 うーむ、また負けてしまったか。 5月25日のマリーンズ戦の後、ホークス、イーグルス、ジャイアンツと3連敗してしまった。 カープが負けては剣を抜く事も出来ない。 どこが”時代劇”なのだか分からなくなって来ましたが... 悔しいけどとにかく負けは負けだ。 私は解放された内野席を通り抜けて正面ゲートから外に出て、三塁側に向かう。 見るとジャイアンツのチームバスがちょうど出るところだった。 私は腰の携帯ホルダーから電話を取り出していつも通りに報告をする...

「”エリカ様”申し訳ありません、仕立に失敗しました。 これより現場を離脱、撤退します。」

                   

 バスは私のすぐ前を通った。 後の方の窓際の席に上原投手が座っていたので私にもその顔がハッキリと見えた。 バスは私の前を通り抜けた後、すぐに信号待ちで停まってしまった。 ちょっと格好付かなかったな。 バスに気が付いたのか、私の横で子供ファンとかがジャイアンツの選手に声を掛けている。 私はそれを横目で見ながら信号が変わるのを待ち、バスが動き出したのを見てから大きく手を振った。 上原投手も二軍から戻ったばかりで本調子にはなっていないと思うが、それでも日本代表チームの星野監督との電話で短いイニングなら行けますとハッキリ言ったのだとか。 責任感の強い彼の事だから大袈裟では無く本当に命を賭ける程の覚悟で北京に向かうつもりなのだろう。 やはり上原投手は男らしいではないですか、マスコミもその辺はちゃんと理解して報道してもらいたいです。 上原投手にはクローザートリオとしての活躍に加え、ダルビッシュ投手(ファイターズ)や田中投手(イーグルス)ら若い投手をビシビシ鍛える先生役まで大いに期待しています。

「”男の中の男”上原投手、その時は日本を頼みます。」


                   

 ...さて、いつもならここで終わりなのだが、今日はもう一仕事しないといけない。 私はどうしても恋敵の林と最後の決着を着けないといけないのだ。 私はジャイアンツ宿泊先のホテルに行って林への手紙をホテルマンに頼んで渡してもらった。 怪しまれるといけないのでファンレターと言う名目にしておいたが。 多分、林の所に届くと思うのだが...

「おい、林。 お前宛にファンレターが来ているぞ。」

「ファンレターですか?? 結婚してから減って... あれ、封がしていない。」

「え!? これ、”果たし状”と書かれている。」

「...私はカープファンの”駿河守”と申す者です。 ”京子さん”との恋に破れ、貴殿との決着を付ける為にと臨んだこの試合でも敗れてしまい、それに加えて貴殿も試合に出ておらなかった故にこのままでは私の”侍の一分”も立ち申さん。 願わくば今宵19時に中区の新天地公園まで来られたし。 男同士、二人だけで最後の決着を付けたいと思う。」

「おい、これ決闘の申し込みじゃないか、相変わらず時代錯誤の阿呆だな、あいつは。」

「俺は行くぜ。」

「おい、お前正気か? あの男は策略家、罠に決まっている。」

「去年から今まであの男に好き勝手書かれて俺たち夫婦も散々コケにされ、男としてこのまま黙って引き下がる訳には行かないよ。」

「お前一人を危ない目には合わせられない、俺たちが影から見守って変な事をして来たらすぐに警察を呼ぶから任せておけ。」

 結局林と、同じ左腕投手仲間の内海と山口が同行する事になった。      


 18時30分、3人は新天地公園に到着、現場を下調べする。 ここは地下駐車場の上にレンガ敷きの広場がある造りになっている。 公園の奥に駐輪場入口と小さな社がある。

「じゃあ、お前は真ん中の広場で奴を待て、俺らはこの神社の影で見ているから。」

「もし、あの男がナイフでも取り出したら俺が抑えるからお前は携帯で110番しろ。」

                   

