大阪地方裁判所 令和5年(ワ)6622事件
視覚障害者の選挙活動にかかる同行援護不支給事件裁判の資料
別紙1
関係法令等の定め
1 障害者総合支援法及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(以下「障害者総合支援法施行規則」という。)並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令(以下「障害者総合支援法施行令」という。)等
(1)定義
障害者総合支援法4条1項は、同法において「障害者」とは、身体障害者福祉法4条に規定する身体障害者等をいう旨規定する。身体障害者福祉法4条は、同法において、「身体障害者」とは、同法別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう旨規定する。
障害者総合支援法4条4項は、同法において「障害支援区分」とは、障害者等(障害者又は障害児をいう(同法2条1項参照)。以下同じ。)の障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すものとして主務省令で定める区分をいう旨規定する。
障害者総合支援法5条1項は、同法において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護等をいい、「障害福祉サービス事業」とは、障害福祉サービスを行う事業をいう旨規定する。
障害者総合支援法5条4項は、同法において「同行援護」とは、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう旨規定する。
障害者総合支援法施行規則1条の5は、同法5条4項に規定する主務省令で定める便宜は、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行して行う移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等の外出時に必要な援助とする旨規定する。
(2)介護給付費等の支給決定
障害者総合支援法19条1項は、介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費又は特例訓練等給付費(以下「介護給付費等」という。)の支給を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、市町村の介護給付費等を支給する旨の決定(以下「支給決定」という。)を受けなければならない旨規定し、同条2項本文は、支給決定は、障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする旨規定する。
障害者総合支援法20条1項は、支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない旨規定する。
障害者総合支援法21条1項は、同法20条1項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害支援区分の認定を行うものとする旨規定する。
障害者総合支援法22条1項は、市町村は、同法20条1項の申請に係る障害者等の障害支援区分、当該障害者等の介護を行う者の状況、当該障害者等の置かれている環境、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向その他の主務省令で定める事項を勘案して介護給付費等の支給の要否の決定(以下「支給要否決定」という。)を行うものとする旨規定する。同法22条4項は、市町村は、支給要否決定を行うに当たって必要と認められる場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、同法20条1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者に対し、同法51条の17第1項1号に規定する指定特定相談支援事業者が作成するサービス等利用計画案の提出を求めるものとする旨規定し、同法22条5項は、同条4項の規定によりサービス等利用計画案の提出を求められた障害者又は障害児の保護者は、主務省令で定める場合(身近な地域に指定特定相談支援事業者がない場合又は同法第20条1項の申請に係る障害者又は障害児の保護者がサービス等利用計画案の提出を希望する場合、障害者総合支援法施行規則12条の4)には、同項のサービス等利用計画案に代えて主務省令で定めるサービス等利用計画案(指定特定相談支援事業者以外の者が作成するサービス等利用計画案(障害者総合支援法施行規則12条の5)であり、利用者本人等が作成する支援計画(以下「セルフプラン」という。)を含む。)を提出することができる旨規定し、同法22条6項は、市町村は、同条4項及び5項のサービス等利用計画案の提出があった場合には、同条1項の主務省令で定める事項及び当該サービス等利用計画案を勘案して支給要否決定を行うものとする旨規定する。障害者総合支援法施行規則12条は、障害者総合支援法22条1項に規定する主務省令で定める事項は、①同法20条1項の申請に係る障害者等の障害支援区分又は障害の種類及び程度その他の心身の状況、②当該申請に係る障害者等の介護を行う者の状況、③当該申請に係る障害者等に関する介護給付費等の受給の状況、④当該申請に係る障害児が現に児童福祉法6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援又は同法24条の2第1項に規定する指定入所支援を利用している場合には、その利用の状況、⑤当該申請に係る障害者が現に介護保険法の規定による保険給付に係る居宅サービスを利用している場合には、その利用の状況、⑥当該申請に係る障害者等に関する保健医療サービス又は福祉サービス等(上記③から⑤までに係るものを除く。)の利用の状況、⑦当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者の障害福祉サービスの利用に関する意向の具体的内容、⑧当該申請に係る障害者等の置かれている環境及び⑨当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況とする旨規定する。
