ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「プリズム」

2013年06月30日 | 書籍関連

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ふだん私たちが見ている光は色なんて見えないんだけど、プリズムを通すと、屈折率の違いから、のように様々な色に分かれます。人間の性格も、光のようなものかもしれないと思う時があります。

 

世田谷に古い洋館構える資産家の岩本家に、梅田聡子(うめだ さとこ)は足を踏み入れた。美しい夫人から依頼されたのは、小学校4年生になる息子・修一(しゅういち)の家庭教師。

 

修一と打ち解け、順調に仕事を続けていた聡子だが、或る日、屋敷の庭を散策中に、離れに住んでいるという謎の青年が現れる。青年は時に攻撃的で荒々しい言葉を吐き、聡子に挑み掛かって来たかと思えば、数日後の再会では、陽気で人当たりが良く、聡子を口説いてからかったり、かと思うと、知的で紳士とした穏やかな態度で聡子との会話を楽しんだり・・・。会うに変化する青年の態度に困惑するが、屋敷の人間は皆、其の青年に付いては口を硬く閉ざすのであった。

 

次第に打ち解けていく青年と聡子。軈て、彼に隠された哀しい秘密を知った聡子は、何時しか彼に惹かれ始めている自分に気付き、結ばれざる運命に翻弄される。

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百田尚樹氏の小説「プリズム」は「解離性同一性障害」、嘗ては「多重人格障害」と呼ばれた“病”をテーマにしている。自分が此の解離性同一性障害という存在を知ったのは、「3人の女性に対する連続強姦及び強盗容疑で逮捕されるも、其の内部に合計23人の人格を持つ『多重人格障害』として無罪となったビリー・ミリガン。」に関する本を読んでだった。

 

其の後、ビリー・ミリガンの内部で人格交代する瞬間の映像等を見たりもしたが、“個人的には”「本当なのかなあ?」という疑いの思いを持ち続けている。「罪を逃れるに、多重人格を装っているのではないか?」という気がしてならないからだ。

 

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驚くことではありません。報告書を見ていると、女性の中に男性の人格がいることも珍しくないのです。その逆もあります。彼、彼女たちは、自分の肉体的な矛盾は感じていないようです。珍しい例では動物の人格を持っている患者もいます。非常に稀有な例ですが、無機物-時計とか電話といった人格を持っている患者の報告もあります。一つ言っておきますが-交代人格は人間ではないということを忘れないでください。。「人間じゃないんですか?」。「交代人格は一見、人間と同じに見えますが、実は人間の一部にすぎません。交代人格が集まって一人の人間を構成しているのです。アメリカ解離性同一性障害の権威コリン・ロス教授は『交代人格は一種の装置』と言っています。」。

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「1人の人間の中に老若男女を問わない、幾つもの人格が存在するケースも在る。」というのは不思議だ。「動物の人格を有するケースも在る。」というのも不思議だが、「昔で言えば、『狐憑き』なんかがそうなんだろうなあ。」とイメージは湧く。最も不思議で、尚且つ理解出来ないのは、「無機物-時計とか電話とかいった人格を有するケース。」だ。時計や電話という人格とは、一体どの様な物なのだろうか?

 

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「大学時代に心理学の授業で習ったんだけど、人は欲求不満がたまってうまく適応できなくなると、防衛機制というのが働くらしい。」。「何それ?」。「防衛機制の中には、抑圧とか退行とかいろいろあるんだけど、面白いのは反動形成というやつでね。」。「あ、なんか聞いたことがある。何だっけ、反動形成って。」。抑圧した気持ちが現れないように、正反対の行動を取ったりすることだよ。たとえば、本当はすごくケチなのに、それを認めたくなくて気前よく人に奢ったりだとか、本当は冷酷な性格だけど、それを無意識に否定して優しい人になるとか。弱い自分を認めたくなくて、喧嘩ばかりするとか。。「わかる気がする。」。でも、その反動形成がずっと表に出ていたら、それが本当の性格ということにならないのかなという疑問が湧いた記憶がある。。「なるほど、冷酷な人でも一生、反動形成が続けば、その人はどこから見ても優しい人ね。」。

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上記した様に、自分は「解離性同一性障害」に付いて、懐疑的な思いを持っている。でも、「抑圧した気持ちが現れない様に、正反対の行動を取ったりする。→其の反動形成がずっと表に出ていたら、其れが本当の性格という事になるのではないか?」という流れは理解出来るし、其れこそが「多重人格」というので在れば、「『100%存在しない。』と、完全否定は出来ないのかも・・・。」という思いになったりもする。

 

心理学に関する話が盛り込まれており、そういう意味では興味深い。、“作品の完成度”という点で言えば、「そんなに高くは無い。」と感じる。目新しさが無い内容だし、「~という展開に持って行きたいからこそ、著者が登場人物達に、無理無理に不自然な言動をさせている。」と感じる所が幾つか在ったから。

 

総合評価は、星2.5個


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