緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

特別支援学校でのがん教育:もう、最高!!

2022年12月18日 | 教育
大学病院から比較的すぐのところにある都立の特別支援学校。
中学生、高校生にがん教育の授業をしてきました。

20余名ほどの生徒さん
ある生徒さんは発語が難しく、ある生徒さんは車椅子で、ある生徒さんは理解が難しい・・
と、すべての生徒さんに多様な特性がありました。

35分でがんの発生、原因、予防や検診、治療、ケア、社会的問題までのリクエストがありました。
1回では無理だと判断し・・
事前学習、事後学習について先生方と打ち合わせを何度も行いました。




事前学習では、正常な細胞と異常な細胞について、生活習慣でのお酒とたばこ、偏った食事や睡眠について、学んでくれていました。



本番では、クイズを5問準備しました。
また、がんが1㎝になるまで10~20年、そこから2㎝になるまで1~2年(癌種によってはこの限りではありません)という大きさを直径1㎝と2㎝の紙を切ったものを準備して頂きました。
それを使った検診の話(1㎝では症状はないことが多いので、なんともなくても検診受けてねというメッセージ)、それでも2人に1人ががんになる時代です、治療のことは過去に院内で小学生達に呼び込み型がん教育を行っていた時の動画を使って、子供たち目線で理解してもらうようにしました。

腹腔鏡やダビンチの機械、手術が安全に実施できる工夫の数々、外来化学療法室のリクライニング椅子やTVがある様子、放射線治療の機械と痛くない治療のこと。
もう目がキラキラ・・

それを支えるケアとしての緩和ケア、社会で皆にも手伝ってほしいいことなどなど・・




この講義の後、高校生たちは、事後学習として自分達でも出来ることについて、何と!ロールプレイを12名で行っているところを見学させていただきました。

実は、初めて私は学校の中に入らせていただきました。
職員室が巨大・・
何と、100名の教員(ケア担当の方も含む)の職員室!

講堂の中高合同授業では1~3名の生徒さんに1名の教員がつき、事後学習では4名一グループに2名の先生、授業責任者の先生1名、見学の先生方も。

兎に角、手厚い人の配置です。



また、使っている機器にびっくり。
しゃべれない生徒さんは普通にアイパットに言葉を入力し、機械が読み上げてくれます。
アイパットに入力できない生徒さんも1名いらっしゃったのですが、額に電極を付け、そこからの信号を機械が読み取り、言語化し、機械が代わってしゃべるのです!!
試作段階の機械を見たことがありましたが、ここまで綺麗な日本語でしゃべる機械とは、どのように電極から信号が送られているのか・・

語れない人の内面をどう知るか・・
医療の大きな命題だったのに、支援学校の中では当たり前のように会話が出来ていました。
以前、特別学校の教員をしている高校時代の同級生に、障害を持ったお子さんを普通学校に入れたいと希望される親御さんがいらっしゃるけれど、大きな予算が投入された特別学校の充実を知るともったいないと感じるのは自分だけではないんだよと教えてもらったことがありました。
言わんとしたことが、まさに目の前で展開していました。




こうした機械のことだけではありません。

兎に角、先生が素晴らしい!

障害がある生徒さんに投げかけをして反応があるまでじっと待つ姿・・
違う方向にいってしまいそうなときに修正しようとするのではなくそっと方向を感じさせて、無理なく見て欲しい方向に注意を向けさせ、気づくことを大切にする姿・・
時に予想外の発言があると、面白いねえと反応し、こんな風でもよいかなと提案してみる姿・・

待てない私にとって、教えることの本質をもう一度振り返られて頂いた時間でした。




急いで病院に戻り、午後の外来が終わって部屋に戻ると、がん教育を担当してくださった先生からメールが・・

生徒さん達は、本当に楽しかったようで、終わった後も、がん教育の講義の話でもちきりだったとのこと。





学校の先生方と一緒に授業を作り、生徒さん達と一緒になってがんのことを考え、一杯笑顔が合って、一つのチームとなって過ごした一日になりました。

北特別支援学校の先生方、生徒さん達、本当にありがとうございました!!

(写真は、事後学習のロールプレイの目的や方法を先生が説明している様子で、掲載許可を頂いているものです。大学講座のHPにも近々記事と共にアップする予定です)

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