映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『マ・レイニーのブラックボトム』 チャドウィック・ボーズマン 正当な対応を受けるために戦った伝説の女性ブルース歌手 

2021-01-27 | 映画感想
原題 Ma Rainey's Black Bottom
製作年 2020年
製作国 アメリカ
上映時間 94分

One! Two! You know what to do!

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目次
  1. 「ブルースは私たち黒人の音楽だ」
  2. 元は戯曲
  3. 舞台はほとんど録音スタジオのみ
  4. ヴィオラ・デイビス
  5. チャドウィック・ボーズマン
  6. グリン・ターマン



「ブルースは私たち黒人の音楽だ」

「ブルースは私たち黒人の音楽だ」的なセリフは映画にはよく出てきてまして
あぁそうなんですね、と知識としてインプットはしてましたけど、
この映画で初めて刺さりました。。
ブルースという音楽!
命であり、血。

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アフリカ大陸で捕まえられて(人間がされることでもすることでもない)
鎖で繋がれて船に積まれて(人間がされることでもすることでもない)
船の中で病気にかかったら生きたまま海に捨てられ(人間がされることでもすることでもない)
アメリカについたら奴隷として売られ
奴隷として所有され(人間がされることでもすることでもない)
反抗すれば(しなくても)簡単に殺されしてまう。(人間がされることでもすることでもない)
(簡単に殺されてしまうってのは現代でも起きている)
そんな苦しみ悲しみから生まれた、ブルース。
知識としては知っていたし
この映画でもその辺りの描写を露出させてるわけじゃないんだけど
名優たちの何百年の苦難の歴史を背負った名演によって
初めて刺さりました。。
ブルースのこと全てわかったわけじゃ全然ないし
「泣いた〜」「感動した〜」と消費してしまったら
この映画のメッセージと全く反対のことになってしまう。

でも、でも、とにかく、刺さったんよ、マの歌が。
そう簡単には抜けない。

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元は戯曲

戯曲なんですね、元の話は。
映画自体もかなり戯曲的。
もっと映画らしい話の流れや場面展開にはできたはずですけど、そうしなかったのでしょう。
ブルース同様、黒人俳優たちによって舞台劇として語り継いできたものへの敬意、出すかね。
しかも、舞台ですから映画的な〝逃げ〟がないので
俳優ひとりひとりの力がものすごく伝わります。
それはつまり黒人ひとりひとりの力を見せることになります。

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舞台はほとんど録音スタジオのみ

当時ですから、全部同時録音。チャンネルなんてないわけです。
その時の空気閉じ込め感がハンパない。
これを見てからマ・レイニーの曲を聴くと、この録音スタジオの様子が思い浮かんで、2021年の日本と1920年代のアメリカがつながる。
後ろに男たちを従えながらマイクの前で歌うマの姿が、100年後の日本人に見えてくる。
こんなにも奇跡的なことだったのか、とこの映画を見て初めて感じました。





ヴィオラ・デイビス



素晴らしい存在感と繊細な表情。
ほとんど重戦車のような存在感であまりを威圧し続けるんだけど
彼女にはそうしなきゃいけない信念があったんわけですよね。
北部とは言え、アメリカで、黒人の、女性歌手の地位なんて、ほっといたら誰も掬い上げてくれない。
マは自分の価値に見あった対応を求めていただけ。
スタジオが白人歌手にはもっと手厚い対応をしているのをマは知っている。
総合格闘技のような死闘が繰り広げられながらのレコーディング。






チャドウィック・ボーズマン



泣けて泣けて。。
「俺がとれぼど白人に怯えてるか教えてやろう。俺白人に〝イエッサー〟と言いつつタイミングを見計らってる。」
おもしろいですね、この人の演技は。
野心家でだけど臆病で、だからこそ尖っていて。
おぞましい過去を背負わされていて。
破綻してもおかしくない複雑なキャラクターなのに、スターオーラが強い重力となって全部を一つの人物として集約させられる。
この人物だけど何万人分の人生を描けているのだ、と。。
もちろん彼を失ったのは悲しいし、拭えない喪失だけど、黒人若手スターとしてこれだけのことを成し遂げたってことは、あと300年くらい語り継がれるのです。




グリン・ターマン


グリン・ターマンも良かったですね。。
ピアニスト。
温かい人物像。
いい人なんだけど、悪い言い方すると無害な黒人。
南部を舞台にした古い映画に出てくるような、逞しく優しい黒人像。
力も強いし知的でもあるんだけど白人に対しては一切何の反抗もできない。
したら殺されるからね。
油断できる秒なんてない人生。
逞しく優しくないと南部アメリカでは生きられなかったんだろうし、映画の中でもそう。

僕なんか子供の頃からこういう映画を見てきたので
黒人像っていうとこういう感じなんですよね。。
子供の頃は何の疑問に思ってなかったというのが恐ろしい。
学校で奴隷制というのを学んでも
「へえ奴隷制があったからかぁ」くらいのものだった。。

だけどこの映画のように
黒人に自由が増えて
チャドウィック・ボーズマン演じるトランペッターのような
野望のある無鉄砲な黒人の若者と対比してみると
この人物の奥行きが見えてきますね。
ヤンチャに生きられる若者を嬉しく見れる気持ちもあっただろうけど、
自分がそう生きられない悔しさも、彼を見るたびに感じたかもしれないし。

そういう世代間の対立が悲しい結末を引き起こしてしまいますね。。。

そしてさらに残酷なラスト。。。

最後にレコーディングする人たちは誰ですか。。。


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