も~いいかい?(PART 1)

まあだだよ
『まあだだよ』は、黒澤明監督の日本の映画作品。黒澤明の遺作となった。
1993年大映公開。
内田百の随筆を原案に、戦前から戦後にかけての百の日常と彼の教師時代の教え子との交流を描いている。
黒澤作品の前・中期に見られる戦闘・アクションシーン等は皆無。
終始穏やかなトーンで話が進行する。
百を演じる松村達雄と妻役の香川京子、そして教え子役の所ジョージなど、出演者の好演が光る。黒澤作品として期待を集めたが、興行的には失敗した。
あらすじ
法政大学のドイツ語教師・百先生は随筆家としての活動に専念するため学校を去ることになり、学生たちは『仰げば尊し』を歌って先生を送る。
職を辞したのちも、先生の家には彼を慕う門下生たちが集まり、鍋を囲み酒を酌み交わす。
先生には穏やかな文士生活が訪れるはずであった。
しかし時代は戦争の只中、先生も空襲で家を失ってしまう。

妻と二人、先生は貧しい小屋で年月を過ごすことを余儀なくされるが、戦後門下生たちの取り計らいで新居を構えることを得る。
昭和21年、彼らは先生の健康長寿の祝いのために「摩阿陀会」なる催しを開く。
なかなか死にそうにない先生に「まあだかい?」と訊ね、先生が「まあだだよ!」と応える会である。
月日は経ち、17回目の「摩阿陀会」は先生の喜寿のお祝いも兼ねて盛大に開かれる。
門下生たちの頭にも白いものが交り、彼らの孫も参加したこの会で、先生は突然体調を崩してしまう。
大事をとって帰ることになるが、かつての教え子たちは昔と同じように『仰げば尊し』を歌って会場を後にする先生を送るのだった。
その夜、付き添った門下生たちが控える部屋の奥で、先生はおだやかに眠る。
夢の中、かくれんぼをしている少年は、友達に何度も「まあだだよ!」と叫ぶ。
少年が見上げた夕焼けの空が、やがて深く彩られ、夜になっていくところで映画は終わる。
本映画の登場人物は、百の著作に出てくる人物とは一致しない。
以下の二名は百件の著作中にも見られる名前だが、彼らも百の著作と映画中の役回りは異なっている。

北村・・・百の記述によると「摩阿陀会」の肝煎の一人であるが、映画では一般の出席者になっている。
甘木・・・百の著作によく登場する名前であるが、特定の人物を指したものではない。「甘木」は「某」の字を分解したもので、百が個人名を出したくない時に使った符牒である。
この他、実際には「摩阿陀会」の肝煎(幹事)は多田基、北村孟徳、平山三郎の3人であるが、映画では4人となっている。
ただし、映画の肝煎が4人になっているのは、百宅の近所に住み、「摩阿陀会」開催時に百を会場にエスコートする役を担っていた「平井」という人物を含めているものとも考えられる。
この平井は、百の随筆「ノラや」の中で、ノラが行方不明になった時に、新聞に折込広告を入れることを提案した人物でもある。(映画では桐山が提案している)

■「黒澤明未発表インタビュー」
http://www.tokyo-calendar.tv/art_culture/0902a_01.html
出典:
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
写真はデンマン・ライブラリーより

デンマンさん。。。最近はDVDで映画ばかり見ているのですわね?

いや。。。そんな事はありませんよ。。。記事もちゃんと書いていますからね。 ただ、記事だけ書いていると、やっぱりダレてきますからね。 オツムをリフレッシュするために3時間ぐらい書き続けたら映画を見るのですよ。 脳の刺激になりますよ。
それで、ネタを仕入れて記事を書くのですか?
その通りですよ。
。。。で、『まあだだよ』を観て感動してのですか?
なかなかいい映画でしたよ。 初めて観たのは10年前ほどでした。 確か、バンクーバー映画祭(Vancouver International Film Festival)でしたよ。 その時には野良猫の「ノラちゃん」の事が記憶に残っていなかったのだけれど、今度見て猫が行方不明になったことが結構長く取り上げられていたのに気づきましたよ。


この上の写真に写っているねのが、その行方不明になった猫ですか?

