
朝起きると誰もいなかった。
しばらくして嫁さんが帰ってくるなり聞いた。
『帰ってきてないようだけど』
「学校からまだ来ていないって連絡があった」
『部活行ったんやろ?』
「それが、9時40分頃行って、10時半にまだ来ていないからって」
嫁さんが探しに行ったらしいが、どこにもいないらしい。
犬の散歩から帰ってきた下の娘も「お姉ちゃんいなかったよ」

交通事故かもしれない。友人の警察官に聞いてもらう。
「付近で事故はないって。どこいったんやろか?」
『携帯は?』
「部活には持って行かんと思う。服もジャージだし。朝はニコニコして出かけたけど」
『ちょっと見てくる』
通学路はいたって単純である。大きな通りと裏通りも探したが自転車も破片らしきものもない。
車から携帯にかけてみたが〔現在電話にでることができません〕だった。
まぁ、ウザイ親父からの電話には良く使う手ではあるが・・・
家に戻ると嫁さんがパニクっている。
「車に押し込まれて連れて行かれたんじゃないやろうね。家出やろうか?」
部屋は相変わらず汚いが、家出の形跡はない。
(ジャージで物も持たんで家出するほどアホじゃないはず)
携帯に再度かけると今度は〔電源が入っていないか電波の・・・〕
電波の届かない場所な訳がない。電源が切られたのだ。
『ちょっとおかしい、携帯の電源が切られた』
「携帯は持っていかないと思うけど」
『でも携帯がどこにも見当たらない、1回は通じて次は電源切るなんて何かおかしい』

嫁さんに途中にいた道路工事中の人に聞いてくるように言って家で待つ。
「手がかりなし。警察に言うなら早いほうが・・・」帰ってきた嫁さんが言う。
学校からはまだ来ていないとの連絡が入る。

複数に拉致されたらどうだろう。友達とどこか行くのならわざわざ部活の格好はしない。
家を出て3時間、届けるなら早いほうがいいだろう。

事情を話している間に、女の子なので心配したのか複数の警察官が聞きにくる。
髪型身長、メガネの色まではわかるが、体重やら足のサイズやらは普通の親父は知らない。
聴取した人は歯医者やホクロの位置まで聞いてくる。(死体確認のためか?)
別の人はPC使うならPCを調べなきゃ、と言う。(あくまで家出を想定か?)
あのな、ウチの子は家出するならもっと計画的にするし、自殺ならわざわざ外でジャージ姿ではしない。
女性の警察官は事件を想定しているようで、強く押してくれたのか、雰囲気は事件の可能性を視野に入れた通常配備になったようだ。
(まぁ、うろうろしている可能性がある以上、緊急配備は無理だろう)
その後もいろいろ娘の特徴を聞かれている最中に電話が鳴った。
「帰ってきた!」『帰ってきた?どこにおった?』
「まだ聞いてない。普通に帰ってきた。」
警察官が嫁さんに確認する。配備が解かれた。
まぁ、バツが悪い状況だったが、それよりも安堵が大きかった。
『ご迷惑をおかけしました。すみませんでした』
「安心しました。あまり刺激をしないように・・・」と警察官の親分。

私は『警察の人が一生懸命探してくれてた。迷惑かけたんだから自分が謝らんといけん』と娘を警察署に連れて行き、一緒に謝ってきた。
女性の警察官に「どうしてたの?」と聞かれていたが、何を話したのかは知らん。
無事帰ったことが1番で、何をしていたかは大した意味はない。
ちなみに、携帯はタンスの引出しの中で電池切れだった。【人騒がせな^^;】