 18時45分、”駿河守”は新天地公園にやって来た。 ”駿河守”はTシャツの上に薄手のジャケットを羽織り、右手を懐に隠している。 一方の林も左腕を隠していた。

「随分と早いな。 わざわざ来てくれて礼を言うぞ。」

「私は駿河...いや、単なる無名の”田舎侍”だ。」

「巨人の林昌範だ。」

 二人は新天地公園の中央にある広場で相対する。 お互いに右手、左手を隠したまま間合いを計り、少しずつ近付いてそしてついに二人は懐から隠していた腕を出した。

「ば、ば、バ、バナナ...」

 ”駿河守”の右手に握られていたのはバナナケースだった。

「あんたこそその左腕は何だ。」

 林の左手はタオルでグルグル巻きにされていた。

「当たり前の事を聞くな。 家族と命の次に大切な左手をこんな馬鹿な喧嘩に使えるか!」

 二人は新天地公園のベンチに腰掛けた。 ”駿河守”はバナナケースからバナナを取り出して食べている。

「そう言えば”あの人”もテレビのバラエティー番組でバナナを食べさせられていたな。 女性のアナウンサーも大変ですよね、バラエティ番組タレントみたいな仕事もさせられるし。」

「あんたは今でも...」

「いや、もう退職しちゃったそうだし、諦めます。 最近はテレ東の前田海嘉アナウンサーに夢中でね。」

「ちっ、あんたも懲りない男だな。」

                    

「じゃあ、そろそろ行くぜ。」

「私はカープファン、あんたはジャイアンツの投手。 立場が違うし、こうして会う事は二度とあるまい。」

「じゃあ、幸せにな。 林投手。」

「おっと、振り返るんじゃないぜ。 何度も見るほど男前じゃ無いんでな。」

 ”駿河守”は立ち去った。 凍り付いた林投手のところに姿を隠していた内海投手と山口投手が駆け寄り、繁華街の中に消えた”駿河守”の姿を目で追っていた...

                   

 ”駿河守”は繁華街の人込みの中を歩いている。 ヤケ酒でも飲みに行こうかと思っていたところ、目の前に”エリカ様”が現れた。

「”エリカ様”、広島に残ってられたのですか?」

「駿ちゃんの様子がちょっとおかしかったんでね。」

「男って本当に馬鹿ね、あんな事しなくても素直に謝っとけばいいのに。」

「”エリカ様”、申し訳ありません。 仕立人の掟を破って勝手に戦ってしまいました。」

「何、”掟”って? 駿ちゃんって凝り性なんだね、そんなものまで作ってたんだ。」

「でも...」

「もういいよ、せっかくだし東京に帰る前に何か奢ってあげるよ。 『へんくつや』でお好み焼きでも食べてく?」

「私は『天下一品』のラーメンがいいと思いますけど...」

 二人は人込みの中に消えて行った。





                続く







                 キャスト



京子さん           ???(元・テレビ東京アナウンサー)

元・恋敵の林         林昌範(ジャイアンツ投手)

駿河守/ナレーター     管理人さん



巨人の先発投手       高橋尚成(ジャイアンツ投手)

鯉の先発投手        高橋建(カープ投手)



巨人の新星          坂本勇人(ジャイアンツ内野手)

キムタク            木村拓也(ジャイアンツ内野手)

巨人の大ベテラン       清水隆行(ジャイアンツ外野手)

巨人の苦労人左腕      山口鉄也(ジャイアンツ投手)

ガッツ              小笠原道大(ジャイアンツ内野手)

巨人の左腕エース       内海哲也(ジャイアンツ投手)

慎之助             阿部慎之助(ジャイアンツ捕手)

巨人の主砲           A・ラミレス(ジャイアンツ外野手)

男の中の男・浩治       上原浩治(ジャイアンツ投手)



総一郎さん           天谷総一郎(カープ外野手)

鯉の狩人             赤松真人(カープ外野手)

鯉女房B             倉義和(カープ捕手)

鯉の安打製造機        東出輝裕(カープ内野手)

アレックス            A・オチョア(カープ外野手)

鯉の遊撃手           梵英心(カープ内野手)

サムライ前田          前田智徳(カープ外野手)

鯉の主砲            栗原健太(カープ内野手)

スライリー            ????(カープ公式マスコット)



ジャイアンツファンの皆さん

カープファンの皆さん



巨人の指揮官          原辰徳(ジャイアンツ監督)

マーティー監督          M・ブラウン(カープ監督)



エリカ様              ?????(女優)





                  スタッフ


製作               管理人さん

脚本               管理人さん

演出               管理人さん

音楽               無し

殺陣               管理人さん

美術               管理人さん

資料協力            週間ベースボール

撮影協力            広島市
                  広島市民球場
                  広島カープ球団
                  ジャイアンツ球団
                  広島平和記念公園
                  横川胡子神社

監督               管理人さん





 この物語は一部フィクションであり、実在する人物、団体、地域とは関係無い...ところが含まれております。

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