そうなのですよ。 先生が講演を頼まれて九州まで行った帰りに電車に乗っていて、ある駅に着いたときにふと見ると「ノラ」ちゃんとそっくりな猫が見えた。 先生は不吉な予感がして家に帰って、すぐに「ノラ」ちゃんを探すのだけれど、居ないのですよ。 それで、昔の生徒を巻き込んで大騒ぎになるのですよ。
猫の事をすっかり忘れてしまったということは、デンマンさんは猫が嫌いなのですか?
いや。。。嫌いではありませんよ。 でも、猫よりも犬のほうが僕は好きですね。 犬だったら、多分覚えていただろうと思うのですよ。
。。。で、今度見て何が印象的だったのですか?
あのねぇ~、出だしのところでしたよ。 先生が学校を辞める事を生徒に告げるのですよ。 その中で昔の思い出話に「あまり生徒の顔を覚えていないのだけれど、一人だけ忘れられない奴がいる。 彼は目を開いたまま眠っていたんだ。 それは誰か? 君のお父さんだよ!」 そう言って生徒の一人の名前を呼ぶのです。 皆がどっと笑うのです。
それが印象的だったのですか?
そうなのですよ。。。そのシーンを観てね、初めて観た時には思い浮かばなかったのだけれど、夕べ観た時には不意に同じシーンがオツムに甦(よみがえ)ったのですよ。
その同じシーンというのは。。。?
僕が仙台にいた頃、今ではもう無くなってしまったけれど、「仙台松竹」で「チップス先生さようなら」という映画を観たのですよ。 その中に、ちょうど同じようなシーンがあるのです。
チップス先生さようなら

イギリスの作家ジェームズ・ヒルトンの代表作「グッドバイ・ミスター・チップス(Goodbye, Mr. Chips)」のミュージカル映画化。
監督は「ドリトル先生不思議な旅」などの振付を担当したハーバート・ロス。
原作を脚色したのは「黄色いロールスロイス」のテレンス・ラティガン、撮影は「オリバー!」のオズワルド・モリス、音楽は「おしゃれ泥棒」のジョン・ウィリアムスで、作詞作曲は「ドリトル先生不思議な旅」でアカデミー主題歌賞を受けたレスリー・ブリッカス、衣装デザインは「ダーリング」でオスカーを受けたジュリー・ハリスがそれぞれ担当。
1969年作品。
あらすじ
イングランド南部の田園の町ブルックフィールドにあるブルックフィールド・スクール。
ここに勤めるアーサー・チッピング(ピーター・オトゥール)は親しい人々にチップス先生と呼ばれていた。
彼は教育熱心ではあったが、生徒たちの受けはよくなかった。
まだ独身のチップス先生は、夏休みを利用して、イタリアへの旅に出かけた。
途中、ロンドンで1泊した際、俳優のキャサリン(ペトゥラ・クラーク)と知り合った。

そして、その後、ポンペイの遺跡で再会した2人の心は急速に打ち解けあった。
そしてあるパーティの席上彼女から愛を打ち明けた。
ブルックフィールドに戻った時、チップス先生のそばにはキャサリンがいた。
校長(マイケル・レッドグレイヴ)をはじめ学園中が目を丸くして驚いたが、たちまちキャサリンは人気者になってしまった。
しかし学校の有力者サタウィック卿(ジョージ・ベイカー)はチップスを学校から追い出すよう脅迫した。
キャサリンはこの強力な反対にあい、身を引こうとしたが、チップス先生の愛に支えられ、2人の幸福な生活が続いた。
そして、この頃から生徒達も、チップス先生の魅力にひかれはじめてきた。
だが、やがて戦争が始まり、キャサリンは空軍の慰問に出かけて行った。
チップス先生の校長就任が決まった時、彼女は帰らぬ旅路に発った後だった。
そして戦争は終わった。
チップス先生は生徒たちに別れを惜しまれながら職を退いた。

しかし町を去るにしのびず、学校の近くに居を構えることにした。
そして、そこには毎日のように、生徒の明るい顔がみられるのだった。
出典:
http://movie.goo.ne.jp/movies/p5864/story.html
写真はデンマン・ライブラリーより

