ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「顔に降りかかる雨」 桐野夏生

2022年09月06日 15時04分05秒 | 作家 か行
新装版 顔に降りかかる雨 (講談社文庫) 2022.9.6読了。
桐野 夏生 (著)

親友の耀子が、曰く付きの大金を持って失踪した。夫の自殺後、新宿の片隅で無為に暮らしていた村野ミロは、共謀を疑われ、彼女の行方を追う。女の脆さとしなやかさを描かせたら比肩なき著者のデビュー作。江戸川乱歩賞受賞!




再読だが大雑把なストーリーを覚えていただけだったので、大変面白く読めた。最後の真相もまったく覚えていなくて、「えっ!」ってなったくらいだ。これがミロシリーズ第1作か、、、なんか感慨深いものががあるよね。なんかこの後ミロさんどんどん変わっていってしまって読む気がなくなってしまったんだよな。今回はどうだろ?6.5点

「水の眠り灰の夢」 桐野夏生

2022年09月01日 16時55分41秒 | 作家 か行
新装版 水の眠り 灰の夢 (文春文庫) 2022.9.1読了。
桐野 夏生 (著)

東京オリンピック前夜の熱気を孕んだ昭和38年9月、地下鉄爆破に遭遇した週刊誌記者・村野は連続爆弾魔・草加次郎事件を取材するうちに、女子高生殺しの容疑者に。高度成長の歪みを抱えたまま変貌する東京を舞台に、村野が炙り出したおぞましい真実とは。孤独なトップ屋の魂の遍歴を描いた傑作ミステリー。



昭和の雰囲気がいい感じだし、なにせこの村野という主人公がカッコイイ。そしたら、村野ミロの義父だというじゃないですか?なるほどねぇ。ミロシリーズをもう一度読み直してみるきっかけになった。7点

「猿の見る夢」 桐野夏生

2022年08月30日 15時43分35秒 | 作家 か行
猿の見る夢 (講談社文庫) 2022.8.28読了。
桐野 夏生 (著)

現在の薄井の楽しみは、十年来の愛人しかなかった。それなのに逢い引きに急ぐところを会長に呼び止められ、社長のきなくさいセクハラ問題を耳打ちされる。家に帰れば、妻が占い師を知らぬ間に連れ込んでいる。女のマンションで機嫌をとって朝帰りすれば、妹から電話で母が亡くなったと知らされた。「なぜみんな俺を辛い立場に立たせる?」欲深い59歳の男はついにある一線を越えてしまう。もっとも過激な「定年小説」!



定年小説だそうですが、この主人公と年齢の近い男が読めば、これは立派なホラー小説です。ほんと怖かった、そして大変おもしろく読ませていただきました。「猿の見る夢」という題名も秀逸です。8点

「夜また夜の深い夜」 桐野夏生

2022年08月24日 01時12分30秒 | 作家 か行
夜また夜の深い夜 (幻冬舎文庫) 2022.8.23読了。
桐野夏生 (著)

友達に本当の名前を言っちゃだめ。マイコにそう厳命する母は整形を繰り返す秘密主義者。母娘はアジアやヨーロッパの都市を転々とし、四年前からナポリのスラムに住む。国籍もIDもなく、父の名前も自分のルーツもわからないマイコは、難民キャンプ育ちの七海さん宛に、初めて本名を明かして手紙を書き始めた。疾走感溢れる現代サバイバル小説。



ラストはどうなるんだろ?と思って読んできたが、小さなどんでん返しとふわっとした終わり方。なんかもっとハードな着地になるのかと思っていたからちょっと気が抜けた。しかし、主人公たち3人の生命力をはらんだ疾走的サバイバルは面白く読めた。舞台がナポリっていうのもまたダークでいい。7点。

「奴隷小説」 桐野夏生

2022年08月18日 23時49分55秒 | 作家 か行
奴隷小説 (文春文庫) 2022.8.18読了。
桐野 夏生 (著)

長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう、という掟のある村で、ある少女が結婚相手として選ばれる「雀」。
ある日突然、武装集団によって、泥に囲まれた島に拉致された女子高生たちを描いた「泥」。
アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは?(「神様男」)。
管理所に収容された人々は「山羊の群れ」と呼ばれ、理不尽で過酷な労働に従事し、時に動物より躊躇なく殺される。死と紙一重の鐘突き番にさせられた少年の運命は?(「山羊の目は空を青く映すか」)……など。
時代や場所にかかわらず、人間社会に現れる、さまざまな抑圧と奴隷状態。
それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きている。
あなたもすでに、現代というディストピアの奴隷なのかもしれない――。
様々な囚われの姿を容赦なく描いた七つの物語。
桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した異色短編集。



現代というディストピアの奴隷とはどういうことなのか?とらわれているのは自分自身に責任があるのか?仕組みなのか?自己責任なのか?なぜかこんなことを考えさせられる小説。現代のプロレタリア文学なのか?本筋とは全然違うことを考えてしまうある意味すごい小説なのかもしれない。7点。

「夜の谷を行く」 桐野夏生

2022年08月18日 23時41分13秒 | 作家 か行
夜の谷を行く (文春文庫) 2022.8.15読了。
桐野 夏生 (著)

