かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞 5

2020-05-13 17:39:45 | 短歌の鑑賞
  ブログ版清見糺鑑賞1        【さねさし相模】2004年4月
         かりん鎌倉支部(渡部慧子、鹿取未放)  

5 ファントムが比翼つらねて飛ぶところさねさし相模の大和しうるさし
         「かりん」1993年12月号

  大和は国のまほろばたたなづく青垣山ごもれる大和し美し  倭建命

 本歌は『古事記』の倭建命の死に臨む歌。東国遠征からの帰途、伊勢の国能褒野で力尽きて詠む故郷をしのぶ歌である。その哀切な結句「大和し美(うるは)(うるは)し」の一音「は(ワ)」を「さ」に替えることで、痛烈な皮肉、批評の歌に仕上げている。
 いうまでもなくこの歌の大和は古代の都ではなく、アメリカの基地が置かれている神奈川県大和市。最新鋭の戦闘機ファントムが轟音をたてて発着する大和は、あちこちで騒音訴訟が起きている。「大和し」の「し」は強意あるいは語調を整える副助詞だが、ここでは「大和市うるさし」の掛詞と考えても面白く読める。ファントムの飛ぶ様を「比翼つらねて」と形容することで古歌の雅びをみせ、「まほろば」であった美しい古代国家の景を一瞬見せながら、「うるさし」と吐いて棄てるところが小気味よい。さねさしの枕詞も雅び・皮肉どちらにもよく響いている。(鹿取)


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