かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 97 スペイン④

2024-09-19 19:34:51 | 短歌の鑑賞
2024年度版馬場あき子の外国詠11(2008年9月)
    【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P58~
     参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部慧子 まとめ:鹿取未放


97 突兀たる巍々(ぎぎ)たるそしてふくらなる山越えて群翔しくる鸛(こふのとり)

      (レポート)
 「突兀」は(岩、山などがつきでているさま)、「巍々」は(高く大きいさま)、「そしてふくらなる山」と写生されている大地。その大地にあるスペインは、ヨーロッパ・アフリカを往来する渡り鳥の通り道になっている為、鳥類がきわめて豊かである。「群翔しくる」と詠いながら、山河もろとも大きくとらえて、爽快な一首だ。(慧子)


     (まとめ)
 現代ではあまり使われない「突兀たる」「巍々たる」という漢文調の描写が、文字づらも厳めしく、険しい山の姿を読者にイメージさせてくれる。その上「ふくらなる」ときて、険しいだけではないやさしいなだらかな山容もあるところが楽しい。険しく厳しいばかりの山容では渡ってくる鸛の表情もけわしいものになるが、彼らは「ふくらなる」山の上をも飛んでくるのだ。そのあたりが馬場の鸛への優しさなのだろう。日本では日常見慣れない鸛が群れをなして飛翔してくるイメージが珍しくたのしい。(鹿取)


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