ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「逢魔」 唯川 恵読了!

2018年06月19日 22時55分41秒 | 作家 や行
逢魔 (新潮文庫) 2018.6.19読了。
唯川 恵 (著)

抱かれたい。触れられたい。早くあなたに私を満たして欲しい―。身分の違いで仲を裂かれ、命を落としたはずの女との、蕩けるほどに甘く激しい交わり。殿様の側室と女中が密かにたがいを慰め合う、快楽と恍惚の果て。淫らな欲望と嫉妬に惑い、魔性の者と化した高貴な女の告白。牡丹燈籠、雨月物語、四谷怪談、源氏物語…古の物語に濃厚なエロティシズムを注ぎ描き出した、八つの愛欲の地獄。


怪談や古典などが、唯川風にアレンジされた作品群。
やはり、この手の短編はものすごくうまい。
命がけの腹の据わった濃厚な情愛だからこそ、愛すれば愛するほど、人は地獄へと堕ちていくというわけ。
また、タイトルも秀逸。…7点。

「瑠璃でもなく、玻璃でもなく」 唯川 恵読了!

2018年06月11日 15時36分50秒 | 作家 や行
瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫) 2018.6.11読了。
唯川 恵 (著)

美月・26歳・未婚・OL・妻がある会社の同僚と不倫中。英利子・34歳・既婚・専業主婦・子供なし。バリバリ働く友人を最近眩しく感じている。将来像を描けない不安を抱える美月と、単調な毎日に漠然とした不満を覚える英利子。恋も家庭も仕事も自由な時間も、他人にあって自分にないものは妬ましい。女はどこまで欲張りなのか。結婚という選択はどれだけ女の人生に影響を与えるものなのか。



唯川さんは好きなんですけど、、、よくこの小説、途中ぶん投げないで読みきったものだと、不思議に思う。
二人の主人公、夫を奪われる方の女が起業して成功といううそくさい展開に違和感を感じ、そして、略奪したほうもハッピーエンド、こんな夢物語あるわけない。…4点。

警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 通報者  吉川英梨読了!

2017年12月07日 20時08分16秒 | 作家 や行
警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 通報者 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 2017.12.7読了。
吉川 英梨 (著)

警視庁管内にて、税理士の妻子が誘拐されたとの一報が入る。身代金取引現場の近くに偶然居合わせた「女性犯罪」捜査班の原麻希が捜査に加わるが、警察が介入していることがばれて取引は中止に。その後、多摩川流域にて女性と子供の遺体が発見される。そして同じ多摩川流域で“第3の遺体”も見つかり―。天才捜査官・原麻希が、犯人の“見えない”難事件に挑む


今回も、ハラマキさん、面白かったけど、なんか内容が薄くなっているような。今作では先が読めてしまうことが多々あり、もう少し、ひねりが欲しいかな。…6点。

「漂流」 吉村 昭読了!

2016年12月21日 15時37分14秒 | 作家 や行
漂流 (新潮文庫)  2016.12.21読了。
吉村 昭 (著)

江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。



この話は、現代のこの生きにくい世の中をサバイブするためにも通じる話だ。置かれた環境に適応し、柔軟な対応力とあきらめない心。これこそが人生を生き抜く鍵となる。なんとも骨太な小説だ。…7.5点。

「破船」 吉村 昭読了!

2016年12月15日 00時57分29秒 | 作家 や行
破船 (新潮文庫)  2016.12.14読了。
吉村 昭 (著)

二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。しかし、積荷はほとんどなく、中の者たちはすべて死に絶えていた。骸が着けていた揃いの赤い服を分配後まもなく、村を恐ろしい出来事が襲う……。嵐の夜、浜で火を焚き、近づく船を坐礁させ、その積荷を奪い取る――僻地の貧しい漁村に伝わる、サバイバルのための異様な風習“お船様"が招いた、悪夢のような災厄を描く、異色の長編小説。



作者のそぎ落とした筆致は、かえって想像をかきたてられ怖い。感情や主観が入らず、ドキュメンタリーのように物語が描かれていく。主人公に感情移入したつもりはないが、物語の中で起きる現実を主人公とともに重く突きつけられ、キツイ。そしてどんよりと暗くなる。読みごたえのある小説。そして作家。…7点。

「フリン」 椰月美智子読了!

2016年05月09日 13時33分07秒 | 作家 や行
フリン (角川文庫) 2016.5.9読了。
椰月 美智子 (著)

高校生の真奈美は、カレと入ったラブホテルで、自分の父親が同じマンションに住むOLの葵さんと一緒に歩いているのを目撃してしまう(「葵さんの初恋」)。元カレと逢瀬を繰り返す主婦、人生最後の恋に落ちた会社員、壮絶な過去を持つ管理人の老夫婦…。ある川辺に建つマンションを舞台に繰り広げられる反道徳の恋。愛憎、恐怖、哀しみ…様々なフリンの形を通じて、人と人の温かさ、夫婦や家族の関係性を描ききった連作短編集。


とあるマンションの住人たちの『フリン』の連作短編集。
不倫ではなくフリンとしただけあって、ドロドロとした修羅場チックなお話はでてきませんし、文体もライトです。また、時にはハートウォーミングなフリン話しなどもあり、読後感が良かったり…。
なんていう、ほんわか不倫の話は期待していませんので、ドロドロの愛憎劇の果てに、当事者たちを地獄の底に叩きつけるような悲壮なラストと、イヤーな読後感をしばらく引きずるような小説をお願いしたいものです。…4点。

「テティスの逆鱗」 唯川恵読了!

