ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「狂」 坂東 眞砂子 読了!

2014年03月29日 17時59分36秒 | 作家 は行
「狂」 [幻冬舎文庫] 坂東 眞砂子 (著) 2014.3.29読了 。

村の男たちが仮装して、家々を訪ねる祭事・粥釣の夜。十六歳のみつの住むあばら屋にも五人の男が上がり込んでいた…。その翌日から、村人たちは神社に集い、奇声をあげ、祝詞を叫び、踊り出す。白昼堂々、交わるものたちも出る始末。荒れた世で、なにが人々を突き動かすのか?土佐にあった集団憑依事件を元に、大騒乱の顛末を描く傑作長編。

坂東眞砂子
高知県生まれ。奈良女子大学卒業。1993年に『死国』を発表。96年「桜雨」で島清恋愛文学賞、「山妣」で第一一六回直木賞を受賞。2002年には、「曼荼羅道」で柴田錬三郎賞を受賞する


幕末、山村で本当にあったらしい集団憑依事件をふくらました小説。狗だか狸だかが農民に憑依し、大騒動になり、藩が乗り出し、鎮圧し…というだけの話なんだけど、さすがは坂東さん、恋愛や、風土、風俗、伝承で話を盛り上げ、前半こそちょっとかったるく進行するが、中盤から一気にクライマックスまで引きずりこまれた。…7点。

「山妣」 坂東 眞砂子 読了!

2014年03月12日 11時02分12秒 | 作家 は行
山妣」 [新潮文庫] 坂東 眞砂子 (著) 2014.3.12読了 。

明治末期、文明開化の波も遠い越後の山里。小正月と山神への奉納芝居の準備で活気づく村に、芝居指南のため、東京から旅芸人が招かれる。不毛の肉体を持て余す美貌の役者・涼之助と、雪に閉ざされた村の暮らしに倦いている地主の家の嫁・てる。二人の密通が序曲となり、悲劇の幕が開いた――人間の業が生みだす壮絶な運命を未曾有の濃密さで描き、伝奇小説の枠を破った直木賞受賞作


なんといってもどうにもならんのは人間の業の深さよ。
山姥もかなわない。…9点。
後半ずっぽしはまる。電車も乗り過ごすおもしろさ。再読必死!

「屍の聲」 坂東 眞砂子 読了!

2014年03月04日 13時32分17秒 | 作家 は行
「屍の聲」 [集英社文庫] 坂東 眞砂子 (著) 2014.3.4読了 。

「惚けてしまったおばあちゃんは生ける屍や。正気のおばあちゃんは死にたがっている」そう信じた少女は溺れる祖母を見殺しにした。そして通夜の席で一瞬、確かに祖母は蘇った―表題作「屍の声」のほか、5編の恐怖短編を収録。因習としがらみの中で生きる人間たちの、心の闇に巣くう情念の呪縛。濃密な風土を背景に描く、恐怖の原型とは。記憶の底に沈む畏怖の感情を呼び起こす本格ホラー小説集。


あ、これは、ホラーです。
やはり、風土色強いです。和的ホラーです。
単純に怖いというより、不思議な、そしてどこか因習的な怖さです。
「正月女」が怖かった。「正月に村の女が死ぬとその村の女7人つれて行く」という言い伝えが怖い。…5点。

「パライゾの寺」 坂東 眞砂子 読了!

