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「隠蔽捜査」で御馴染みの竜崎伸也(りゅうざき しんや)が大森署を去った後、颯爽と現れた新署長・藍本小百合(あいもと さゆり)が、凶悪事件を解決する。
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今野敏氏は数多くの人気作品を生み出しているが、「『隠蔽捜査』シリーズ」もそんな1つ。此れ迄の主人公は竜崎伸也で、「キャリア官僚で階級が警視長の彼は、私利私欲と無縁で、『国民の為に働く。』という信念の下、原理原則を忠実に守るタイプの人間。エリート街道驀地で来たが、息子・邦彦(くにひこ)が『ドラッグ吸引→自首→保護観察処分』となった事で、“左遷”されてしまう。階級は変わらないものの、左遷という事になれば、普通は自暴自棄になってしまう物だが、彼は『今の立場で国民の為に出来る事を、最大限行う。』という姿勢を変える事無く、事件と向き合って行く。」という設定。相手が誰で在ろうとも、自身が正しいと信じる道を突き進むので、周りから変人扱いもされるが、竜崎の人間性と有能さを知った者達は、次々と彼に魅了されて行く。
そんな彼が大森署を去り、「審議官 隠蔽捜査9.5」で新署長として登場したのが藍本小百合。竜崎と同じキャリア組だが、「途轍も無い美貌の持ち主で、彼女の顔を見た者は、其の余りの美しさに見惚れてしまう。」というから凄い。
今回読んだ[署長シンドローム」は、小百合が主人公となっている。彼女の余りの美しさに、用も無いのに“上役達”が大森署を屡々訪れる始末。大森署の副署長・貝沼悦郎(かいぬま えつろう)は、そんな上役達の対応に時間を割かねばならず、思う様に業務を熟せない事が悩みの種だが、小百合は其の美貌と天真爛漫さで上役達のみならず、“問題児達”をもコントロールして行く。竜崎同様有能なのだが、彼とは全くキャラクターが異なる。「若しかしたら天真爛漫さも、計算尽くでの振る舞いなのでは?」と思ってしまったりもするが、どうやらそうでも無い様だ。
有能な小百合に振り回される貝沼の姿が印象的。“中間管理職”として上にも下にも気を遣っている彼に、とてもシンパシーを覚える。
竜崎が主人公の作品も読みたいが、小百合が主人公の作品も悪く無い。総合評価は、星3つとする。