障害者総合支援法22条7項は、市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として主務省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない旨規定し、障害者総合支援法施行規則13条は、同法22条7項に規定する主務省令で定める期間は、1月間とする旨規定する。
(3)介護給付費等の支給
障害者総合支援法29条1項は、市町村は、支給決定障害者等が、支給決定の有効期間内において、都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者(以下「指定障害福祉サービス事業者」という。)又は障害者支援施設から当該指定に係る障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)を受けたとき等は、主務省令で定めるところにより、当該支給決定障害者等に対し、当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス(支給量の範囲内のものに限る。以下「指定障害福祉サービス等」という。)に要した費用(食事の提供に要する費用、居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち主務省令で定める費用(以下「特定費用」という。)を除く。)について、介護給付費又は訓練等給付費を支給する旨規定する。
障害者総合支援法29条3項は、介護給付費又は訓練等給付費の額は、1月につき、①同一の月に受けた指定障害福祉サービス等について、障害福祉サービスの種類ごとに指定障害福祉サービス等に通常要する費用(特定費用を除く。)につき、主務大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)の額を超えるときは、当該現に指定障害福祉サービス等に要した費用の額)を合計した額(同項1号)から②当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が上記①に掲げる額の100分の10に相当する額を超えるときは、当該相当する額)(同項2号)を控除して得た額とする旨規定する。
障害者総合支援法29条4項は、支給決定障害者等が指定障害福祉サービス事業者等から指定障害福祉サービス等を受けたときは、市町村は、当該支給決定障害者等が当該指定障害福祉サービス事業者等に支払うべき当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)について、介護給付費又は訓練等給付費として当該支給決定障害者等に支給すべき額の限度において、当該支給決定障害者等に代わり、当該指定障害福祉サービス事業者等に支払うことができる旨規定する。
障害者総合支援法29条5項は、同条4項の規定による支払があったときは、支給決定障害者等に対し介護給付費又は訓練等給付費の支給があったものとみなす旨規定する。
障害者総合支援法29条3項1号にいう「主務大臣が定める基準」である「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)」(乙18)は、同行援護について、外出(通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除く。)時において、別に厚生労働大臣が定める基準を満たしている利用者に同行し、移動に必要な情報の提供(代筆・代読を含む。)、移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該利用者の外出時に必要な援助を行うことをいう旨規定する(別表第2の1イ、第3の1の注1(乙18の7頁及び11頁)参照)。
(4)障害福祉サービス費負担対象額に係る都道府県及び国の負担
障害者総合支援法施行令44条1項は、都道府県は、障害者総合支援法94条条1項の規定により、毎年度、障害福祉サービス費等負担対象額の100分の25を負担する旨規定し、同施行令44条2項は、国は、障害者総合支援法95条1項の規定により、毎年度、障害福祉サービス費等負担対象額の100分の50を負担する旨規定する。
障害者総合支援法施行令44条3項本文は、障害福祉サービス費等負担対象額は、各市町村につき、その支弁する同項各号に掲げる費用の区分に応じ、当該各号に定める額の合算額とする。
同項1号は、障害福祉サービス費等の支給に要する費用について、①介護給付費等(居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援及び常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして内閣総理大臣及び厚生労働大臣が定める要件に該当するものが利用する障害福祉サービスに係るものに限る。)の支給に要する費用については、当該介護給付費等について障害者等の障害支援区分、他の法律の規定により受けることができるサービスの量その他の事情を勘案して内閣総理大臣及び厚生労働大臣が定める基準に基づき当該介護給付費等の支給に係る障害福祉サービスを受けた障害者等の人数に応じ算定した額又は当該介護給付費等の支給に要した費用の額(その費用のための寄附金その他の収入があるときは、当該収入の額を控除した額)のいずれか低い額と②介護給付費等(①に掲げるものを除く。)及び特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費の支給に要する費用については、当該介護給付費等、特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費の支給に要した費用の額を合算した額とする旨規定する。
そして、「こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める障害福祉サービス費等負担対象額に関する基準等」(平成18年厚生労働省告示第530号。乙33)において、障害者総合支援法施行令44条3項1号に規定する厚生労働大臣が定める基準(以下「国庫負担基準」という。)としての、障害福祉サービス費等負担対象額に関する基準が定められている。