2014年02月27日 13時24分51秒 | 作家 は行
「パライゾの寺」 [文春文庫] 坂東 眞砂子 (著) 2014.2.27読了 。

明治2年、長崎・浦上村の隠れ切支丹たちが土佐の漁村・天浜へ流罪となった。志操堅固な信徒たちに手を焼く村の顔役たちは、遊郭の女郎たちをけしかけて戒律を破らせ、棄教に追い込もうとする。表題作など、宮本常一とおぼしき民俗学者が採集した回顧譚の体裁で語られる、濃密なエロスとグロテスクな哄笑に満ちた7つの物語。
坂東/眞砂子
昭和33(1958)年、高知県生まれ。奈良女子大学居住学科卒業後、イタリアに2年間留学、インテリアデザインを学ぶ。帰国後フリーライターとして働きつつ童話を発表、57年、第7回毎日童話新人賞優秀賞を受賞。平成6年「蛇鏡」「桃色浄土」が連続して直木賞候補に。8年「桜雨」で第3回島清恋愛文学賞受賞。9年、「山妣」で第116回直木賞受賞。14年「曼荼羅道」で第15回柴田錬三郎賞を受賞


あれ? これは、ホラーじゃないんだ。
伝奇的というか民俗学的なお話なんだ。
と、思いきや、やっぱり、最後の短編で見事なオチが。
そんで、やっぱ、全部、ホラー的になってしまう。
読み終わっていた6編の短編全部がなんかホラーだったような感じがしてきてしまう。
なんか、すごいな。
連作じゃなくて、短編なのに、いや、連作なのか?
最後の1編を読んだ後と読む前とでは、本一冊としての味付けが変わってくる。
そういう仕掛け、なのか?
7つの短編なんだけど、ランダムに読まずに、ぜひ、最初から順番に読むことをお勧めします。…8点。(短編なのに)

「日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路」 深尾葉子 読了!

2013年12月20日 17時34分03秒 | 作家 は行
「日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路」 (講談社プラスアルファ新書) 深尾葉子 (著) 2013.12.20読了 。

大反響を巻き起こした『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』(講談社+α新書)の第二弾にして姉妹作!
タガメ女に箍めとられてカネと社会的リソースを搾取される「カエル男」たちが、日本の政治、経済を動かし、部下や下請け会社、取引先といった周囲の関係者を搾取の”倍返し”で支配するさまを、豊富なケーススタディをもとに紐解く。ビッグデータ、グローバル化がいかに進行しようとも、日本の男たちの「カエル男」的体質が変わらない限り、日本は失速し続け、ますます家庭生活は生きづらくなる構造矛盾を撃つ!!
箍にハメられ、カネと社会的リソースを「タガメ妻」にチューチューと吸い取られるカエル男が支配する日本社会の、「責任転嫁」「現実逃避」の病根が、目からウロコでよくわかる!!『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』の続篇。



実は、「タガメ女」の方も読んでいる。斜め読みだったが…。
今回、対になる「カエル男」の方も読んでみて、合点がいった。なるほどそういうことかと。日本の社会に蔓延し、日本を滅ぼしかねない「タガメ女」と「カエル男」! こいつらこんなに恐ろしげなやつらだったとは! こいつらに打ち勝つには、「ひとり、ひとりが、人間として搾取やぶら下がりをやめて、自分らしく生きていくことだそうだ」ほんとうにその通りだと思うが、難しいだろうなこりゃ。…7点。

「東京難民」(上・下) 福澤 徹三 読了!

2013年12月18日 10時53分12秒 | 作家 は行
「東京難民」(上・下) (光文社文庫) 福澤 徹三 (著) 2013.12.17読了 。

時枝修は、東京郊外にある私立大学の三年生。夏休み明けにクラス担任から告げられたのは、学費未納で除籍になるという寝耳に水の事実だった。北九州の実家では、借金を抱えた両親が失踪。貯金はないに等しい。アルバイトを転々とする中、家賃滞納で住居も追い出されてしまう。追いつめられる修。だが、それはまだ、底なしの貧困と孤独への入口に過ぎなかった―。
行き場を失った修は、ホストとして働く決意をする。大金が飛び交うきらびやかな世界。だが、そこは、男と女の色と欲がせめぎあう凄まじい格差社会だった。必死で自分の居場所を作ろうとする彼に、さらに大きなトラブルがふりかかる!流転を続ける修に、安住の地は見つかるのか?索漠とした大都会の底辺であがく若者の姿をリアルに描く、異色青春小説の傑作。

