「私は夜昼、祈りの中であなたのことを絶えず思い起こし、先祖がしてきたように、私もきよい良心をもって仕えている神に感謝しています。」(Ⅱテモテ1:3新改訳)
本書はパウロの最終書簡として新約聖書に入れられたものである。ローマで入獄し、裁判を受けたパウロは、いったん釈放され、長年の願いだったスペインまで行ったようだ。スペインは当時、地の果てと思われていた。▼ところがキリスト教をとりまく環境は次第に悪くなり、彼は再び捕らえられ、ローマで獄につながれ、裁判を受けて死刑が確定した。その判決が出る前、愛弟子(まなでし)テモテに書き送ったのがこの書だと思われる。もちろん以上は言い伝えで真相は誰にもわからず、神のみがご存じだ。▼殉教の日が日一日と迫るなか、使徒の心を占めていたのは、生涯をかけて自分に従って来てくれたテモテのことであった。エペソに残って、教会を指導している彼に一目会いたい、すなおでやさしいテモテは、たぶん涙とともに恩師(おんし)パウロのことを心配し、会いたいと願っているのだろう。それは二人の心に宿る共通の思いであった。