女たちが夢見た「革命」とは?
連合赤軍事件をめぐるもう一つの真実に光をあてた傑作長篇。
山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、十二人の仲間が次々に死んだ。
アジトから逃げ出し、警察に逮捕されたメンバーの西田啓子は五年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。
しかし、ある日突然、元同志の熊谷から連絡が入り、決別したはずの過去に直面させられる。



独り暮らし、63歳女性の実は壮絶な過去。それを日常のなかに必死に埋め込んでなかったことにしようと生活してくが、あるきっかけであの当時の自分と対峙していく。引きずり込まれます。7点。

「バラカ」(上・下) 桐野夏生

2022年08月10日 15時59分51秒 | 作家 か行
バラカ 上・下 (集英社文庫)2022.8.10読了。
桐野夏生 (著)

出版社勤務の沙羅は40歳を過ぎ、かつて妊娠中絶した相手の川島と再会。それ以来、子供が欲しくてたまらなくなってしまった。非合法のベビー・スークの存在を聞きつけ、友人・優子とドバイを訪ねた。そこで、少女「バラカ」を養女にしたが、全く懐いてくれない。さらに川島と出来婚をしていたが、夫との関係にも悩んでいた。そんな折、マグニチュード9の大地震が発生。各々の運命は大きく動き出す。
東日本大震災によって、福島原発4基すべてが爆発し、日本は混沌としていた。たった一人で放射能被害の警戒区域で発見された少女バラカは、豊田老人に保護された。幼くして被曝した彼女は、反原発・推進両派の異常な熱を帯びた争いに巻き込まれ―。全ての災厄を招くような川島に追われながらも、震災後の日本を生き抜いてゆく。狂気が狂気を呼ぶ究極のディストピア小説、ついに文庫化!



この小説の中の日本は東日本大震災後の被害が現実の日本よりひどいことになっているんだが、実際の日本と見えない部分では相違ないように思えてくる怖さ。悪の組織がなんなんだか実態がつかめないのもうさん臭くてほんといいんだよな。あと、川島っていうくそったれが非常にうまく描かれていていい。エンターテイメントな疾走感もいい。7点。

「世界が赫に染まる日に」 櫛木理宇

2022年04月18日 13時28分39秒 | 作家 か行
世界が赫に染まる日に (光文社文庫) 2022.4.16読了。
櫛木 理宇 (著)

中学三年生の緒方櫂は復讐心をたぎらせていた。従弟が上級生たちから凄絶ないじめに遭った末に意識不明の重体に。その妹も同じ連中に性的暴行を受けたのだ。自殺願望を持つ同級生・高橋文稀が櫂の復讐の相棒となることを承諾。二人は予行演習として、少年法に守られて罰せられない犯罪者たちを次々と襲い始める。エスカレートする制裁の果てに待つ衝撃の運命とは?



なんか焦点がぼけていたような。結局何にポイントを置いて書かれたお話なのか? 友情なのか、少年法なのか、クライム小説なのか、サイコミステリーなのか、青春ものなのか。あと、主人公が計画から脱落する理由もちょっと弱い気もするし、そもそも主人公はどっちだったんだろう? なんか色々と中途半端な状態ですが、とは言ってもそれなりに面白かったし、ラストも良かった。6点。

「飛べないカラス」 木内一裕

2022年04月05日 14時40分44秒 | 作家 か行
飛べないカラス (講談社文庫) 2022.4.5読了。
木内一裕 (著)

規格外の新主人公(ニューヒーロー)誕生!
すべてを失った男に舞い込んだシンプルな「超難問」
「娘が幸せかどうか確かめてきてほしい」
1億円の行方と、謎の女と、仕掛けられた過去。
冒険は、この依頼から始まった。
俺の幸運は、不幸の始まり……の、はずだった。
元売れない俳優で元起業経営者。元犯罪被害者で元受刑者。
納得しようのない罪での服役を終えた加納健太郎への奇妙な依頼は、彼を運命の女(ファム・ファタール)へと導いた。
笑い、驚き、涙する。すべてが詰まった究極のエンターテインメント!



スピード感、謎解き、ユーモア、ちょっとハードボイルド的かっこよさ、ちょこっと感動、そして映画への愛、などいろいろ満載のエンターテインメント小説。
面白い。一言でいえば面白いけど、読んでいて引っかかるところも多く、そんでご都合主義。突っ込みどころも多いけど、そこは深く考えないで楽しく読むのが正解だと思う。6点。

「異形のものたち」 小池真理子

2021年06月09日 15時34分05秒 | 作家 か行
異形のものたち (角川ホラー文庫) 2021.6.9読了。
小池 真理子 (著)

母の遺品整理のため実家に戻った邦彦は農道で般若の面をつけた女とすれ違う――(「面」)。“この世のものではないもの”はいつも隣り合わせでそこにいる。甘美な恐怖が心奥をくすぐる6篇の幻想怪奇小説。



悲しい余韻が残るホラー集。全体に雰囲気はいいんだけど、ストーリーにひねりというかもう一段深みがあればなおいいのに。もっと驚きが欲しい。6点。