
芥川賞と直木賞が決まったとのこと。
私は心ひそかに、直木賞に「古処(こどころ)誠二」氏を応援していたが、残念ながら、今回も賞に選ばれなかったようだ。
このひとの小説では、『遮断』と、今回の候補作『敵影』を読んだことがある。どちらも、戦争と人間を描き切った秀作である。
実は、こういう(戦争が舞台の)小説は苦手な方だが、古処氏の文章は、数行読んだだけでひきずりこまれるものがあった。
緊迫した場面に、あたかも吾も存在しているような、不思議な錯覚に陥る。この作家が、どういう人なのかは全く知らなかったが、どうもう~んと若い人らしいのだ。
このたびネットで見てみると、1970年生まれ、福岡県出身。航空自衛隊にいたことがあるという。
私などは、親が戦争に行った経験を持つ、最後の世代だろうと思っているが、古処氏の年齢では、戦争に関係するのは、祖父母の世代だろう。
あるいは、自衛隊という組織経験から、戦争に対して、強い問題意識があるのかもしれない、などと勝手な想像をしている。
古処氏の”作風”については、こう書かれていた。
「派手さはないが、淡々とした静謐な語り口、簡潔な文体、誠実な筆致を用いて、人間ドラマに主眼を置き、戦争を真摯に描き続ける異色の作家」だと。
直木三十五賞の候補としては、今回が3度目だったという。
1回目、2005年「七月七日」。2回目「遮断」。3回目「敵影」。
「遮断」の方が良かったという意見も多く聞くけれど、私は今回の「敵影」の方が、より感情移入がしやすかった。
場所は、八月の沖縄。私刑と仇討ちが横行する捕虜収容所で、誰彼となく、二人の人間の行方を探し回っている、幽鬼のような男が主人公。
自分に最後の応急処置をしてくれた、看護の女学生を探し、その恩義ある女学生を、死に至らしめたかもしれない一人の男を、執拗に探していた。
私は、敗戦のただなかに居る、絶望する人間の心境になり、溢れるほどの涙を流していた。親たちの戦争の記憶が、戦争を知らない私のDNAの中で、ふいに起ち上がったようだった。まざまざとした、既視感にも襲われていた。
鬼気迫る小説の、そこかしこに、以下のような作家の想いも出ている。
…戦争を、国家の単位で語り、その終わりを劇的に演出するのは、勝利者と商売人の特権に違いなかった、と。
個人的なことであるが、私の親は、戦争については、最期まで黙して語らなかった。聞きたいと思ったこともあったけれど、聞ける”雰囲気”というものがなかったような気がする。
戦争はいつも、一番弱い者を犠牲にする。
黒柳徹子さんが、何かに書いていた言葉が、印象に残っていた。
彼女が小さい頃、兵隊さんを送る会で、日の丸の小旗を振って、ばんざーいと言うと、サキイカを一つまみ小さな掌に載せてくれたという。そして物のない時代だから、それが目当てで、見送る会に時々行ったのだそうである。
戦後、戦争はイケナイ事だったと言われ、私もイケナイ事をしたのだろうか、あれは戦争に加担したのだろうかと、ず~っと小さな胸を痛めていたそうだ。
悲しい記憶、である。
今日は、古処氏の話題から、「戦争」という、暗い重いお話になってしまいました。今回ガッカリされた方は、どうか次回に期待してください。たぶん。。。ナントカナルと思いますから(笑)
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然し最後は必ず、戦争論でぶつかり喧嘩になった。
それもまたいい思い出でした。
若い作家がたくさんいるようですが、読んだことがありません。
トーコさんの話で納得しています。
戦争がよいと思う人はいないと思います。
それなのに高いお金を出して戦闘機や戦車を買っているのは何故でしょう。
庶民にはわかりません。
ええっ、喧嘩するほど「戦争論」を闘わせたのですか?スゴイですね。仲が良かったのでしょうね。
今度、ブログの方でそれを書いてみてください。あとの責任は持ちませんけれど。。。
お父様、最期までおうちで面倒を見てもらえて、幸せでしたね。Samyさんも、お疲れさまでした。苦労も、きっと良い思い出になりましたでしょうね。
コメント入れていただいて、ありがとうございました
最近の私は、老眼が進んで、本を読むのも苦労です(笑)
パソコン画面を見るのも、極力控えていますので、山小屋さんのところにも、突っ込みのコメントを入れられなくて、ホント申し訳ありません。。。
(小さい声で言いますが)迎撃ミサイル、、、???
いろいろ、考えさせられる事が多い、昨今ではあります。
そうそう、私の本の紹介で”納得”しておくのが、”賢明”というものです。お金も時間もかかりませんし。あはは
久々の嬉しいコメント、ありがとうございました
最近、小説を読んでないので、久々に読みたくなりました。
トーコさんの読書感を読むと、その本を読む前から面白いと思ってしまうので不思議です。
川上未映子さんも、新聞の「人」欄を見て、読んでみたいと思いましたが。
川上未映子さんですか?…知りません。あ、お名前だけは知っています。あはは
そうですよ。私は、気に入った本を褒めるのが”趣味”なのですから
もう、長時間は読めませんので、飛ばすときもあります!そこんとこ、今後とも、ヨロシクお願いします
寒いために、ギリギリのところで、なんとか生きていますけれど、ほぼ?そこそこは元気です。たぶん。。。
お元気そうなコメント、ありがとうございました
僕の子どものころは、戦争ごっこって敵味方に分かれて遊んだもの。
今ではだれもそんな遊びはしていない。
戦争はいけないもの。爺ちゃん、婆ちゃんから聞かされた悲惨な話…
今も世界のどこかで戦いが起こってるんですよね。
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人間一人ひとりの意識改革はどうしたら実現出来るのでしょう?
私も本は大好きなんですが、読むジャンルが偏ってます
もっと広げなきゃね
良いことだ。皆さん、ポチポチ(つまり2回、2か所ポチッとするの意)しましょう!
古処誠二氏の作品、いつか読んでみますね。
段々といい作品が出来るので、次回は期待大ですね。
叔父さん(父方)が、沖縄決戦に志願兵で戦死してます。
私と性格が同じで、気性が荒かったみたいです。(笑)