福澤/徹三
1962年福岡県生まれ。2000年、『幻日』(文庫版では『再生ボタン』と改題)でデビュー。磨き上げられた端正な文体で綴られた数々の作品で、ホラー作家としての確固とした地位を築く。アウトロー小説の書き手としての評価も高く、’08年には『すじぼり』で第10回大藪春彦賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


まあ、この主人公に感情移入できないことできないこと。
なんか、読んでいてイライラする。このムカつく主人公がどうやって人生、足を踏み外していくのか気になって気になって…。まんまとはまっていた。
なんか、「今、そこにある危機」って中国が攻めてくることでもなくて、大地震が起こることでもなく、こういうことじゃないのかと思ったよ。…8.5点。

「武装酒場」樋口 明雄 2011.10.18読了

2011年10月19日 18時17分22秒 | 作家 は行
「武装酒場」樋口 明雄 (ハルキ文庫)

阿佐ヶ谷のガード下にある居酒屋「善次郎」。妻を絞め殺したと思いこんだ男、借金の取り立てから追われる男、その他、様々な窮地に立たされた常連客たちが、己の苦境から現実逃避するために、偶然この店に集まってしまった。一方、別の事件で警察が「善次郎」の向かいの店にパトカーで出動。サイレンの音を聞いた常連客たちは、それぞれが自分を捕まえにきたと思いこみ、事態は立て篭もり事件にエスカレートしてしまうのだが…。抱腹絶倒のスラップスティック小説の金寺塔。

人情がらみもまたよし! なんかここんとこおもしろい本にあたってる俺。ふむ。しあわせ。飲みたくなったぜー! 

8点(10点満点)

「ミッドナイト・ラン!」 樋口 明雄 2011.10.11読了

2011年10月11日 18時14分28秒 | 作家 は行
「ミッドナイト・ラン!」 樋口 明雄 単行本

「大藪春彦賞&日本冒険小説協会大賞」W受賞第一作!

くたばりぞこないに、怖いモノなし!
警察に追われ、ヤクザに撃ちまくられても、ひたすら突っ走る!
生きているという真の意味を問うために――。

ネット心中を計画した5人の男女が、山中で実行間際に、ヤクザに追われている少女を助ける。
自殺延期を決めた5人だったが、山を下りると、自分たちが指名手配されたことを知る。
ネット心中者に仕掛けられた「罠」。誰が味方で、誰が敵なのか――。
ノンストップのジェットコースター・ノベル!!


単行本でよんじまったよー。おもしろい本は、重くっても電車で読めるぜ!9点(10点満点)

「蝉しぐれ」 藤沢周平 読了!

2011年07月21日 14時17分04秒 | 作家 は行
「蝉しぐれ」藤沢周平 (文春文庫)2011.7.19読了。


●勝手に採点 9点(10点満点です)この小説に10点をつけないのは、もう個人の嗜好の問題ですから…。溺愛本(いつも手元にないと生活に支障が…)になれば10点つけます。←過去10点つけたことなし。


●おおざっぱなあらすじ

清流と木立に囲まれた海坂藩、城下組屋敷を舞台に、主人公文四郎の淡い恋、友情、悲運と忍苦。ひとりの少年藩士の成長を描く。


●ひとこと感想

◎いつまでも、読み終わりたくなかった
まずは、読後すこし、悲しいような爽快感にじんわりと浸った。
時代小説としても、青春小説としても、恋愛小説としても、どう読んでもすばらしい出来。傑作というのだろうな。
それはそうと時代小説を読むとつくづくと感じることだが当時の男子は、これ程凛々しく、ひたむきで、大人びていたのだなあ…と(まあ、小説の中の話ではあるが)。
逆境にあろうとも、弱音をはかず、志高く生きようとする。今を生きる男子もそうあってほしい。