『チップス先生さようなら』は、ジェームズ・ヒルトンが1934年に発表したイギリスの小説なのですよ。 僕は映画を観るまで知らなかったのだけれど、イギリスでは名作の一つだと言う事ですよ。

私は映画の名前も聞いたことがありませんわ。
1939年に初めて映画化されたらしい。 上の映画は、だから1969年にリメイクされたものです。 小百合さんが4つの頃だから知らないのも無理ないですよ。
チップス先生のお話も第2次世界大戦をはさんでのことですか?
いや、その前の第一次大戦ですよ。 チップス先生は全寮制男子校のパブリックスクールで教えることになった。 はじめは人気がなかったのだけれど、キャサリンと知り合ってから、チップス先生の人気が出るようになった。
この映画がどうしてデンマンさんには印象深いのですか?
あのねぇ~、実は、この映画を僕はエミリーさんと一緒に観に行ったのですよ。
ん。。。? エミリーさん。。。? カナダの映画館でですか?
いや。。。仙台ですよ。 僕が学生の頃ですよ。 エミリーさんというのはアメリカ人の18歳の金髪の女の子でしたよ。
あらっ。。。デンマンさんはアメリカ人のガールフレンドと付き合っていたのですか?
いや。。。残念ながら僕のガールフレンドではなかったのですよ。
誰のガールフレンドだったのですか?
僕の知る限り、エミリーさんは誰のガールフレンドでもなかった。 彼女は仙台のモルモン教会を建てた建築士の娘さんだった。 アメリカのユタから夏休みを利用して日本にやって来ていたのですよ。
デンマンさんは大学生の頃にモルモン教に入信していたのですか?
僕が。。。? まさか。。。? あのねぇ~、モルモン教会では信者を増やすための活動の一つとして無料の英会話教室を開いていたのですよ。
つまり、英会話を学ぶためにデンマンさんは教会に通っていたのですか?
そうですよ。 ユタ州にあるブリガムヤング大学(Brigham Young University)の学生が常時4,5人宣教師として派遣されていました。
その見習い宣教師の学生さんたちが、代わる代わる英会話の先生になってデンマンさんたちを教えていたのですか?
そうなのですよ。
エミリーさんも宣教師の見習いだったのですか?
いや。。。エミリーさんは信者だったけれど宣教師ではなかった。 お父さんが教会を建てた建築士だったので夏休みを利用してお父さんに会いにやって来ていただけなのですよ。 英会話教室の他にも社交ダンス教室があって、僕はその教室にも顔を出していた。
あらっ。。。デンマンさんは社交ダンスもできるのですか?
一通りそこで習ったのですよ。 エミリーさんも時々参加していましたよ。
つまり、デンマンさんはエミリーさんとも踊ったのですか?
そうですよ。。。うししししし。。。
それで。。。それで。。。デンマンさんは、エミリーさんにダンスしながらモーションをかけたのですか?
やだなあああァ~。。。僕は小百合さんが考えているほど手が早くありませんよ。
でも、どうして映画に一緒に出かけたのですか?
あのねぇ~、たまたま英会話教室の生徒のうちで映画の好きな人が一緒に仙台の一番町にあった松竹映画に『チップス先生さようなら』を観に行くことになったのですよ。


■『懐かしい杜の都』
■『杜の都の映画』

この上の写真が仙台の松竹映画館ですか?
そうです。 地図の①番にあったのですよ。 でもねぇ、残念ながら2001年に閉館になってしまいました。
エミリーさんも映画が好きだったのです。
そうです。
。。。で、エミリーさんと二人きりで観に行ったのですか?
もちろん、僕はエミリーさんと二人きりで行きたかったのですよ。 でもねぇ、残念ながらエミリーさんと二人きりではなかった。 余計な生徒もついてきたのですよ。 ほんとに残念でした。
。。。で、デンマンさんは映画館の中でエミリーさんにヤラシイ事をしたのですか?
ん。。。? やらしい事。。。?
そうですわ。。。かつてブルックリンでマリアさんとアンナさんとデンマンさんの3人で『エマニエル夫人』を観にいった時に、デンマンさんはヤラシイことをしたではありませんか!?
アンナさんとデンマン

