発作的座談会「間違えやすい言葉」より

2008-04-11 16:37:53 | こんなンで委員会

椎名誠は、純情系硬派である。偶然の奇跡が重なって?作家となり、
文学賞の選考委員なども、依頼される事が多くなっていた頃。

取材先から、格式の高い料亭で催される、ある文学賞の選考会に、
そのままのラフな格好で行ってしまった。

気づけば上着は少々汗臭かったし、これはまだいいとして、靴下が
半端なく濡れて、汚れていた。

すでに、靴下を手当てする時間は全くなく、汚れている靴下よりは、
まだ裸足のほうがマシだろうと思い、脱いで料亭の玄関先に立った。
うまくすれば、周囲にバレないかもしれない、と目論んだ。

しかし、トイレか何かで、たまたまそこを通りがかった大先輩の作家に、
チラと足元を見咎められた。

「ほぉ~、若い人は元気でいいねぇ。この季節(冬)に裸足だ。寒く
ないのか?」と言われて。

それでなくとも、ビクビクしていた椎名は、すっかりショ~ンボリとなって、
選考会のあいだ中、終始身を小さくしていたそうだ。

「椎名誠」とは、腕白坊主が、そのままオトナになったような人である。
体力はあるが、繊細さはない。


(切り花/デンドロビウム)

木村 面白い本があるんだよ。これをテーマにしてやらないか。

目黒 なになに。「間違い言葉の辞典」か。PHP研究所から1993年に
    出た本だね。お、面白いよ、これは。

木村 だろ。

椎名 どういう内容なんだ?

目黒 だからさ、「うたたね」と「仮眠」はどう違うのか、っていうのよ。

沢野 同じじゃないの?

木  違うからこの本に出ているんだよ(笑)

椎  違うのか!(←椎名のこの発言は、椎名と沢野が同じレベルの人間
   であるということを、暗に発露してしまっている)

沢  誰が問題を出すの?解答を見ちゃったら、つまらないよ。

椎  浜本~(←「本の雑誌」編集部デスク)お前が解答係な。本を誰にも
   見せるなよ。

浜本 じゃあ、「あと」と「のち」です。

目  いいねぇ。ええと、私の解釈から行っていいですか。

椎  いいよ。その間におれたちも考えようぜ。

目  「のち」というのは、時間的な経過が入っているんですね。で、
   「あと」というのは、空間的なものだね。

木  「のち」というのは、時間的な経過にかかわっていそうだけどな。
   沢野はどう?

沢  僕はちょっと、保留にします(笑)

目  いいなそれ。

椎  ずっと保留じゃないの(笑)

木  ギブアップだな。

浜本 じゃあ、解答、行きます。「あと」は、現時点に引き続く経過
   としての時。「のち」は、ある時点が流れ去ったあとの時点をいう。
   ・・わかりますか?

椎  わかんねえぞ。

木  たぶんおれたちので、正解だよ。

浜  ・・・次は「維持」と「保存」でどうですか。

目  難しいね。

沢  「保存」は、しまっちゃうんでしょ。「維持」はとっとくの。
    だから、干し柿は維持で、漬物は保存なんです。

目  ほぉ。

木  わかりやすい。

椎  でも、どう違うんだよ。

木  何となく、わかったような気はするけど(笑)

椎  あれだな。検死官がくるまでが「維持」で、安置所に入ったのが
   「保存」。

目  おお、わかりやすいな。おれは、結婚するまでが「維持」で、結婚
   してからが「保存」(笑)

木  なるほどなるほど。

椎  それもいいな。

木  そういうたとえで出すと、賢そうな気がする。

椎  本当は意味を知っていないのにな(笑)

木  財布に金を入れるのが「維持」で、銀行に入れるのが「保存」。

目  ようするに、ある一時の状態が「維持」で、永遠の状態が「保存」
   である、と。

椎  これは簡単だな。みんな、正解だろう。

浜  正解はですね、状態や性質などを、現状のまま持続させることが
   「維持」で、「保存」は、物品の場合に使用する、とありますけど。
   意味はどう違うんですかね・・。

椎  ふーん。ま、いいか(←理解していないことを、無自覚に語っている)

