ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「夜の声を聴く」 宇佐美まこと

2022年05月17日 17時15分10秒 | 作家 あ行
夜の声を聴く (朝日文庫) 2022.5.17読了。
宇佐美 まこと (著)

よろず相談も受けているリサイクルショップ「月世界」。そこを手伝う定時制高校に通う堤隆太は、些細なトラブルを解決していくが、いつしか数年前に起きた未解決の一家殺人事件の謎に巻き込まれ……。驚愕の書き下ろしミステリー。



ラストは最高だった。満ち足りた気持ちで本を閉じた。だが実際中盤まではなんだかなー、盛りあがんねーし、他の本に行こうかななんて考えて読んでた。他の方のレビューで後半になりさえすれば面白いってしっていたので、何とか持ちこたえた。大げさに言えばあの試練がなければ、このラストにたどり着けないということだ。読者に我慢させて読ませて、苦行に耐えたものだけが味わえる読書の至福。なんかむかつくが、あー、途中でぶん投げないでよかった。7点。

「愚者の毒」 宇佐美まこと

2022年05月16日 19時42分51秒 | 作家 あ行
愚者の毒 (祥伝社文庫) 2022.5.13読了。
宇佐美 まこと (著)

一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!



序盤から面白く読んだ。でも、最後の最後が気に入らない。不自然な執念とその仕掛け。どちらも首を傾げた。でもそこ以外は本当に面白かった。8点。

「黒鳥の湖」 宇佐美まこと

2022年05月10日 15時12分36秒 | 作家 あ行
黒鳥の湖 (祥伝社文庫) 2022.5.10読了。
宇佐美まこと (著)

上場企業『ザイゼン』の社長財前彰太は、妻の由布子、娘の美華と三人で幸福に暮らしていた。ところが、世間を騒がす女性拉致事件のニュースを見かけ、彰太の心に不安が兆す。その快楽殺人者の手口に覚えがあったのだ。十八年前、反対を押し切って由布子と結婚するため、そして伯父の会社を奪うため、彰太はある〝罪〞を犯した……。
人間の悪と因果を暴く衝撃のミステリー!



特に、後半の怒涛のサプライスはたまらなかった。面白かったけど、どうも主人公の家族だけが、再生して幸せになるみたいなラストはなんか気に食わない。悪と因果の報いはどこいった?6.5点。

「恋狂ひ」 宇佐美まこと

2022年05月06日 15時07分22秒 | 作家 あ行
恋狂ひ  ハルキ文庫 2022.5.5読了。
宇佐美 まこと (著)

友人と旅行代理店を経営している四二歳の鞠子は、十一歳年下の男と付き合っているが結婚する気はない。そんな彼女が、亡父から相続した元遍路宿の古民家を訪れ、そこで古い日記を見つける。四国遍路で果てる覚悟の女が戦前に書いたと思われる旅の記録を読み、自身も女の生と性に揺れる鞠子はこの遍路日記に飲み込まれるようになり……。



戦前の四国遍路の話と絡めることによって、姉妹とその夫をめぐる内輪の愛憎劇が時空を超えたミステリーになっていくっていうのがスゴイ。終盤のたたみ方も素晴らしい。ただ、読んでいて終始主人公に全く共感できず、しかも最後の最後までご安泰なのは憎らしい。7点。

「熟れた月」 宇佐美まこと

2022年04月27日 20時05分52秒 | 作家 あ行
熟れた月 (光文社文庫) 2022.4.27読了。
宇佐美まこと (著)

がんで余命半年と宣告されたヤミ金業のマキ子。落ちぶれた取り立て屋の乾。
陸上部のエース阿久津先輩に憧れる高校生の結。生まれてから車椅子の生活しか知らない身体の不自由な博。
それぞれの運命が絡み合ったとき、人生は思いがけない方向へ……。
二〇一七年『愚者の毒』で日本推理作家協会賞を受賞した著者が、底辺で生きる人間たちの業と、不思議な縁を描く。



最初、どういう話なのかさっぱりわからなかった。話がわからなくても面白く読み進めてしまうのは作家さんの力量か。後半に向かって、話が回収されていき、ストーリーがまとめられてくるあたりから、そりゃー、面白いわ面白いわ。クライマックスまで一気読み。ちょっとファンタジーが入っているおかげで、出来すぎのラストにならないで済んでいるのもよく考えられている。7点。

「アイネクライネナハトムジーク」 伊坂幸太郎

2022年04月08日 20時51分32秒 | 作家 あ行
アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫) 2022.4.8読了。
伊坂 幸太郎 (著)

