かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 1の19

2020-05-14 17:17:22 | 短歌の鑑賞
    改訂版渡辺松男研究3(13年3月)【地下に還せり】
      『寒気氾濫』(1997年)12~
      参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      司会と記録:鹿取 未放


19 月天心嬬恋村に森ありてふところふかく家々を抱く

        (意見)
★誰が何を抱いているのかは分からない。しかし上の句に「抱く」とあって「嬬」
 が出てくるので、エロスですか、そういうものを感じて嬬恋村に仮託している
 のだと思う。また月天心、嬬恋村とタ行音を重ねた出だしが漢字表記なのにな
 めらか。(慧子)
★妻を思い出している気分がある。妻を森のように暖かく抱く気分。(曽我)
★家々には慧子さんが言うようなん妻を愛する場面もあるんだろうけれど、個々の
 家々を森が抱いて、その森を月が照らしている。そういう自然そのものがエロス
 をはらんでいるが、個々の性愛の場面はあるとしても月の光が浄化あるいは荘厳
 している感じ。与謝蕪村の「月天心貧しき町を通りけり」はいかにも画家らしい
 句で通り過ぎる自分を含めて俯瞰しているようなイメージだけど、松男さんの歌
 は自分はその画面の中にはいなくて、山の中腹かなんかで村々を俯瞰している感
 じ。蕪村の月はすさまじく冷たい光を放っているようだけど、松男さんの月はや
 さしくやわらかい印象を受ける。とても深々とした安堵感のある歌。(鹿取)


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