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中学1年生の八木沢順は、刑事で在る父・道雄が離婚した為、東京の下町に引っ越す事となった。開発が進む其の町で、優しい家政婦のハナとの3人の生活に慣れた頃、奇妙な噂が流れ込む。近くの家で人殺しが在ったと言うのだ。
そんな噂と共に、バラバラ殺人事件が実際に発生。町が騒然とする中、順の下に事件の真犯人を知らせる手紙が届く。刑事の子・順は、友人の慎吾と共に捜査に乗り出すが・・・。
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9月に刊行された宮部みゆきさんの小説「刑事の子」 は、1990年に刊行された小説「東京(ウォーター・フロント)殺人暮色」を改題した物とか。記述面で「古さ」を感じたのは、其の為なのだろう。
宮部さんの作品は此れ迄に「模倣犯」、「英雄の書」、そして「小暮写眞館」の3作品しか読んでいないが、何れも自分の総合評価は高くない。文壇では「大御所」と言っても良い立場に在り、超人気作家の1人でも在る彼女の作品に対して「ああだこうだ。」言うのは僭越なのだけれど、自分にとってはどうにも肌合いが宜しくない作家なのだ。
其の主たる理由は、くどくどしさを感じる文体に在る。ストーリー的には面白いのだけれど、くどくどしい文体が、スイスイと読ませる事を妨げてしまう。今回の「刑事の子」もそういった傾向が在り、尚且つ「デビューから3年後に刊行された作品」という事も在ってか、記述に(今と比べると)稚拙さを感じたりも。
古い映画が好きな人間ならば、思わずニヤッとしてしまうで在ろう程、名作のタイトルが幾つか登場する。宮部さんは、相当な映画好きなのだろう。「去年マリエンバートで」の使われ方なんぞは、実に上手いと思った。