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パリで数日を過ごしてから夜行寝台に乗って先ずはスペインのマドリードへ向かった。列車は静かに発車した。しばらくすると車掌がパスポートを集めに来た。翌日の朝には戻すというので渡した。寝台車は洗面所とトイレがついていて非常に快適であった。朝までぐっすり寝てしまった 起きて身だしなみを整えていると車掌が食堂車で朝食を取ることが出来ると知らせに来た。食堂は日本の食堂車よりもゆったりしていて簡単な食事もそれなりの美味しかった。
個室に戻り窓越しに外を見ていると田園風景が続いていた。日本の新幹線に乗って京都へ行こうとアメリカ人の友人が車窓から外を見ていてこんなことを言ったのを思い出した。
「東京は大きな都市だと聞いていたが、どこまで続いているんだい」
というのは新横浜駅を過ぎてもまだ東京からの家並みが続いていたから、まだ東京だと思ったらしい。日本では都市と都市との切れ目に田園風景が無いのでそう思ったようである。
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また、窓の外には農地があったり牧場があったり風景が少しずつ変化していた猟犬を連れ鉄砲を持った男たちが20人以上集まって列車を見ていた。馬に乗っていれば列車強盗かと映画のシーンを想像してしまった。いまの列車の速度はウマでは到底追いつけないのでそんなはずもなかったのだが。
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やがて断崖絶壁が見えてきた。しばらくすると海のように広い水面が現れた。地図を見るとここら辺はボルドーというところのようだ。若しかしたらワイン生産で有名なところかと想像した。
スペインに入ったらしい。サロンのようなところへ行ってみると60歳代と思われる女性が数人いて話をしていた。彼女らは私を見るとどこから来たのかと聞くのでジャパンから来てマドリードへ行く途中だというと、中の1人が若い頃にオリンピックに出場したので日本へ行ったことがあると言って「ハポン、キョウト、シンカンセン、アサクサ」等と言って話しかけてきた。
40年以上も前に選手として日本へ行ったことがあったらしい。身振り手振りあるいは絵を描いて日本の宣伝をしたがどれくらい通じたのだろうか。
彼女らによるとこの列車には託児所があるというので個室へ戻る前に見に行った。託児所は1輌全部を使って半分が子供たちの遊び場、半分は保母の休憩室と哺乳室や調理室などに使われていた。保母さんは3人乗っていると言うことだった。
国が変わるとサービスの中身も変わるので面白かった。
(ここからの写真はスライドになっていたのですが友人に貸したところその友人が突然病を得て亡くなってしまい手元にありません残念ですが想像して下さい。合掌。)
そして夕方マドリード駅に着いた。予約していたホテルはすこしはなれているのでタクシーでいった方がよいと中央駅のインフォメーションの女性が言うのでタクシーで行くことにした。
ホテルはかなり大きいので驚いてしまった。ボーイが荷物を持って部屋に案内してくれた。そこでまたびっくりしてしまった。客室はスウィートというのだろうか、寝室が3部屋もあり会議室のようなリビングルーム、そして広いキッチンとダイニングルームもついていた。
広い浴室に大きなバスタブがあり湯を入れようとしたら湯が出なかった。早速受付に連絡したら直ぐにサービスマンが飛んできて修理をしてくれた。
夕食を取るために町中に出た。ふとホテルを見ると日の丸が緩やかに翻っていた。何ともうれしくなってしまった。食事の後ホテルに戻って他に日本人が泊まっているのかと聞くと私だけだというので驚いた。受付の人の話では遠い日本からはるばるやってきて下さったので国旗を出させて貰ったということであった。こういうサービスを日本のホテルでもやっているのだろうか。スイスでも同じ事があったのを思いだした。
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夕食は日本の海鮮チラシの具にパンを別にしたようなものを出してくれた。魚やエビやカニアワビ?などが大きな皿にたくさんもられていた。そしてレモンを添えたグラスに水が入っていたので飲もうとしたら、隣席の紳士がそれは飲むものでは無く海の幸で臭いのついた手先を洗うのだと教えてくれた。そして手元のノンギャスの水ボトルを1本くれた。その仕草が何とも優しい感じであった。外国へきてこんな親切にあったので心まで豊かになった。私も日本へ来た外国人が困っていたら親切にしてあげようと思った。
マドリードはたくさん見たいところがあったので明日から3日ほどお上りさんになることにしてその夜はゆっくり休むことにした。
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