人類が初めて月面を歩いたのは、1969年7月21日の事。アメリカの宇宙船「アポロ11号」の搭乗員が、其の歴史的な快挙を成し遂げたのだが、月面への第一歩を記した船長が発した「此れは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍で在る。」という言葉は、余りにも有名。
人類が月面を歩いてから43年。「21世紀初めには、多くの人類が月で生活している。」なんていう“当時の未来予想”からすれば、「思った程、技術力は上がってないのだなあ。」という感も在る。
「此れは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍で在る。」という言葉を発したアポロ11号の船長ニール・アルデン・アームストロング氏が8月25日、心臓手術後の合併症にて82歳で亡くなった。其の事に絡め、28日付けの東京新聞(朝刊)には、「月の啓示?人生一変 ~ムーンウオーカーたち 其の後~」という記事が載っていた。
1969年から1972年のミッションで、月面を歩いたアメリカの宇宙飛行士はアポロ11号、12号、14~17号の乗組員各2人、即ち全12人。存命しているのは8人で、年齢は70代後半~80代前半。其の多くがNASAを退いた後、企業経営等、航空宇宙の経験を生かした人生を過ごす一方で、“数奇な道”を辿った人物も少なくないとか。
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・ エドガー・ミッチェル氏(アポロ14号乗務員)
月からの帰路、真っ暗な宇宙に浮かぶ地球を見て「神の意思」を感じたと言い、1973年に超能力現象の研究所を設立。「科学的」とは言い難い、霊媒や超常現象等の研究に取り組んでいる。2008年にはイギリスのラジオ番組でUFOの存在を主張し、「アメリカ政府は、此の事実を60年に亘って隠蔽している。」等と発言し、注目を集めた。
・ ジェームズ・アーウィン氏(アポロ15号乗務員)
月面での体験から本格的に信仰の道に入り、退官後はキリスト教の牧師に転身。度々トルコを訪れ、「ノアの方舟」の残骸を捜す活動も行う。人生の後半を、布教活動に捧げた。
・ チャールズ・デューク氏(アポロ16号乗務員)
アポロ16号での飛行後、キリスト教徒となる。「月に居たのは短期間だったが、神と歩く道は永遠だ。」等と述べている。
・ アラン・ビーン氏(アポロ12号乗務員)
「趣味だった絵画制作に時間を使いたい。」との理由から、1981年にNASAを退職し、画家となった。宇宙飛行士として経験した月面の風景を、芸術の形で表現している。
・ エドウィン・オルドリン氏(アポロ11号乗務員)
アームストロング船長に続いて月面に降り立った彼は、現在、全米宇宙協会の幹部だが、帰還後15年間に亘ってアルコール依存症や鬱病に悩まされた事を認めている。
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日本人初の宇宙飛行士となった秋山豊寛氏は、当時TBSの社員だったが、帰還した5年後に退社。現在は、農業に従事している。「宇宙飛行士になった事で、次第に社内での居場所が無くなって行った。」という理由も在る様だが、「(宇宙から見た)地球の美しさに圧倒され、人間の営みのちっぽけさを痛感した。」というのも、人生の方向転換を図った大きな理由とか。
高層ビルの展望室から地面を眺めた時、歩き回る人々の余りの小さを思い知らされる。高層ビルの上からですら、そんなに小さく感じてしまうのだから、地球規模、否、宇宙規模で言えば、微細も微細といった感じだろう。そんな存在なのに、私利私欲を充足させんが為、不毛な戦いを太古の昔から繰り広げているのだから、本当に馬鹿馬鹿しい。
宇宙飛行士として宇宙から地球を眺めた経験は勿論無いが、「実際に眼前にしたら、人生観が一変するだろうなあ。」と思う。人間のちっぽけさを痛感し、人間以外の大きな存在を意識する様になる。そんな事が在っても、おかしくはないだろう。