高い青空に、いわし雲がきれいに浮いています。
今日は、ミノタンの幼稚園では貸し切りバスで遠足に行く日です。ミノタンはママとお弁当を持って幼稚園にきました。しばらくするとコウタンもママと一緒に幼稚園にきました。ミノタンは大きな声で、
「コウタンお早う、コウタンのママお早う」
と言ってコウタンのところへ走って行きました。コウタンもミノタンに走りよって、
「ミノタンお早う」
と言いました。
「ミノタンお早う。好いお天気でよかったわね」
とコウタンのママもにこにこして、ミノタンの頭をなでてくれました。少し離れたところでママたちが挨拶を交わしています。
ほかのお友達もママと一緒に幼稚園に集まってきました。
先生が、表へ出てきて、大きな声で、
「みなさん、お早うございます。いつものようにリス組は緑色のハタのところへ、ウサギ組は黄色のハタのところへ集まってください。これから園長先生のお話があります」
と言いました。幼稚園のお友達は、おしゃべりをしながらハタの前に並びました。
「よい子の皆さんお早うございます」
と園長先生が言うと、ミノタンたち園児も大きな声で
「園長先生、お早うございます」
と挨拶をかえしました。園長先生はにこにこして、
「今日はとっても好いお天気になってよかったですね。これからバスに乗って遠足に行きます。皆さんは元気ですか」
「はーい、元気でーす」
「それでは、先生たちのお話を聞いてバスに乗りましょう」
ミノタンたちは、担任の先生の後について順序よくバスに乗り込みました。みんながバスに乗ると、バスは静かに走り出しました。園児たちは、お友達とお話をしたり外の景色を見ていました。
しばらくすると、ミノタンのおじいちゃんのいる田舎みたいなところに着きました。
「さあ、皆さん目的地に着きましたよ。バスの中でお話しした注意を守って元気よく遊びましょう」
と先生が言いました。ミノタンたちは仲のよいお友達同士でおしゃべりをしながらバスを降り、広場の方へ行きました。
広場でみんなで歌を歌ったり、鬼ごっこをしたり、ボールで遊んだりしているうちに、お昼のお弁当の時間になりました。
園児たちは先生の周りに座って、ママたちとお弁当を食べました。高くすんだ青空の下でお弁当を食べると、幼稚園で食べるお弁当よりもおいしく感じ、残すことなくみんな食べてしまいました。
お弁当を食べ終わると、ミノタンたちは、木登りを始めました。
この広場には、子どもたちが木登りができるように木の回りにはしごがかけてありました。しばらく木の上で歌を歌ったりしていましたが、ミノタンとコウタンは、きれいなオレンジ色の実が沢山ついている木を見つけました。
「わあー、きれいな実が沢山ついているね、コウタン」
「うん、おいしそうな実だね。ミノタン」
コウタンもこの実が気になってきました。周りを見ると、たくさん実をつけて地面近くまで下がっている枝を見つけました。その枝のところへ行くと、近くにいたおじさんが、
「これは、柿というんだよ。でもまだまだ渋いよ。もっと赤くなると柔らかくなっておいしくなるよ」
と教えてくれました。ミノタンとコウタンは、オレンジ色の実を一つとって、ハンカチで皮を拭き、そーっと囁ってみました。
二人とも柿の実を噛ったとたんに、
「ウッ」
と言って、思わずつばを吐いてしまいました。ミノタンとコウタンは、おじさんが言った〝渋い〟ということがわかりました。
二人は、
「早く、赤く柔らかくなった柿の実を食べたいね」
と話し合いました。
お日さまはミノタンたちを優しく見下ろしながら暖かい日差しを投げかけていました。
柿の実は、未熟なうちは渋く鳥たちに食べられないように身を守っているのです。そして実の中の種子が熟すと、果肉を甘くして鳥たちが喜んで食べるようにします。そして一緒に食べた種子を遠くへ運んでもらって、そこで芽を出して大きくなり、たくさんの実を付けてもらう作戦を立てているのです。こうして自分たちの子孫(遺伝子)を残すのですね。
筆者は、パリで完熟した柿を食べたのを思い出しました。実の天辺にスプーンで適当な大きさの穴を開け、スプーンで柔らかい果肉をすくい取って食べたものでした。パリで柿を食べることが出たことに感動しましたし、スプーンで皮を破らないようにすくって食べたことにも感動しました。旅に出るとこんな些細なことにも感動するものですね