妻に出て行かれたサラリーマン、声しか知らない相手に恋する美容師、元いじめっ子と再会してしまったOL……。人生は、いつも楽しいことばかりじゃない。でも、運転免許センターで、リビングで、駐輪場で、奇跡は起こる。情けなくも愛おしい登場人物たちが仕掛ける、不器用な駆け引きの数々。明日がきっと楽しくなる、魔法のような連作短編集。



それぞれの短編の登場人物が時間を行き来してまた登場する。実は、彼は誰かの夫だったり、娘だったり、ってな具合に。そして最後の「ナハトムジーク」に突入していろいろとわかって終焉という連作短編集なんですが、自分はこの本、長編として時系列通りに(「ナハトムジーク」はそのまま最後で)並べてほしかった気もちょっとします。長編として連続して読みたいと思ったりもした。このままでも十分面白かったけど。6点。

「愛についての感じ」 海猫沢めろん

2022年03月08日 19時57分58秒 | 作家 あ行
愛についての感じ  講談社文庫 2022.3.7読了。
海猫沢めろん (著)

レザーフェイスと呼ばれる男は、阿佐ヶ谷駅前で切り絵をする女の子に出会った。プレゼントは渡せないし、メールは送れない。奥手すぎる男の淡く儚い恋の物語(「初恋」)。東のヤクザである金城は、西の色町で働くたま子に惹かれていく。想いがなかなか交わらないまま、不器用な二人は最後の日に通天閣に登ることに(「新世界」)。はみ出し者たちが、街の片隅で出会い、不器用に奏でる切ない恋模様を描く5編の作品集。



久々に紙の本を読んだので更新。最近は電子でラノベばかり読んでました。
なんだろうなぁ、この不思議な小説は。愛についての感じって何なんだろう? 色々と解釈に困る文章も多いし、難解である。そんな話が多い中で、「新世界」だけは直球で、あれ? ひょっとして作者さんにとってはこちらが変化球か? まあ、とにかく「新世界」は良かった。5点。

「時の輝き」 折原みと

2021年12月23日 16時09分58秒 | 作家 あ行
時の輝き (講談社文庫) 2021.12.22読了。
折原 みと (著)

看護実習生・由花は実習先の病院で初恋の相手・シュンチと再会する。が、お互いの想いを確認して間もなく、2人は彼の本当の病名を知ることに。限られた「時間」を共に過ごす決意をした由花に、シュンチが遺したものは……。生命、愛、そして本当に大切なものを教えてくれる、110万部のベストセラー、待望の復刊!



講談社文庫になってるけど、昔読んだことのあるコバルトシリーズのような内容。児童書を読んでいるかのような薄さ。物語の筋書きだけが本になっているようで深みがない。読んだ自分が悪いんだけれど。3点。

「死神の精度」伊坂幸太郎

2021年11月10日 19時33分51秒 | 作家 あ行
死神の精度 (文春文庫) 2021.10.9読了。
伊坂 幸太郎 (著)

1、CDショップに入りびたり、 2、苗字が町や市の名前であり、 3、受け答えが微妙にずれていて、 4、素手で他人に触ろうとしない。 ――そんな人物が身近に現れたら、それは死神かもしれません。1週間の調査ののち、その人間の死に〈可〉の判断をくだせば、翌8日目には死が実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。 日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか、「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」を収録。



まず、死神の精度というタイトルが秀逸、そして死神のキャラクターがいい、死神がただ千葉というのもまたいい。軽く読めるのはいいが、物語にいまひとつ深みが足りない。唸るような短編はなかった。まあ、伊坂さんだからハードル上げちゃったのもありますが。6点。

「二歩前を歩く」 石持浅海

2021年10月20日 19時34分09秒 | 作家 あ行
二歩前を歩く (光文社文庫) 2021.10.20読了。
石持 浅海 (著)

ある日、僕は前から歩いてくる人に避けられるようになった。まるで目の前の“気配”に急に気がついたかのように、彼らは驚き避けていく…。(表題作)とある企業の研究者「小泉」が同僚たちから相談を持ちかけられ、不可思議な出来事の謎に挑む。超常現象の法則が判明したとき、その奥にある「なぜ?」が解き明かされる!チャレンジ精神溢れる六編のミステリー短編集。



超常現象を推理するという変わったミステリー集。で、とりあえず大前提として超常現象に理屈をつけてもしょうがないから、その現象は認めてしまう。その上で、真相を解き明かしていくのだが、、、目の付け所がいいです。6点。