撮影がはじまった。
これ以上ないくらいに、はしゃいでいる莉沙を横目で見ながら、久しぶりに勇一からのLINEを見ていた。
『忙しくて、なかなか連絡出来なくてごめんね。旅行へ行く件、話し合わないとね。いつがいい?』
…旅行の件は、勇一さん発信なのに、なんだか、私が旅行をおねだりしているみたいだ。
『いつでもいいよ。それじゃ、明日はどう?』
『明日は、用事が入ってるんだ…。ごめん。』
…いつも忙しくしてるのは彼なんだし、私はいつでもいいんだから、彼の都合のいい日にしてくれればいいのに…。
『それじゃ、また、都合のいい日を提案させて!』
…忙しい…と言われると、何も言えない。
旅行に行く…という気分も色褪せてしまう。
「一緒に食事でもどう?」
神田は、満面の笑みで話し掛ける。
「え?食事?」
「撮影も無事に終わったし、お礼に。」
「私は、付き添ってるだけで何もしてないし…」
神田の向こう側で、莉沙が『先輩は来ないで…』という顔をしている気がした。
「久しぶりに会えたし、積もる話しもしたいし…」
神田は、ほぼ強引に電話をして、飲食店に予約を入れた。
…まぁ、いいか。莉沙にばかりいい思いさせるのも悔しいし…。