かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 60(アフリカ)

2019-02-18 20:16:42 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠7(2008年4月実施)
  【阿弗利加 3 蛇つかひ】『青い夜のことば』(1999年刊)P171~
  参加者:泉可奈、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:T・S      司会とまとめ:鹿取 未放


60 顔憎き蛇つかひわれより銭を得てまだらの蛇に触(さや)らしめたり

     (まとめ)
 蛇遣いはいかにも憎そうな顔つきだったのだろう。「銭を得て」に狡猾な、金銭に執着する俗っぽいイメージがよく出ている。さわる、ではなく「さやる」という言い回しもおっかなびっくりでさわる感じがよく出ている。触っただけでなく写真も撮ったのだろうか。それは別料金だろう。馬場の旅に同行した人達の中には首に巻いた人もいたというが、そちらはもっと高い料金に違いない。
 「金いろのばつた」の章で、〈十匹のばつたを少年に売らしめて老工はアッラーに膝まづきたり〉〈暗き灯のスークに生きてアッラーに膝まづく一食を得し幸のため〉などとひたすら鏨を打つ職人が出てきたが、それとは対照的な人物像である。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 59(アフリカ

2019-02-17 22:10:09 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠7(2008年4月実施)
  【阿弗利加 3 蛇つかひ】『青い夜のことば』(1999年刊)P171~
  参加者:泉可奈、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:T・S      司会とまとめ:鹿取 未放


59 身のつやも失せてとぐろを巻けるもの笛吹けば怒る死ぬまで怒れ
  
         (当日意見)
★反抗しろ、というメッセージ。(崎尾)


      (まとめ)
 長年蛇使いに使役されて疲れ果てつやもなくなっているのであろう。蛇は仕込まれて餌をもらうために笛に合わせて身を踊らせるのであるが、それを作者は怒ると表現しているのだろうか。それとも今日は怒りも露わに踊りくねっているのだろうか。窮屈な袋に押し込められて、いきなり大勢の見物人の前にさらされれば怒りたくもなろう。とらわれの身の日頃の鬱屈も当然怒る原動力になっていよう。それゆえ、なおさら蛇の踊りは迫力をもっているのだろう。そんな蛇に作者は「死ぬまで怒れ」と荷担の情をもって呼びかけている。
 高村光太郎の「ぼろぼろな駝鳥」や、渡辺松男の〈そうだそのように怒りて上げてみよ見てみたかった象の足裏〉『寒気氾濫』を思い出した。(鹿取)

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馬場あき子の外国詠 58(アフリカ)

2019-02-16 20:21:38 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠7(2008年4月実施)
  【阿弗利加 3 蛇つかひ】『青い夜のことば』(1999年刊)P171~
  参加者:泉可奈、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:T・S      司会とまとめ:鹿取 未放


58 蛇つかひの黒い袋にうごめける感情のごときうねりのちから

      (当日意見)
★蛇は独特の動きをする。(崎尾)


      (まとめ)
 57番歌「蛇つかひ黒い袋に手を入れてくねる心を摑み出したり」の補完。蛇が袋の中でうごめいている様子を「感情のごときうねりのちから」という。57番歌の「くねる」よりさらにダイナミックな動きで、それを「うねりのちから」と言っている。感情の「ごとき」であって、「うねりのちから」イコール蛇の感情だ、というのでもない。この辺りの微妙な接続が興味深い歌だ。(鹿取)

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馬場あき子の外国詠 57(アフリカ)

2019-02-15 20:20:01 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠7(2008年4月実施)
  【阿弗利加 3 蛇つかひ】『青い夜のことば』(1999年刊)P171~
  参加者:泉可奈、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:T・S      司会とまとめ:鹿取 未放

 
57 蛇つかひ黒い袋に手を入れてくねる心を摑み出したり

     (レポート)
 くねる蛇の心を摑むという詩情と、黒い袋の中に手を入れる悲哀感。取り出す立体感。この微妙な働きをする蛇遣いは、見物人である作者の心まで掴んだ。(T・S)


      (当日意見)
★くねる体、でなく心であるところが上手い。(崎尾)
★T・Sさん、黒い袋の中に手を入れるのは別に悲哀感じゃありません。(藤本)


           (まとめ)
 くねる心、といったところが面白い。くねる体、では当たり前の歌にしかならなかった。もちろん、くねっている蛇体に心は反映されている。黒い袋、もゴミ袋のようなただのビニールかもしれないが、黒という色を出したことで神秘的な効果が出た。(鹿取)

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馬場あき子の外国詠 56(アフリカ)

2019-02-14 19:11:20 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠7(2008年4月実施)
  【阿弗利加 3 蛇つかひ】『青い夜のことば』(1999年刊)P171~
  参加者:泉可奈、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:T・S      司会とまとめ:鹿取 未放

 
56 夕日濃きフナ広場にはじやらじやらと人群れて芸なしの蛇もうごめく

      (レポート)
 フナ広場はマラケシュにあるジャマ・エル・フナ広場のことである。ジャマ・エル・フナとは死者の広場という意味で、昔は罪人の処刑場だった。広場と言っても街の一角が商業地で、多くの店が集まっています。ここには多くの人が集まるので、見世物や街頭芸人がいろいろな出し物を演じて、客からお金をもらいます。蛇遣いも有名です。コブラを笛を吹いて踊らせる芸はよく知られています。「じやらじやらと人群れて」硬貨の音にも聞こえ一層の賑やかさの表現。笛を吹いてもなかなか思い通りにいかないこの蛇。「芸なしの蛇」。愛嬌者だろうか、意地っ張りなのだろうか、実に楽しい。(T・S)
 

        (当日意見)
★じやらじやら、の擬態語が蛇(じゃ)の音に通じる。(可奈)
★蛇も、の「も」がよい。(藤本)
★人群れて、に自分が入っているのか、納得ができない。全て上から見下ろしているという感じ。
(T・H)
★当然、自分も入っている。群れている人の一員であることを承知し自己批判もありつつ、旅行者
 としてその雰囲気を楽しんでもいる。(鹿取)


      (まとめ)
 「夕日濃き」に夕方の華やぎがある。そういう時刻になってますます広場は活気を帯び、「じやらじやらと」人が群れ出すのだろう。濁音を使った擬態語は、自分も含めその場を楽しもうと意気込む無責任な群衆の比喩になっている。「芸なしの蛇」は手厳しいようだが同情の心もこめられているようだ。(鹿取)

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