2 各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長宛て厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知「介護給付費等の支給決定等について」(平成19年3月23日障発第0323002号。以下「本件通知」という。乙20)
本件通知は、地方自治法245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であるとされているところ、本件通知には、以下の記載がある。
「第4 支給決定及び地域相談支援給付決定の際勘案すべき事項その他の基本事項
5 支給決定基準等の作成
(1)障害福祉サービス
市町村は、勘案事項(障害者総合支援法施行規則12条に規定する支給決定の際に勘案すべき事項及び障害者総合支援法施行規則34条の35に規定する地域相談支援給付決定の際に勘案すべき事項をいう。)を踏まえつつ、介護給付費等の支給決定を公平かつ適正に行うため、あらかじめ支給の要否や支給量の決定についての支給決定基準を定めておくことが適当である。
その際、国庫負担基準は、あくまで国が市町村の給付費の支弁額に対して国庫負担する際の一人当たりの基準額であり、当該基準額が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないことに留意すること。
一方、個々の障害者の事情に応じ、支給決定基準と異なる支給決定(いわゆる「非定型」の支給決定)を行う必要がある場合が想定されることから、市町村はあらかじめ「非定型」の判断基準等を定めておくことが望ましい。
なお、「非定型」の支給決定を行うに当たっては、支給決定案について市町村審査会の意見を聴いた上で個別に適切な支給量を定めること。」
3 豊中市障害福祉居宅介護サービス等の支給に関するガイドライン(以下「本件ガイドライン」という。乙19(令和4年4月版))
本件ガイドラインは、被告が本件通知を受けて作成したものであるところ、本件ガイドラインには、同行援護サービスについて、次のとおりの記載がある(乙19の104頁)。
(1)同行援護サービスとは
視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護、排せつ及び食事等の介護その他の当該障害者等が外出する際に必要な援助を行うサービスをいう。
(2)同行援護サービスの具体的な項目
① 移動時及びそれに伴う外出先において必要な視覚的情報の支援(代筆・代読を含む。)
② 移動時及びそれに伴う外出先において必要な移動の援護
③ 排せつ・食事等の介護その他外出する際に必要となる援助
(3)支給量の基準
1か月当たり50時間を上限とする。(障害者・障害児)
4 公職選挙法
公職選挙法197条の2第1項は、衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動(衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党が行うもの及び参議院比例代表選出議員の選挙において参議院名簿届出政党等が行うものを除く。以下同項及び同条2項において同じ。)に従事する者に対し支給することができる実費弁償並びに選挙運動のために使用する労務者に対し支給することができる報酬及び実費弁償の額については、政令で定める基準に従い、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)が定める旨規定する。
同条2項は、衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動に従事する者(選挙運動のために使用する事務員、専ら同法141条1項の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者、専ら手話通訳のために使用する者及び専ら同法142条の3第1項の規定によるウェブサイト等を利用する方法による選挙運動のために使用する文書図画の頒布又は同法143条1項の規定による選挙運動のために使用する文書図画の掲示のために口述を要約して文書図画に表示することのために使用する者に限る。(以下「選挙運動のために使用する事務員等」という。))については、同法197条の2第1項の規定による実費弁償のほか、当該選挙につき同法86条1項から3項まで若しくは8項、86条の3第1項若しくは同条2項において準用する同法86条の2第9項又は86条の4第1項、2項、5項、6項若しくは8項の規定による届出のあった日からその選挙の期日の前日までの間に限り、公職の候補者一人について1日50人を超えない範囲内で各選挙ごとに政令で定める員数の範囲内において、一人1日につき政令で定める基準に従い当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表選出議員の選挙については中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙については当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)が定める額の報酬を支給することができる旨規定する。
以上
別紙2
(原告①の別紙をコピー)
別紙3
支給決定を受けた障害者の延べ人数(人)(a) 支給決定がされた支給量の年間総時間数(時間)(b) 各人の1か月当たりの支給量の平均時間数(時間)(b÷a) 受給者の述べ人数(人)(c) 利用量の年間総時間数(時間)(d) 各人の1か月当たりの利用量の平均時間数(d÷c) 平均利用率(%)(d÷b)
平成24年度 1,995 65,830.0 33.0 1,426 33,698.0 23.6 51
平成25年度 2,205 80,137.0 36.3 1,583 39,615.0 25.0 49
平成26年度 2,276 88,834.0 39.0 1,619 43,746.0 27.0 49
平成27年度 2,370 93,845.0 39.6 1,685 47,018.5 27.9 50
平成28年度 2,311 95,879.5 41.5 1,738 49,578.0 28.5 52
平成29年度 2,348 100,119.0 42.6 1,808 51,610.5 28.5 52
平成30年度 2,377 102,878.0 43.3 1,786 49,926.5 28.0 49
以上