かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 239

2023-01-22 10:44:51 | 短歌の鑑賞
  2023年度版渡辺松男研究2の31(2020年1月実施)
     Ⅳ〈夕日〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P156~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
         渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:岡東和子    司会と記録:鹿取未放


239 見つめたる〈口〉という字のまんなかへあたまから吸いこまれ欠勤

       (レポート)
 池でボートに乗っているとき、水のなかをじっと見つめていると、水中に吸い込まれそうな感覚に陥ったことがある。その時の感覚を思い出した。さらに、「蛇に呑まれし鼠は蛇になりたれば夕べうつとりと空を見てゐる」(『飛天の道』馬場あき子)この歌も思い起こされた。〈口〉という字が蛇で、その中に呑まれた鼠が作者、蛇になった作者が夕空を見ていて欠勤してしまった、という場面を想像する。なんとも面白い歌であるが、最後の「欠勤」で現実に引き戻される。(岡東)


         (紙上参加)
 あはは、面白い、頭山みたい!そうだ、休め休め!と言いたくなる歌。シュールですね。
   (菅原)


         (当日意見)
★感覚としてよく分かる。(A・K)
★大好きな歌です。痛快な気分になる。(鹿取)
★口には嫌な上司の物言いも重なっているのかなあと。(慧子)
★口に〈 〉が付いているのでほんとうにそこが空いていて、掃除機かなんかで吸
 い込まれるような感じ。(泉)


         (後日意見)
 菅原さんのレポートにある「頭山」が分からなかったので本人にお尋ねしたら、落語で以下のようなお話しなのだそう。納得した。(鹿取)
  男の頭から桜の木が生えて、花見に人が集まる。うるさいので切って
  抜いてしまうと、その穴が池になり、魚が棲み、釣り人が集まる…。
  で、男は悲観してその頭の池に飛び込んで死んでしまいましたとさ。

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