2016年05月05日 18時45分06秒 | 作家 や行
テティスの逆鱗 (文春文庫) 2016.5.5読了。
唯川 恵 (著)

華やかな美貌で売る女優、出産前の身体に戻りたい主婦、完璧な男との結婚をねらうキャバ嬢、そして、独自の美を求め続ける資産家令嬢。美容整形に通い詰める四人はやがて「触れてはならない何か」に近づいてゆく―。終わりなき欲望を解き放った女たちが踏み込んだ戦慄の風景を、深くリアルに描く傑作長編!



美容整形にとりつかれた女たちを描いた異色ホラー?ですか?これは!
主人公たちは、美容整形にとりつかれている。
重度の整形依存ともいえる。
しかも、全員大変に不幸だ。
「美しくなりたい」ということに囚われすぎた末路は、
一線をこえた、なんでもありの別世界へ。
まさしく、オカルトです。面白く怖かった。
しかし、何を書いてもそつが無いですね、唯川さん。…7点。

「天に堕ちる」 唯川 恵読了!

2016年05月02日 16時11分15秒 | 作家 や行
天に堕ちる (集英社文庫) 2016.4.29読了。
唯川 恵 (著)

騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。


この本のどこかに書いてあった、「人間が持つ、明と暗、優しさと毒、幸福と恐怖。それらは隣り合わせにある。だから、人はほんのささいなことで足を滑らせてしまう。」本当に人生なんて、紙一重。それに、愛だとか幸福だとか、感じ方は人によって千差万別。この小説の主人公たちは、傍から見れば堕ちていくんだけど、タイトルが「天に堕ちる」だけあって、実は本人だけは、禁断、甘美な天国に堕ちて(?)いるのかもしれない。よくもまぁ、色々なタイプの穴に堕ちるストーリーを考えられるものだと感心してしまう。…7点。

「警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 5グラムの殺意」 吉川英梨読了!

2016年04月15日 00時36分14秒 | 作家 や行
警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 5グラムの殺意 (宝島社文庫) 2016.4.14読了。
吉川 英梨 (著)

六本木の違法クラブで女子中学生が惨殺される事件が起きた。警視庁「女性犯罪」捜査班の面々はさっそく現場へと赴くが、肝心の原麻希は休暇中で連絡がつかず、妊娠八カ月の圭子を捜査へと駆り出すことに。そのころ、たまがわ市に住む女子中学生が二人死亡していることが判明。麻希の娘の葉月はいち早くそれが連続殺人事件であることに気づくが―。天才捜査官・原麻希が難事件に挑む、文庫書き下ろし長編ミステリー。ハラマキ捜査官シリーズ。



ハラマキシリーズ第7弾。
警察小説としての出来は、前作の方が良くできていたと思うが、
今回も、登場人物が面白い。
もちろん、主人公は抜群に魅力的。しかも、もったいぶって途中から登場するし。
新たな登場人物も加わり、ますます飽きさせないこのシリーズ。
第8弾はまだ出ていないが、すでに次作にも期待!というか早く読みたい。
まあ、事件と謎解きが平凡なんで、…7点です。

「警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希」 吉川英梨読了!

2016年04月04日 20時12分12秒 | 作家 や行
警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補・原麻希 (宝島社文庫)2016.4.4読了。
吉川英梨(著)

一家四人惨殺事件に仕掛けられた、ミスリーディングに気付けるか! ?
初動捜査で浮かんだのは、殺されたアイドルタレントのストーカーをしていた男だった――。
「女性犯罪」捜査班に異動となった原麻希が、新たな難事件に挑む!
奥多摩の陶芸家宅で起きた、一家惨殺事件。殺されたのは十六代目繁田庄三衛門とその妻・恵美、そして双子の娘・瑠衣と芽衣だった。
瑠衣は人気アイドルグループの一員で、瑠衣のストーカーによる犯行、瑠衣をねたんだ芽衣による犯行、江戸時代から続く由緒ある陶芸窯の跡取りの座を巡っての犯行と、犯人が絞り切れないまま捜査は進む。
そんななか、麻希は捜査の進行状況が、真犯人によって仕組まれた方向へと進んでいることに気づき……。
真犯人によるミスリーディングに翻弄される女性犯罪捜査班。かつてないタイプの知能犯と麻希の駆け引きも見どころの、ハラマキシリーズ最新作。




『女性秘匿捜査官・原麻希』シリーズらしい。
それのいきなり第六弾かな?
面白い、それぞれのキャラがたってるし、主人公が魅力的。
序盤の、ミスリーディングとそのどんでん返しとかもいいし、読みやすさもあり読む手が止められない。
が、しかし、終盤の犯人を陥れる囮捜査からの自供って持って行きかたはどうなのよと思うけど。
それでも、また、エピローグなんか読んでいると楽しい雰囲気にのせられて、まあ、そんなこともどうでもよくなってしまうんだけれど。読んでいて楽しいっていうのも小説の魅力だよね。ハラマキシリーズまた読みたい!…7点。