沢  あの、最初に言った「うたたね」と「仮眠」の違いはどうなっているの?
   僕、知りたいな。

椎 「うたたね」は布団なしで、「仮眠」は布団あり。

木  似たようなもんだろ。

沢  となると、”会議中の仮眠”はあり得ない。

目  キミは鋭いねぇ。寝ることに関しては知識が豊富だよ(笑)

椎  無意識の睡眠が「うたたね」で、確信犯が「仮眠」。

目  これは正解だな。

沢  次、次に行こうよ。


(↑上記の会話部分は「発作的座談会2/角川文庫」
 平成12年8月25日初版発行ーーより抜粋)

目黒孝二氏によれば、この「発作的座談会」という本の、part1が発行さ
れたのは1990年、「本の雑誌」に掲載した座談会を、そのまままとめた
ものだそうである。ということは、登場している方々の年令は、40代後半
頃と推定される。

目黒氏曰く、「冷静に考えてみると、出席者にとっては恥多き座談会な
ので、パートⅠ同様、このパートⅡもひそかに読まれて、他人にはおすす
めにならないようお願いしたい」と、釘を刺されている・・ようである。

ささゆりさんに「著作権問題は?」と指摘されてビビり、たくたくろさんに
文中に出典の注釈を付けるがいいよ、とアドバイスをもらい、このように
書き足しているのでR。いひっ(笑)

しかし、次もこの座談会をとりあげるのだ。それで最後よ~~(←まぁ、
せいぜいガンバルがいいさ!

(鉢植え・JAの店先で売られていた)


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8 コメント

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Unknown (ささゆり)
2008-04-11 18:33:09
トーコさん こんにちは

シーナは、赤マントひるがえして、焚き火したり、草野球したりして、よく男同士つるんでるね。
ちょっと軽めな感じが受けるのかな。
私は野外派では、ゲージツ家のクマさんが好きです。
たけしの誰でもピカソの坊主の人。
文章もうまいよ。

ところでトーコさんは詞や文を引用しているけど、50年たっていない物の著作権に問題はないの?
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似たような言葉 (山小屋)
2008-04-11 20:59:38
なかなかおもしろそうな本ですね。
読んだことはありません。
似たような言葉はたくさんあります。
最近は否定する言葉が肯定になったりして、ややこしくなっています。
「ぜんぜん」などという言葉はどちらにも使われているようですね。
これからの日本語はどうなるのでしょう。
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ささゆりさんへ (トーコ)
2008-04-11 22:49:56
ささゆりさん、ようこそ~

え?著作権に触れちゃいます?

脅かさないでくださいよ~!私は、気が小さいんですから、頼みますよささゆり様~~!・・あはは

ゲージツ家のクマさんのファンなんですか。意外ね意外ね


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山小屋さんへ (トーコ)
2008-04-11 22:55:43
山小屋さん、こんばんは~

「ぜんぜん」は、普通に認められているそうですね。NHKで、言っていました。

こんな話、延々とやっていたら、頭が破裂しそうになりますよ、私なら。。。

山小屋さんならば、バトルロイヤルに残れそうですね
返信する
著作権 (たくたくろ)
2008-04-12 02:25:39
「うたたね」は、うっかりはちべえ。
「仮眠」は、しっかりはちべえ。
つまり、うっかりしちゃうのがうたたねで、しっかりととるのが仮眠です。
これでどうだ!(違うか

著作権問題にならないよう、引用をつけるといいですよ。
(○○より抜粋)とか。
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トーコさんへ (ken(森の時計と丘の風))
2008-04-12 09:42:44
トーコさん、おはようございます。

「のち」と「あと」
なるほど…時間的な経過と空間的なもの。

雨のち…。雨のあと…。
なるほどなるほど、こう置き換えたらよく分かりました。
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たくたくろさんへ (トーコ)
2008-04-12 20:42:14
たくたくろさん、こんにちは~

うっかりとしっかり、転寝と仮眠、はちべえサンで使い分けましたね。素晴らしい~~

引用は、キチンと書かなくてはいけませんね。手抜きしました(笑)

今日は、元気です
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kenさんへ (トーコ)
2008-04-12 20:47:33
kenさん、こんにちは~

「のち」と「あと」。雨のち…。雨のあと…。

流石ですね、分かりましたか?漢字で書くと同じですけど・・まだ、よく分かりません、この私(笑)
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