納得がいかないまま鞍馬山を降りた私は、
日常生活に戻って奇妙な体験をするようになりました。
ある日、夢の中で小さな池が出てきました。
そのほとりで、小さな女の子と若いお母さんがたたずんでいる光景が見えました。
おかあさんはずぶ濡れで腰をおろしたまま放心状態のようで目はうつろでした。
女の子は可愛らしい花柄のワンピースを着ていて、麦藁帽子をかぶっていました。
放心状態のお母さんと違って女の子は絶えず右へ走ったり、左へ走ったりしていました。
どうにかしてこの場所から離れようとしているように見えました。
しかし、出口が見つからないようでした。
そして、「助けて、助けて」という声が聴こえてきました。
そこで夢は覚めました。
夢から覚める瞬間、その場所を特定する地図が見えました。
私は実際の地図を取り出して、その場所を探してみました。
するとその場所と思われるところを見つけました。
(まさか)と思いながら、地図を片手に行って見ると、
夢の中で見た景色とそっくりな場所でした。
木々の姿、枯葉が落ちている地面など、とてもリアルに同じでした。
大変驚きながらも、親子がいたほとりに近づいて行ってみました。
確かに、その親子2人はおりました。
ますます驚きながらも、マリア様と観音菩薩様から言われた言葉を思い出し、
賛美歌を歌い始めました。
すると小さな天使たちが大勢空から降りて来たではありませんか。
麦わら帽子の女の子はとても喜んで、大勢の天使たちと手をつないで輪になって、
嬉しそうに天に昇って行かれました。
残ったお母さんにも天使たちは手を差し伸べました。
しかしお母さんは首を横に振りながら断り続けていました。
「私には天国へ行く資格がない」と言っているかのようでした。
そのとき、この親子はこの池で無理心中したのだと気づきました。
私は懸命に歌い続けました。
歌うのをやめたら、このお母さんは取り残されると感じたからです。
やがて両手で顔を覆っていたお母さんは、
左手をそっと天使たちのほうへ差し出しました。
天使は喜んでお母さんの手をそっと握りしめました。
その瞬間、ふわっとお母さんの身体が浮いて空へ上昇し始めました。
涙をぼろぼろ流しながらお母さんはただ号泣していました。
そして女の子と共に天に還って行かれたのでした。
私は空を見詰めながら(良かった、良かった)と思いつつも、
これは妄想の世界なのかと自問自答していました。
それからしばらくたったある日、
私の元にある祝詞が送られてきたのでした。