女優・山岡久乃さんのこと

2008-08-28 22:03:56 | こんなンで委員会
かつて、TBSの人気ドラマ『ありがとう』に出演されていた山岡久乃さんを、お訪ねしたことがありました。

初めて入るテレビ局に、天井の明るいセット現場に、私はキョロキョロと興味津々のオノボリサンでした。

ピーンと張り詰めた空気、固唾を呑む本番が終わって、皆さんがバラケル休憩になると、やっと周囲にも笑みがこぼれる雰囲気が出ました。

緊張と弛緩の心地良いリレー。乾いた慌しさの中に「化ける」楽しさを満喫する世界。ふと岡本信人さんと目が合いました。おぉ、TVで見ている顔と同じです(当然ですがね^^)

山岡さんは、現在はすでに故人となられていますが、当時(昭和40年代後期)は漲るパワーに溢れた方で、サッパリテキパキとしたテンポの速い話しぶり、情念が燃えたつような強い黒目がちの目、気持ちの良いスカッとする方でした。

芸能人や有名人となると、マネージャーさんや秘書さんがスケジュール調整をする場合が多かったのですが、山岡さんの場合はご本人が直接電話に出られて、こちらが少々泡を喰った覚えがあります。

内容を訊いてその時その場で、インタビューの時間や場所を指定してくださったのです。TBSのスタジオで本番の休憩時間に受けるから、○○番のスタジオに入って待っていてください、と言われたのでした。それは仕事とはいえ、私にはすごく楽しみで待ち遠しい時間なのでした。

TVドラマの『ありがとう』は、毎回欠かさず見ていて私の大好きなドラマだったですから。娘役の水前寺清子さんに、「鬼~!」と言われる、しっかり者の母親役が山岡さんでした。

山岡さんに来意と名前を告げると、「ここでもいいわよね!」と、近くの空いている小部屋に連れて行かれました。なにぶん次の本番まで時間がないので、急いでインタビューしました。それでも約40分間、顔つき合わせる形で(狭いために^^;)、不慣れな素人にお付き合いをいただきました。

山岡さんは大正15年、東京生まれ。舞台芸術アカデミーの出身。今思うとこの時は、40歳代だったでしょう。


*  *  *  *  *


。。。江戸っ子なのですか?

山岡) いいえ。父母は九州出身で、私は東京の大田区で生まれましたけど、どっちかっていうと山の手だから・・。兄弟はね、死んだの入れると7人、今は5人ね。私?一番上。アハハ、そう見えるでしょう。

。。。女優さんになられた動機は?

山岡) 母親がこういうことが好きで、自分が果たせなかったものだから、誰か子供の一人をというわけで。21の時にね、今は満で言うから19ね、19の夏。

そう、初めは好きじゃなかったの。私は血液型はAで、A型の典型と致しましては、家でじっとしているほうが好きなンです。人様の前へ出てしゃべったりするのは、駄目なンですよ。世話焼きの、いわゆる内助の功みたいなのは平気だけれども。

泣いたり笑ったりラブシーンがあったり、女優なんて露出狂のすることだってよく言うでしょう(笑)

。。。『ありがとう』の前には、頼りない奥様の役でしたが。

山岡)ああ、『肝っ玉かあさん』ね。私の役は、あれは少しヌケているお母さんね。

。。。ものすごく上手いなぁと思いました。

山岡)あれはやっていて、とても面白かった。私の地は、どっちかというと『ありがとう』の母親役に近いですが、『肝っ玉かあさん』での役は、地ではないから「化ける」楽しさがあったわね。

。。。自分と全く違ったキャラクターを演ずるというのは、どのような感じなのですか?

山岡)それが、却ってやりいいの。違う方が染まりやすいっていうか、作りやすいです。似て非なるものが、難しいの。人間は善人か悪人か。若いか老けてるか。キツイか優しいか。泣き虫か怒り虫かって分けていくと、そんなにないでしょ。人間って、そんなの全部持ってる。

。。。役作りはどのように?

山岡)たとえばPTAに母親が行くシーンがあるわね。母親はみんな一人一人違う過去を持っているのに、一様に黒紋付きの羽織姿といういでたち。でもそんな風に描くのが、テレビのホームドラマでね。

私はお母さん役が多いけれども、世の中にはいろんな母があって「女」の部分が多いお母さんもいれば、「母親」の部分が濃い女性もいる。出世欲の強いひと、お金の欲、虚栄心、いろんな人間的部分があるでしょう。まして女だからプラスアルファが付く。それで「母」でなきゃいけない、平凡な女。そんな役が一番難しいような気がします。

                          (以下次号へ続く)



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5 コメント

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山岡久乃さん (山小屋)
2008-08-29 06:48:04
何となく顔を覚えています。
ハキハキと物をいう女(ひと)のようでした。
和服が似合っていたような・・・?

テレビはありますが、あまり見たことがないので・・・
特にドラマは見ませんね。
連続物はもっとダメですね。
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豪雨 (山小屋)
2008-08-29 06:53:29
追伸です。
そうそう、夕べはかなりの豪雨だったようですね。
トーコさんのところは大丈夫でしたか?
流されなかったかと心配していました。
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山小屋さんへ (トーコ)
2008-08-29 14:40:47
山小屋さん、こんにちは^^ありがとうございます

こんな昔の話で恐縮です。山岡さん、うっすらと覚えていらっしゃいますか?薄らボヤボヤしている?とぶっ飛ばされそうな感じでした(笑)

昨夜の雨は、当地では1時間に最大120ミリを観測したそうなのです。って、今朝の新聞によればね。あはっ!お陰様でなんとか流されずに済みました~。はぁ、まぁ精神的には”漂流”していますが・・hhh

「ゲリラ豪雨」とか呼ばれていますが。ブログの「読み逃げ」といい、喩えが恐ろしげになってきています。ひゃーー

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女優 (個風)
2008-08-29 21:32:23
山岡久乃さん…見たらわかるでしょう、多分あまりドラマ見ないもので先日お亡くなりになられた女優さんも、全く分からなかったくらいですから

地でない(と言っている)時のほうが、評価が高かったりしますね「作る楽しみ」があるのかも知れませんが。

…正直、女性に弱い(僕も含めた)男性は、演技に見事だまされるのかも知れません横にそれましたが、続きも楽しみにしています
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個風さんへ (トーコ)
2008-08-30 15:37:45
個風さん、こんにちは^^

こちら、現在又激しい雷雨になりました。真っ暗なので、電気を点けました(≧∇≦)/ ハハハ

今から30数年前の記録ですよ。個風さんが生まれた頃かもしれません。
山岡さんは「渡る世間は鬼ばかり」の出演時に、病没されています。1999年、72歳だったそうです。

地に遠い役柄の時に、演技者としての楽しさがあるようでした。コメントをありがとうございました
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