将来発生が懸念される大地震に備え、個人、企業、自治体は被害を軽減する対策等のあらゆる措置を講じている。
住宅・事務所の耐震補強や工場移転等のリスク軽減策とリスク回避策はある程度限界があり、完全に大地震リスクを除去することは不可能だが、何よりも経済的損失を抑える効果があり、大震災後の事業継続を可能とする。
リスク軽減策とリスク回避策は大地震発生前の対策、いわゆる防災投資であり、震災後の不利な資金調達手段での再建・復興と比較すると有効な初期投資ではないだろうか。
一方、何時来るかわからない大地震に、いまどれだけの防災投資が必要なのかを判断することは容易ではない。少なくとも地震リスクを定量的に評価することが必要だ。
具体的な評価の方法として、発生する可能性のあるすべての地震を網羅し、その発生確率を算出すること。さらにその地震による予想損失額を求め、予測誤差を調整する手法。それをあらわした曲線がリスクカーブだ。
リスクカーブは縦軸に年超過確率(0.01なら100年に1回以上、1なら1年に1回以上)、横軸に予想損失額(さらに予想される最大損失額(横軸の右端)をPMLという。)で表現される。年超過確率が低いほど大きな損失額、いわゆる低頻度をあらわす。
低頻度の予想最大損失額(PML)が自己資金でカバーできれば大地震対策は万全。そうでなければ、どの損失まで自己資金でカバーできるかを見極め、自己資金でカバーしきれない損失をリスクファイナンスでカバーする等の対策が必要だ。
リスクファイナンスには融資型のコミットメントライン、コンティンジェントデッドや従来型の保険商品(再保険、ファイナイト保険、キャプティブ)、資本市場にリスク移転を求めた証券化商品(CATBOND、保険デリバティブ)、地震時返還債券等の広く選択肢がある。
予想損失額を把握し、リスクファイナンス、防災投資とうまく組合わせることにより万全の防災対策を実施し、公表することによりその企業価値はますます高まることであろう。