「ロマンス」という用語を見聞すると、ついつい岩崎宏美さんのヒット曲「ロマンス」(動画)を思い出してしまうのだが・・・。
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舞台は昭和8年の日本。子爵家に生まれた麻倉清彬(あさくら・きよあき)は、職に就く事も無く暇を持て余していた。そんな時友人の伯爵家の長男・多岐川嘉人(たきがわ・よしひと)に殺人の疑いが掛けられる。殺人現場に呼ばれた麻倉は、機転を利かせて多岐川を解放させるが、其れを切っ掛けに麻倉は大きな事件に巻き込まれて行く。 退廃的な世相の中で一般庶民の憤りは、自堕落な生活を送る日本の貴族階級達に向けられ・・・。 ************************************* 柳広司氏の作品を読むのは「ジョーカー・ゲーム」、「ダブル・ジョーカー」、「キング&クイーン」、「最初の哲学者」に次いで、今回の「ロマンス」が6作目。「キング&クイーン」及び「最初の哲学者」は自分の琴線に触れる物が無かったのだけれど、「ジョーカー・ゲーム」及び「ダブル・ジョーカー」、そして「ロマンス」はぐっと其の世界観に引き込まれてしまった。歴史が好きな自分は、特に「昭和」という時代に興味が在る。だから昭和初期を舞台にした3作品は、抑テーストが合うのだろう。行間に漂う「時代の気怠さ」、妙に心地良かったりもするのだ。 ************************************* 陛下のため。国民のため。新兵のため。この国のため。軍の未来のため。彼らは自分以外の何者かの“ために”ことを起こさなければならない、と言う。だが、いったい何を?立ち上がる。決起する。取り除く。襲撃する。皆殺しにする。胸が悪くなった。会話を記録された者たちは皆、まるで動機が純粋でさえあればどんなことをしても許される、と固く信じているようだ。 *************************************
ノルウェー連続テロ事件で逮捕された男性は、極右思想の持ち主とか。彼がテロ行為に走った動機には、「移民排斥」や「ノルウェー人至上主義」が在ったとも言われている。以前から何度も書いている様に、「個々人がどんな主義や思想を持とうとも、明々白々な違法行為で無く、且つ他者に迷惑を掛けなければ全くの自由。」と自分は思っている。しかし「自分の主義や思想こそが唯一無二的に正しく、其れ等と少しでも違う主義や思想は徹底的に“消し去らなければならない”。」というのは、絶対に受け容れられない。所謂「極右」とか「極左」と呼ばれる人達の中には、此の手の非常に狭量で近視眼的な人が目立ち、そういった人達は“概して”「○○の為にはXXで在るべきだ!」と叫ぶ物で在る。
全てを読み終えて先ず思ったのは、「『ロマンス』というのはストーリーに合っている様で、良く判らないタイトルでも在るなあ。」という事。「儚い思い」を「ロマンス」というタイトルに秘めたのだと思うのだが、もっとフィットするタイトルが在った様にも感じる。真犯人の意外性等、ストーリーがとても良かっただけに、タイトルが残念。
総合評価は星4つ。