ケイトー(デンマン)はマリアのことをずいぶんと見下していると思うわ。

いや。。。僕は決してマリアを見下したりしていないよう。
マリアはねぇ、こうしてあなたが私のところにやって来る事をすぐに感づいたのよう。だから電話をかけて寄越したのよう。
でも。。。でも。。。どうして分かったのかなぁ~?
ケイトーって見かけよりもオツムの回転が鈍(にぶ)いところがあるのね。
ん。。。?僕のオツムの回転が鈍い?
そうよ。映画館の中だって、あなたはマリアが気づいていないと思って私の手を握ったけれど、あの子はちゃんと気づいていたのよう。
どうしてアンナに分かるんだい?
マリアはあなたの右手を握っていたわ。ケイトーが左手で私の手を握れば、それは右手にも伝わって、マリアの手にも動きが伝わるものなのよう。あの子は横目であなたの動きを見ていたのよう。
でも、アンナは僕の手を無視してスクリーンに集中していたじゃないか!
分かっていたわよ。マリアがあなたの動きを横目で見ていたことも私には分かっていたわ。
まさか。。。?どうして。。。分かるんだい?映画館の中は暗かったじゃないか。
暗かったと言っても、映画を見始めれば目はその暗さに慣れてしまうものよう。ケイトーは私のことばっかり気にしていたから、マリアの事が分からなかったのよう。私には、あなたの事もマリアの事もちゃんと見えていたわ。
でも、マリアは一言もそのことを言わなかったけれど。。。
言う訳無いじゃないの。
どうして。。。?
見極めようとしていたのよう。
見極める。。。? 何を。。。?
あなたが私にチョッカイを出している事よう。
僕はふざけてアンナに接近した訳じゃないよう。。。。だったら、僕がマジでアンナの事を好きになってしまったことを、アンナだって分かっていたよね?
ええ。。。なんとなく。。。女の直感で分かっていたわ。
僕はマリアも“自由”を認めていたと思うけれど。。。
自由って。。。自由恋愛のこと。。。?
そうさ。。。だから、マリアは僕とアンナが二人きりで Lighthouse Beach に行くのを認めていたじゃないか。



本当は3人で行くはずだったのよう。もともと、マリアが言い出したことだったのよう。私がボーイフレンドと別れてふさいでいたから。。。でも、キャッシュの仕事がもらえて、マリアはスーパーのレジの穴埋めに出かけて行ったのよう。
なんだい。。。その穴埋めって。。。?
マリアが勤めていたスーパーで急に女の子が病気で出られなくなったのよう。それでマネージャーからお声がかかって、キャッシュで払うから来てくれって。。。
つまり、失業保険をもらいながらキャッシュで働くわけ。。。?
そうよ。。。持ちつ持たれつよ。マネージャーだって助かるし、マリアも臨時収入が入るでしょう?
マリアは僕とアンナが二人だけでビーチに行くことを知っていたんだ。
ケイトーはマリアが知らないと思っていたの?
僕はアンナが僕のために混浴露天風呂に案内してくれるものとばかり思っていたよう。
実はマリアが言い出したのよう。その時冗談半分で言ったものよ。“あたし、行けないけれど、ケイトーをあたしから取らないでね”って。。。
マジで。。。?
多分、こうなる事を予測していたのよね。
だったら、いいじゃないか。。。なるようになったのだから。。。
ダメよう。。。私はマリアを裏切る事ができないわ。
でも、アンナだって、結構、あの日ビーチで僕と一緒に楽しんでいたじゃないか?

だってぇ、もともとマリアが私のために言い出したのよう。私がボーイフレンドと別れて、ふさいでいたので、マリアが私を元気付けるために3人で Lighthouse Beach へ行こうと言う話だったのよう。 だから、私もマリアの気持ちがありがたかったので、素直にその気持ちを受けて、ケートーと久しぶりに愉快な時間を過ごしたのよう。
だからさぁ。。。今夜もその続きを。。。
ダメよう。。。調子に乗らないでよう。。。マリアの気持ちを裏切る事になるわ。
アンナって友達思いなんだねぇ~。。。僕は、ますますアンナの事が好きになってしまったよう。。。
『ブルックリンのエマニエル夫人』より
(2008年5月26日)
(すぐ下のページへ続く)